「かさね」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 14:03 UTC 版)
日本の朝廷の伝統的な装束では、袿(うちぎ)と呼ばれる複数の衣を重ねることが基本で、その色の組み合わせ、あるいは袷の衣服の表地と裏地の色の組み合わせを「かさね」(襲・重)と呼ぶ。かさねは袖口・裾などに衣がすこしずつ覗き、十二単の着こなしの工夫が多くなされたところでもある。『栄花物語』等には当時の女房が工夫を凝らしたさまが詳述されている。ある女房は重ねに凝り、通常よりも多く20枚以上の衣を重ねたが衣の重さのために歩けなくなったとある。このように平安時代は袿の枚数に定めがなかったが、室町時代には5枚となり、それ以後「五衣(いつつぎぬ)」と呼ばれ女房装束に定着されるようになった。 このような重ね・襲ねの取り合わせを「重ね・襲ねの色目」というが、色目については主に季節感を取り入れた組み合わせになっている。春夏秋冬・または植物や色単体のグラデーションによりおびただしい数の種類があり、着用の季節や行事が厳密に定められていた。これらの季節感などを無視した取り合わせを用いることはマナー違反・センスがないと見なされ、当時の女性が工夫を凝らして装ったことが当時の物語や日記などに垣間見ることができる。 襲ねの色目には裏と表の取り合わせで固有の呼び名があり、古典でしばしば言及される代表的な重ねとして、服喪の際の青鈍(あをにび。表裏とも濃い縹色)、春の紅梅(表は紅・裏は紫または蘇芳)、桜(表は白・裏は赤または蘇芳)などがある。 重ねも同様で、色の重ね方に決まりがあり、重ねる色の数やグラデーションの具合でそれぞれに固有の呼び名(裾濃・匂いなど)があった。ただし、重ねと襲には同じ名称のものもあるため、古典研究の際の混乱の元にもなっている。
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