ユーザーの楽曲の権利処理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 02:10 UTC 版)
「初音ミクのメディア展開」の記事における「ユーザーの楽曲の権利処理」の解説
多くのユーザーが動画サイト上で初音ミクを用いた作品を発表するといった流行の形は、それまでの音楽業界の常識からは外れる部分が大きかった。音楽業界関係者からは、プロデューサーと音楽事務所が仕掛けた仮想アイドルプロジェクトだといった誤解をされることも多かったという。従来の音楽業界とは異なる環境から生まれた人気作品については、商品化の際に、作詞作曲者の持つ楽曲の権利についても従来とは異なる権利処理が求められることになった。 ユーザーコミュニティでは、楽曲の商品化に伴って著作権を日本音楽著作権協会(JASRAC)の管理に委ねることに対し、他のユーザーが歌ったりPVを付けたりといった二次利用が難しくなる事態や、著作権及びや権利に対する懸念がされた風土から、特に流行初期は一部に批判が見られた(初音ミク#初音ミク楽曲のJASRAC信託と着うた配信に関する騒動も参照)。2008年にはニコニコ動画がJASRACとの間で管理楽曲の利用についての包括契約を結び、ニコニコ動画内での二次利用についてはJASRACへ信託されても支障なくなったものの、ブログや動画外での利用といった問題が依然残されており、人気楽曲のカラオケ配信や、メジャーレーベルによるCDの発売の際にも、関係各社は著作権の信託を伴わない形で商品化を進めていった。 しかし、商品化が進んでゆく中、カラオケについてはカラオケ店からの利用料の徴収が事業規模の大きいJASRAC以外には出来ないために、曲が盛んに歌われても作詞作曲者が著作権収入を得られないという問題が生じた。2010年7月にクリプトンが行った、初音ミクなどのVOCALOIDを使った楽曲を発表している作家へのアンケートでは、回答者の過半から「自らが自由に楽曲を利用できるかたちで、カラオケなどの楽曲の商用利用によって発生する著作権使用料を得られるようにしたい」との回答を得ていた。JASRACでは理事長自らがニコニコ動画のインターネット放送に出演して、著作権の仕組みについての説明を行った。 次第に権利信託の必要性を認める機運も生まれ、そうした流れに対応する形で、2010年末に、クリプトンや、通信カラオケ大手エクシングの子会社エクシング・ミュージックエンタテイメント、ニコニコ動画運営元の関連会社のドワンゴ・ミュージックエンタテインメントが、楽曲の用途を限定して信託を請け負う音楽出版事業を始めた。音楽出版社を通して曲の権利を信託する場合は、曲ごと、支分権ごとに信託する範囲を調整することが出来るため、これらの業者の音楽出版事業では、インターネットでの利用にかかわる支分権の「インタラクティブ配信」を信託しないように出来るなどの配慮が行われている。クリプトンについては、インタラクティブ配信をJASRACではなくジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)に委託し、営利目的利用に限定して著作権使用料を徴収するという独自の仕組みを取り入れている。 こうして作詞作曲者の権利については整備が進められているが、一方でキャラクターのイラストや映像と音楽がセットになって流行が広がってきたという状況から、イラストや動画を作成する作者への利益配分の仕組みについて課題を残す形となっている。
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