賭博及び富くじに関する罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/21 02:14 UTC 版)
賭博を犯罪とする理由
賭博は、社会悪と考えられ[1]、それを規制するため、刑法は賭博を禁じ、処罰の対象に定めている。賭博の問題点としては、以下のようなものが考えられる。
- 破産と人格崩壊: 賭博による金銭的損害によってって個人や家族が破産し、人格が崩壊する事例がある。果てには自殺、殺人に及ぶ場合もある。
- 詐欺のリスク: 賭博ではいかさま賭博によって詐欺の被害に遭うリスクがある。
- 依存と中毒性: 賭博は人々の射倖心を刺激し、中毒的な依存状態を招く可能性がある。
- 勤労への影響: 賭博は勤労の美風を損い、健全な経済活動に影響を及ぼすとされる。
- 社会的影響: 賭博は暴力団や犯罪組織などの反社会的勢力の資金源となる場合もあり、社会問題を引き起こす可能性がある。
- 公正性の侵害: スポーツ賭博における八百長などは公正性を損ない、スポーツの信頼性を損なう。
賭博罪
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処せられる(刑法185条本文)。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは不処罰とされている(刑法185条但書)。常習賭博罪と区別する目的で、単純賭博罪とも呼ばれる。
行為
意義については賭博の項目を参照のこと。
賭博罪が成立するためには、当事者双方が危険を負担すること、つまり、当事者双方が損をするリスクを負うものであることを要する。従って、パーティーなどで無料で行われるビンゴゲームのような、当事者の一方が景品を用意するだけで片方は負けても損をしない場合には賭博には当たらない。
判例・通説によれば、勝敗が一方当事者によって全面的に支配されている詐欺賭博は詐欺罪を構成し、賭博罪は成立しない(最判昭和26年5月8日刑集5巻6号1004頁)。
既遂時期
判例によれば、賭博罪は挙動犯であり、財物を賭けて勝者に交付することを予約するだけで既遂に達する。具体的には、賭銭を場に出し、花札を配布すれば、たとえそれが親を決めるためであっても既遂となる(最判昭和23年7月8日刑集2巻8号822頁)。
常習賭博罪
常習として賭博をした者は3年以下の懲役に処せられる(刑法186条1項)。
常習性
判例・通説によれば、賭博を反復累行する習癖ある者を指し、必ずしも博徒又は遊人に限られない(最判昭和23年7月29日刑集2巻6号1067頁)。常習かどうかは賭博行為の内容、賭けた金額、賭博行為の回数、前科の有無などを総合的に判断して決せられる。
共犯の問題
判例・通説によれば、常習賭博罪は不真正身分犯(加減的身分犯)である(大判大正2年3月18日刑集19巻353頁)。よって、刑法65条2項により、常習者と非常習者が賭博をしても、非常習者には単純賭博罪が成立するに過ぎない。
累犯加重の問題
判例・通説によれば、常習賭博罪は集合犯であるから、賭博行為を数回しても、常習賭博罪の包括的一罪である(最判昭和26年4月10日刑集5巻5号825頁)。刑法56条に規定される条件を満たせば、常習賭博罪にも累犯加重は適用できるとされている。
組織的犯罪処罰法上の特則
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)の適用を受ける場合には、法定刑は5年以下の懲役となる(組織的犯罪処罰法3条)。
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