オーバーユースと食害の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/09 04:22 UTC 版)
「京都大学フィールド科学教育研究センター森林ステーション芦生研究林」の記事における「オーバーユースと食害の問題」の解説
最近の当研究林では、入林者の増加によるオーバーユースが大きな課題となっている。もともと大勢での利用を想定していないところに、最近の登山ブームで入林者が増加、中には数十人単位で訪れる登山ツアーの形態も見られるようになった。特に研究林東部の高島市(旧朽木村)側から地蔵峠を経て長治谷に向かうコースは、前述の通りアプローチが短く、容易に上谷から杉尾峠方面への核心部を訪ねることができることから、こちら側からの入林者が増加してしまい、結果、上谷の歩道は多数の歩行者によって周囲まで掘りえぐれてしまい、植物の生育に悪影響を与えている。この他、入林者の出すごみや排泄物も研究林の環境に悪影響を及ぼしている。このような問題は尾瀬や屋久島といった自然景観を求めて訪れる地域にはよく見られる現象であり、大学側においても大人数での入林をしないことや決められた歩道以外への入林禁止、ペット同伴での入林禁止といった啓発活動に努め、アンケートを通じて入林者に研究林の現状を知らせたほか、2006年からは高島市側からの入林を原則禁止するなどの措置を採った。ただ、歴史的な経過から高島市側からの入林を完全にシャットアウトすることは困難であり、2007年には三国峠からのコースに限って入林できるようになっている。2012年より研究林利用に際してのルールが変更となった。滋賀県側からの入林では、個人・団体を問わず許可を得た者以外は一切入林できない。入林希望者は、入林希望日の2週間前までに所定の手続きにより芦生研究林事務所へ申請を行い許可を得る必要がある。または針畑活性化組合が行うガイドツアーによっても入林が可能となっている。 当たり前の話であるが、入林者の側においても当研究林は大学の施設であり、一般的な観光地でないことを理解した上で、ルールを守って入林することが求められている。 また、ニホンジカが、近年の暖冬傾向で冬場に抵抗力のない子供や老年の個体が死亡する数が減っていることや天敵がいない自然環境に加え、研究林が禁猟区域であることから個体数が増加傾向にある。この結果、下草を食い尽くされるだけでなく、若木の樹皮も食べるなど、食害が年々拡大している。放置しておくと植生に悪影響を与えるが、有効な手立てがないだけに解決の難しい問題である。
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