過塩素酸 過塩素酸イオン

過塩素酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/29 22:51 UTC 版)

過塩素酸イオン

過塩素酸イオン(かえんそさんいおん、: perchlorateClO
4
)は過塩素酸の電離により生成する1価の陰イオンである。過塩素酸塩結晶中にも存在し、正四面体形構造をとり Cl-O 間結合距離は過塩素酸ナトリウム結晶中で142.0-143.1 pmであり、類似構造の硫酸イオン (149 pm) と比較して短く、より二重結合性が強いと考えられていた(形式的な結合次数は1.75)。このような結合長をもとに、過塩素酸イオンの結合はCl原子が3つのO原子と二重結合を作り、もう一つのOと単結合を作っているという極限構造(の共鳴状態)で書かれることが多い。しかしその一方で、理論計算からはCl3+に4つのOが単結合で結びついているというオクテット則を満たす描像がもっとも現実の系に近いと示唆されている[7]。この場合、結合が通常の単結合より短く強い点に関しては、ClとOの電気陰性度の差が大きい事により結合が強く分極していることとそれぞれの原子が電荷を持つ事によりCl-O間にクーロン力によるイオン結合がプラスされていると説明される。近年、理論計算から同様の予想がなされていた硫酸などにおいても実際にS-O結合が単結合であること、その結合が単結合より短く強いのは分極した単結合におけるクーロン引力によるものであることが実験的に確認され、過塩素酸イオンのCl-O結合が単結合であるという理論的予測が間接的に支持されている。

希薄水溶液中では安定でありほとんど酸化作用を示さないが、潜在的に高い酸化作用をもち、その標準酸化還元電位は以下の通りである。

ただし、水素硫化水素亜硝酸およびヨウ化水素などでは還元されず、酸性条件でチタン(III)イオン (Ti3+) により還元される。

金属イオンに対する配位結合が弱く錯生成定数が小さいことから、金属アクアイオンの研究におけるカウンターイオンとして、また過塩素酸塩はイオン強度調整用の電解質として用いられる。


  1. ^ a b Merck Index 13th ed., 7232.
  2. ^ a b D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  3. ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
  4. ^ a b 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  5. ^ シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年
  6. ^ 『改訂4版化学便覧基礎編Ⅱ 無機化合物水溶液のモル伝導率』 日本化学会、1993年
  7. ^ L. Suidan, J. K. Badenhoop, E. D. Glendening and F. Weinhold, J. Chem. Educ., 72, 583 (1995).


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