「消費社会」は「階級」を無くしたか
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「おいしい生活 (キャッチコピー)」の記事における「「消費社会」は「階級」を無くしたか」の解説
社会学者の上野千鶴子は本キャッチコピーが世に出た当時、「差別化の上下を問わないヨコナラビの基準が、これほどみごとに表現されたものはない」と肯定的評価を付与。編集者の大塚英志によると、消費行動において上下間の差異の根拠を単なる記号上の差異に置換することで、「階級」そのものを消滅させる目論見を見出したというのである。 しかし、所得間の不平等を示す日本のジニ係数は1980年代以降上昇の一途をたどっており、「階級」の消滅と言うには余りにも早計であった。上野はバブル経済が最高潮にあった1989年、経済学者の小沢雅子の著書『新・階層消費の時代』文庫版解説にて、次のように述べている。 企業間格差と連動した大学間格差、そこに子弟を送り込むことのできる階層間格差は拡大再生産されている。そうすれば小沢が予測するように、カルチャー、テイスト、通婚圏、交際圏、出没する空間などがセグメントされ、互いに交わらないような「階層」が出現するのではないか。 かくして上野は従来の「ヨコナラビ差別化説」を撤回し、日本社会における新たな階層化の進行を示唆するに至った。上野の予測は的中し、今に至るまで巷間に「格差社会論」が横溢することとなる。 いずれにせよ、糸井は消費を通じて「階層」を解体しようとしていたと指摘した上で、大塚はこうした戦略を糸井の「階級闘争」と表現するに至った。また、あらゆる物や文化に付随していたはずの「階層」性が、いとも容易に消費者の手に渡るものへと変容する様を捉え、これにより国民の中流意識が醸成されたと結論付けている。
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