コズメ・トゥーラ
コズメ・トゥーラ(フェラーラ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 15:46 UTC 版)
「ルネサンス期のイタリア絵画」の記事における「コズメ・トゥーラ(フェラーラ)」の解説
マントヴァのゴンザーガ宮廷で活動していたマンテーニャと同時期に、フェラーラの有力貴族エステ家に仕えていた芸術家コズメ・トゥーラがいる。トゥーラの作品は非常に独特なもので、ゴシック様式と古典様式双方からの強い影響が見られる。トゥーラは、あたかも聖人であるかのように古典様式の人物像を描いた。周囲には非現実的で分かりやすい寓意がちりばめられ、人物は入念に計算された複雑なしわを持つエナメル細工で飾られた衣装をまとっている。 1471年にローマ教皇パウルス2世からフェラーラ公爵位を授与されたデステ家のモデナおよびレッジョ公ボルソは、フェラーラ公宮廷となるスキファノイア宮殿 (en:Palazzo Schifanoia) を建築中だった。トゥーラの個人的な記録によると、スキファノイア宮殿の内部装飾計画が開始された1470年に、フランチェスコ・デル・コッサとエルコレ・デ・ロベルティの二人の芸術家がデステ家に雇い入れられている。 スキファノイア宮殿の内部装飾計画は、その遂行において複雑な寓意性と緻密さを求められるものだった。装飾の主要なテーマは「一年の移り変わり」で、黄道十二宮のサインを、一カ月を10日ずつ支配する謎めいた「勝利者」とともに描き出すというものだった。ライオン、ワシ、ユニコーンなどといった獣が牽く豪奢なチャリオットが表現された画面上部には、古代ギリシア・ローマ神話から12名の神々が、自身を象徴する寓意とともに描かれている。また、画面下部には、マンテーニャがドゥカーレ宮殿の「夫婦の間」に描いたフレスコ画と同様に、一族の暮らしぶりが描写されている。例えば『3月の寓意 ミネルヴァの勝利』には、ローマ神話の知恵の女神ミネルヴァが上部に描かれ、下部にはボルソ・デステが裁判を執り行う場面、さらに遠景にはブドウの樹を手入れする農民とが描かれている。現在ではフレスコで描かれた部分の損傷が激しく、なにが描かれているのか特定できない箇所も多い。この絵画にはトゥーラ、デル・コッサ以外にも、複数の画家の手が入っているのはほぼ確実だが、コズメ・トゥーラ独特の奇抜なデザインが根幹となっており、作品全体としての作風には不整合は感じられない。
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