随伴行列
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 01:18 UTC 版)
基本的な注意
正方行列 A = (aij) が
- エルミートあるいは自己随伴は、A = A∗ すなわち aij = aji;
- 歪エルミートまたは反エルミートは、A = −A∗ すなわち aij = −aji;
- 正規は、A∗A = AA∗;
- ユニタリは、A∗ = A-1
をそれぞれ満たすときに言う。
行列 A が正方行列でない場合にも、二つの行列 A∗A および AA∗ はともにエルミートであり、実は正定値になる。
成分がすべて実数であるような行列 A の随伴を求めることは、(実数の複素共軛はその実数自身であるから)A の転置行列を求めることに還元される。
動機付け
随伴行列の動機付けは、複素数が行列和と行列積の規則に従うことで 2×2 実行列として有効に表現できることに注意することによってなされる:
これはつまり各「複素」数 z は、ガウス平面 C(を「実」ベクトル空間 R2 と見たもの)上で z を乗算することによって生じる C 上の「実」一次変換としての「実」2×2 行列として表現されるということである。
従って、複素数を成分とする m×n 行列は、実数を成分とする 2m×2n 行列として表される。このとき共軛転置は、この形に書いた実行列に対して単に転置をとること(をもとの m×n 行列に立ち返って見ること)によって極めて自然に生じる。
性質
- (A + B)∗ = A∗ + B∗: A, B は同じサイズの任意の行列
- (zA)∗ = z∗A∗: 任意の複素数 z と任意の行列 A, z∗ は z の複素共軛
- (AB)∗ = B∗A∗: 積の因子の順序は逆になる。行列 A, B は積が定義できるサイズ。
- (A∗)∗ = A: 行列 A は任意
- 行列 A が正方行列のとき、行列式 det(A∗) = (det A)∗ およびトレース tr(A∗) = (tr A)∗: それぞれ右辺は複素数の複素共軛
- A が正則 ⇔ A∗ が正則。またそのとき、(A∗)−1 = (A−1)∗
- A∗ の固有値は A の固有値の複素共軛。
- ⟨ Ax, y⟩ = ⟨ x, A∗y⟩: A は m×n 行列で、x ∈ Cn, y ∈ Cm. また ⟨,⟩ はそれぞれ Cm, Cn の標準内積
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