アメフト兼用球場(円形兼用球場)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 02:06 UTC 版)
「野球場」の記事における「アメフト兼用球場(円形兼用球場)」の解説
米国では1960年代から1970年代にかけてアメフト兼用球場が流行した。1961年のD.C.スタジアムがこのタイプの始祖である。従来の球場はフィールドの形にそったスタンドであったが、これらの球場は二塁ベースの後方を中心に円形にスタンドを構成する。その円形の中に可動スタンドを備え、グラウンドが野球の時には扇型、アメフトの時には長方形になるように設計されていた。 円形のスタジアムは後にクッキーカッター(Cookie-cutter。日本語では“金太郎飴的”)としてファンから嫌われることとなる。円形兼用球場が嫌われた理由としては、見栄えの悪さと共に、野球観戦に不向きであったことが挙げられる。そもそも、野球とアメフトでは要求されるスタンドが異なる。基本的にバッテリー間の攻防が主となる野球では、バッテリー間を観るのに適した傾斜の低い観客席が好まれ、パスやランプレー、キックなどで常にフィールドを広く使うアメフトでは、急勾配でフィールド全体を俯瞰できるものが好まれる。更に、少ない試合数で一試合に多くの観客を動員するアメフトと違って、シーズン中はほぼ毎日試合を行う野球では、アメフト兼用球場の収容力(6万人~7万人台)は過剰であった。そのため、常に空席が目立つことになり、見栄えの悪さを強調した。アメフト兼用の円形球場は、野球を国民的娯楽(National Pastime)として愛する米国民に敬遠され、MLBの観客動員は停滞する。 1990年代に入ると、次々と前述の新古典派球場が完成。MLBの観客動員は飛躍的に増加し、1990年代から2000年代にかけての好況も相まって、MLBは空前の好景気を迎えることになる。一方で、アメフト兼用スタジアムは次第に姿を消していき、2020年時点で残存しているのはオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム、ドルフィン・スタジアム、クアルコム・スタジアムの3球場のみである。しかしドルフィン・スタジアムを本拠地としていたフロリダ・マーリンズ(のちのマイアミ・マーリンズ)は2012年に、クアルコム・スタジアムを本拠地としていたサンディエゴ・パドレスは2004年にそれぞれ新球場に移転したため、それ以降両スタジアムにおいて野球は行われていない。オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムを本拠地とするオークランド・アスレチックスも、2012年に野球専用球場に移転する予定であったが、財政難と地元住民の反対により計画は中止された。一方、2019年シーズンをもってNFL球団のオークランド・レイダースがラスベガスに移転したため、オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムは(レイダースが一時ロサンゼルスに移転していた頃以来の)野球専用に戻り、恒常的に兼用される球場は消滅した。 一方、日本では横浜スタジアム、千葉マリンスタジアム、福岡ドーム、大阪ドーム、ナゴヤドーム、札幌ドームがこのタイプである。千葉マリンスタジアムを除いて円状にスライドする可動席を採用している。可動スタンドは三日月状もしくは弓形に近い形状のものが一対あるのが基本であるが、ナゴヤドームは本塁後方にも可動スタンドが存在する。これらの可動スタンドを持つ球場は球場の中心点から同じ距離にある座席が全て同じ高さにあるという特徴がある。 これらの球場のスタンドは以下の欠点がよく指摘される。(詳しくは各球場の項を参照。) ファウルゾーンが広すぎて臨場感に欠ける。 バックネット裏の座席、外野のフェンスと座席が不必要なまでに高い位置になる。 ファウルポール直下が死角となる座席が多い。 内野席でダイヤモンド内が見えにくい席が存在する。
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