配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 即時抗告

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/21 06:28 UTC 版)

即時抗告

保護命令の申立てについての裁判に対しては、申立てを認容した場合は相手方から、却下した場合は申立人から、それぞれ即時抗告が可能である(16条1項)。

保護命令の取消し

保護命令の裁判が確定した場合でも、加害者とされる者の行動の自由を制約する裁判であるため、その必要性がなくなった場合は効力を継続させる意味はない。そのため、保護命令の取消しの制度が認められている(法17条)。

ただし、被害者が取消しの申立てをした場合は、無条件で取り消されるのに対し、加害者が取消しの申立てをした場合は、接近禁止命令の場合はその効力が生じてから3か月、退去命令の場合はその効力が生じてから2週間、それぞれの期間が経過しかつ取り消すことにつき被害者に異議がないことを確認する必要がある(法17条1項)。

再度の申立て

一度目の保護命令の申立ての理由となった暴力と同一の事実を理由として、再度保護命令の申立てをすることは、一応は可能である。

しかし、退去命令の再度の申立ての場合は、被害者の転居の時間の確保のための制度という点から、「配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して2か月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による退去命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるとき」であること、「当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認められないこと」が要件となる(法18条1項)。

一度退去命令が発せられた後で申立人が新たに暴力を受けた場合は、一度目の退去命令の申立ての理由となった暴力とは別の事実に基づく申立てになるため、以上のような制約はない。

脚注


注釈

  1. ^ 「配偶者からの暴力」を定義する1条1項を「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。」に改正する(太字部を改正)。
  2. ^ 次の各号に掲げるいずれの行為をいう。
    一 面会を要求すること。
    二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
    三 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
    四 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
    五 緊急やむを得ない場合を除き、午後十時から午前六時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。
    六 汚物、動物の死体その他の著しく不 快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
    七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
    八 その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
  3. ^ 被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子及び配偶者と同居している者を除く。)をいう。

出典

  1. ^ Act on the Prevention of Spousal Violence and the Protection of Victims”. 日本法令外国語訳データベースシステム. 法務省. 2021年4月11日閲覧。
  2. ^ "配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. ブリタニカ・ジャパンコトバンク. 2021年4月13日閲覧
  3. ^ a b 参法 第151回国会 16 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律案 議案審議経過情報”. 衆議院. 2021年4月13日閲覧。
  4. ^ a b 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の概要 (PDF) 内閣府 男女共同参画局。2021年4月13日閲覧。
  5. ^ 配偶者からの暴力に関するデータ”. 男女共同参画局. 2021年4月13日閲覧。
  6. ^ 男女共同参画局長 (2002-03-25). “「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」における配偶者暴力相談支援センター等に係る規定の施行について” (PDF). 関連通知一覧. 男女共同参画局. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/kanrentsuchi/pdf/01/n_02_140325.pdf 2021年4月13日閲覧。 
  7. ^ 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律第64号)
  8. ^ 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第113号)
  9. ^ 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第72号)
  10. ^ 関連法令・制度一覧|配偶者からの暴力被害者支援情報”. 内閣府男女共同参画局. 2016年4月10日閲覧。





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