養殖業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 23:25 UTC 版)
概要
養殖するためには対象となる生物の生態を知る必要があり、安定した養殖技術の獲得までには時間がかかる。魚介類に関しては、卵あるいは稚魚・稚貝から育てることが多い。反面、飼育親魚からの採卵と管理環境下での孵化を経た仔魚及び稚魚の質と量の確保が困難な魚種(例えば、ニホンウナギ・クロマグロ・ハマチ)の場合、自然界から稚魚を捕らえて育てる「蓄養」が行われる。ニホンウナギやマグロ類では稚魚として用いる未成魚の捕獲行為が無制限に行われ、捕獲する行為自体が天然資源資源減少の要因と指摘されていたが、クロマグロに於いては2014年から未成魚の捕獲制限が行われると報道された[2][3]。
目的
多くの場合、育てた生物自体を食用とする事が目的であるが、生物の育成によって副次的に生成される物質を食用以外の用途とする場合(真珠など)もある。一方、人間によって略奪、破壊された海洋環境を自然に返す手段の一つとする見解もある[4]。
養殖には、漁の条件や捕獲環境を管理できることで、捕獲時のダメージによる劣化を防ぎ時間やエネルギーなどの各種コストを抑えられること、魚種によっては天然環境に比べ成長が早めることが技術的に可能であることなど、明確なメリットがある[5]。
養殖施設
魚が逃げ散ったりしないように管理して、給餌や漁獲を容易にするため、海の沿岸域や淡水の湖沼などに様々な施設が作られる。魚介類の種類に合わせて、海面生け簀や筏、養魚池などが使い分けられる。海水魚の一部は、海水の水質を保って内陸部で育てる閉鎖循環式陸上養殖が可能になっている[6]。
特に悪天候時において波や海流、潮流が激しい外海での養殖は難しいが、ノルウェーでは北海油田の石油プラットホーム技術を応用し、水深150mの外洋でサーモンを養殖している[7]。
- ^ 一例として、「心の支えはカープの勝利 西日本豪雨でコイの養魚場被害」産経フォト(2018年10月14日)2018年10月24日閲覧。
- ^ クロマグロ漁獲規制、14年度から 日本への影響「ほとんどない」 J-CAST ニュース 2013年9月24日
- ^ クロマグロ規制強まる 幼魚の漁獲枠削減へ『日本経済新聞』2013年12月3日
- ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 334–335.
- ^ a b Harold McGee 2008, pp. 177–178.
- ^ (3)様々な養殖の方法『水産白書』平成25年度版(2018年10月24日閲覧)。
- ^ 【世界経済 見て歩き】ノルウェー・ヒトラ島 オーシャンファーム1/革命的な「外洋養殖」油田技術応用 サーモン10倍『毎日新聞』朝刊2018年10月21日(総合・経済面)2018年10月24日閲覧。
- ^ Higginbotham, James Arnold (1997-01-01). Piscinae: Artificial Fishponds in Roman Italy. UNC Press Books. ISBN 9780807823293
- ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 316–320.
- ^ 香川のハマチ養殖の概要 香川県かん水養殖漁業協同組合
- ^ 世界初、ウナギを完全養殖に成功 産経スポーツ
- ^ 熊井英水, 宮下盛「クロマグロ完全養殖の達成」『日本水産學會誌』第69巻第1号、日本水産学会、2003年1月、124-127頁、doi:10.2331/suisan.69.124、ISSN 00215392、NAID 110003145547。
- ^ a b 井口恵一朗「アユを絶やさないための生態研究』『日本水産学会誌』 2011年 77巻 3号 p.356-359, doi:10.2331/suisan.77.356, NAID 10029124584, ISSN 00215392。
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- ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 333–338.
- ^ “フグの養殖方法”. 2023年3月21日閲覧。
- ^ ヒオウギガイ養殖に取り組んで 熊本県
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- ^ “甲殻類の培養で水産業の課題解決を シンガポール、代替タンパク質の一大拠点へ(後編)”. 20220318閲覧。
- ^ 伊藤大一輔、藤原篤志、阿部周一「サケ科魚類の致死性雑種と染色体異常」『動物遺伝育種研究』Vol.34 No.1 (2006) pp.65-70, doi:10.5924/abgri2000.34.65
- ^ 試験研究は今 NO.183 -先端技術開発研究(水産孵化場)のこれまでの成果 北海道立総合研究機構水産研究本部
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- ^ フィリップ・リンベリー、イザベル・オークショット著「ファーマゲドン」日経BP社、2020年1月25日閲覧、129頁
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