高精細度テレビジョン放送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/01 08:17 UTC 版)
SDTV(標準画質映像)との比較
HDTVは、SDTVより最低でも2倍以上の解像度を持つ。したがって、アナログテレビや一般のDVDと比較して、より細密な映像の描写が可能である。また、HDTV放送の技術標準では、レターボックス無しに縦横比が16:9の映像を処理することができるので、映画のような映像を視聴する場合には、解像度をより効率的に調整することができる。
表記方式
HDTVを言う時に放送信号の形式は次のような値を利用して表記する。
- 画面領域の有効ライン数
- フレームレート:フレーム数/秒 (frame/sec,fps) あるいはフィールド数/秒 (field/sec)
- 順次走査方式 (progressive scan) あるいは飛び越し走査方式 (interlace scan)
例えば、720/60pという形式は1280×720ラインの有効画素が順次走査 (progressive scan) 方式の60fpsで伝送されるベースバンド信号を示す。1080/50iという形式は1920[注 1]×1080ラインの有効画素が飛び越し走査 (interlace scan) 方式の50field/sec (=25fps) で伝送されるベースバンド信号を指す。
フレームレートは有効ライン数とは独立にサフィックスで明記される。例えば60pはprogressive方式の60fpsを意味し、60iはinterlace方式の60field/sec(=30fps) を意味する。サフィックスのフレームレートが省略されている場合は、当該地域の標準テレビシステムによって50あるいは60と想定される。例えば、“1080p”とのみ表記されている場合は、一般に1080/60p、1080/50pを指す(映画ソース等では、1080/24pのベースバンド信号も存在する)。
解像度
標準解像度(従来の解像度)との比較を以下に示す。
(1ピクセルを正方形で同一サイズと仮定した場合の画面サイズ比較イメージ図。詳しくは脚注参照)
- 注1 : この図のNTSCとPALの画素数表記は間違っており(画素が正方形のパソコン用モニタや携帯電話などで表示する場合の目安である)、NTSCスタジオ規格の有効画素数は720×483(VGAの正方画素とは異なり、縦長の非正方画素である)、PALは720×576(横長の非正方画素)である。
- 注2 : この図はインタレース(飛び越し走査)方式による効果を無視しており、2:1インタレース方式の垂直解像度はプログレッシブ(順次走査)方式の約70%とされている。
デジタル伝送方式
アメリカでは従来の標準テレビジョン(SDTV)放送向けのデジタル伝送方式としてMPEG-2、HDTV向けにMPEG-3が策定される予定であったが、MPEG-2とMPEG-3の基本技術が同じであったため、最終的にはMPEG-2がMPEG-3を吸収・統合することが決定し、MPEG-3規格は欠番となっている。現在では、HDTVを含めた映像のデジタル伝送方式として、MPEG-2が幅広く利用されている。
MPEG-2では最大4:2:2YUVサンプリング (chroma subsampling) と10ビット量子化をサポートしているが、一般的にHDTV放送では帯域幅を減らすために4:2:0方式と8ビット量子化を利用する。韓国のDMBとドイツのDVB-S2ではH.264 (MPEG-4 AVC) を利用している。今後、あらゆるヨーロッパのHDTV放送でもH.264を使う予定で、アイルランドなどまだデジタル放送が始まらない所では、HDTV放送は勿論のことSDTVデジタル放送でもH.264の利用が検討されている。
日本では、2008年10月からスカパー!でのHDTV放送用(スカパー!プレミアムサービス《旧スカパー!HD》)として、2009年12月から国際放送・NHKワールドTVのHDTV放送用として、それぞれH.264を利用している。
HDTVは、5.1chサラウンドサウンドをサポートするAAC(エーエーシー、Advanced Audio Coding)とドルビーデジタル (AC-3) 形式のサウンドを使うので、劇場(映画館)水準のオーディオを鑑賞することができる。
HD信号のピクセルアスペクト比は1.0である(ピクセルの幅と高さとが等しい。スクエアピクセルと呼ばれる)。新しいHD圧縮/録画方式ではもっと効率的な圧縮のために、長方形のピクセルを利用することもある(例えば、日本の地上デジタルテレビ放送では、水平画素数1440ドットの各ピクセルが横長の長方形の形式で送信されることが多く、この長方形のピクセルを正確に再現できない受信機は1920ドットの正方画素に変換する処理を行う)。
テレビ放送局や地域内の分配を引き受けている業者、あるいはプロダクション業者ではベースバンド(非圧縮)HDTV信号を送るため、HD-SDI (SMPTE-292M : YPbPr/4:2:2/10bit/1.485Gbps) を使用する。
ベースバンドHDTV信号は、空中波やケーブルで送るには非常に広い帯域幅を占めるので、公衆放送では圧縮された映像信号を送信し、テレビ受信機でこれをデコードする。また民生用テレビ受像機ではHDMIインターフェースを経由することにより、BDプレーヤー等から出力される暗号化されたベースバンドHDTV信号を受像することができる。
- 1 高精細度テレビジョン放送とは
- 2 高精細度テレビジョン放送の概要
- 3 概要
- 4 SDTV(標準画質映像)との比較
- 5 HDTV ベースバンド規格
- 6 放送形式と映像形式の変換
- 7 脚注
- 高精細度テレビジョン放送のページへのリンク