SABRE 開発とその後

SABRE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/11 21:35 UTC 版)

開発とその後

正式な開発契約は1957年に締結され、最初のシステムは2台の IBM 7090 メインフレームを使ったもので、1960年ニューヨーク州ブライアークリフ・メナーに設置された。このシステムは成功した。プログラム開発費は4千万ドルだったと言われている。これは2000年の価値に換算すると3億5千万ドルである。1960年、名称は親しみやすい SABRE とされた[7]。1960年代のSABREシステムは、1日83,000本の電話を受けつけ、大量のトランザクションを処理していた[8]。1964年には全ての予約機能がSABREシステムで行えるようになった。

1972年、システムはオクラホマ州タルサに設置された System/360 上に移植された。1972年にアメリカン航空に入社したマックス・ホッパー英語版はSabreシステムの管理者となった[9]。当初、アメリカン航空だけが使っていたが、1976年に旅行業者にまで拡大された。

SABREが機能するようになると、IBMはその経験を他の航空会社にも売り込み、デルタ航空の Deltamatic(IBM 7074)、パンアメリカン航空の Panamac(IBM 7080)が構築された。1968年、それらの機能が PARS (Programmed Airline Reservation System) システムとしてまとめられた。PARS はSystem/360のどのマシンでも動作したので、いかなる規模の航空会社でも導入することができた。これは後に ACP (Airline Control System)、TPF (Transaction Processing Facility) へと発展した。このソフトウェアは当初アセンブリ言語で書かれていたが、後にPL/Iの方言である SabreTalk で書き直され、現在 (TPF) はC言語で書かれている。

1980年代には、Eaasy Sabre[10][11] のブランド名で一般消費者が他社便を含む航空券予約とレンタカーおよびホテル予約をオンラインで行えるサービスを開始した。インターネットの商用利用解放前だったのでサービスへのアクセスはパソコン通信CompuServeなどから行い、1990年代にはAOLでも同様のサービスを展開している。

アメリカン航空は Sabre を1990年代スピンオフさせ、Sabre Holdings がシステムを運用するようになった。この会社は Travelocity というウェブサイトを運営していて、一般消費者がシステムを使えるようになっている。アメリカン航空と Sabre Holdings が正式に分離したのは2000年3月15日であり、Sabre Holdings はニューヨーク証券取引所に上場したが、2007年3月に私企業化されて上場廃止となった。現在では多くの企業で使われていて、ユーロスターフランス国鉄USエアウェイズも使っている。現在では、65,000の旅行業者を接続し、数百万の一般消費者に利用され、400以上の航空会社、27のレンタカー業者、125,000のホテル、50以上の鉄道会社、17の海運会社ともつながっている。


  1. ^ Expedia Acquires Travelocity for $280 Million” (英語). Skift (2015年1月23日). 2016年5月22日閲覧。
  2. ^ a b キャンベル=ケリー 1999, pp. 169-172
  3. ^ 文書によってプロジェクトの開始した日付などが異なり、あるものは 1953年、別のものは 1957年となっているし、最初のシステムはマンハッタンに設置されたとする文書もあるし、ブライアークリフだとしている文書もある。例えば、CNNのこの記事では、1960年に始まって 1億5千万ドルかかったことになっている。
  4. ^ Oral history interview with R. Blair Smith. Charles Babbage Institute, University of Minnesota, Minneapolis. 本人がアメリカン航空のスミス社長と出会ってSABREを開発するまでのいきさつを語っている。
  5. ^ アメリカン航空の公式の社史である Eagle (by Robert Serling, published in 1985 by St. Martin's/Marek) では、347ページにこの出会いが書かれており、C・R・スミスが話した相手はIBM社長のトーマス・J・ワトソンだとされている。
  6. ^ キャンベル=ケリー 1999, pp. 173
  7. ^ (キャンベル=ケリー 1999, pp. 173-174) によれば、ビュイックの1960年型 LeSabre の広告から思いついた名称で、後付けで "Semi-Automatic Business Research Environment" の頭字語とされたという。
  8. ^ Head 2002
  9. ^ John Desmond. Max Hopper knows Sabre's 'software guts': American pushing limits of software at 2,000+ TPS - transactions per second. Software Magazine. February, 1989.
  10. ^ Philip S. Gutis (1989年12月23日). “More Trips Start at a Home Computer”. New York Times. http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?sec=travel&res=950DE0D6163AF930A15751C1A96F948260 
  11. ^ Peter H. Lewis (1992年1月12日). “Booking With a Computer”. New York Times. http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9E0CE2D7163EF931A25752C0A964958260&sec=&spon=&pagewanted=all 
  12. ^ "November Line of Sale Analysis", memo to R. E. Murray from S. D. Nason, American Airlines, Dec. 3, 1981.
  13. ^ "Motion of the Justice Department for an Extension of Time," in "Re Advance Notice of Proposed Rulemaking – Airline Computer Reservations System," Docket 41686, Civil Aeronautics Board, Oct. 5, 1983
  14. ^ Memo from J. L. Ott to L. A. Iovinelli et al., "Subject: Continental Fares", American Airlines, Dec. 1, 1981.


「SABRE」の続きの解説一覧

セイバー

(SABRE から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 04:36 UTC 版)

セイバーとはsaber、sabre、savior、saverなどの単語発音日本語カタカナによる表記で、セーバーとも表記される。それぞれは以下の通り。




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