貿易 概説

貿易

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:41 UTC 版)

概説

「貿易」の概念

日本語の「貿易」は、外国との取引について用いられる言葉であり、国内で完結する取引には用いられない。このため、「外国貿易」という表現は、同義語反復であるが、公式文書などでもあえてこの表現が用いられる場合がある(例:外国為替及び外国貿易法)。貿易と国内取引の両方を含む日本語としては「取引」のほか「交易」がある。「交易」は、第二次大戦中の占領地と本土の間の取引や、江戸時代のの間の財の動きなど、「貿易」とも「国内取引」とも言い難いものを表現する場合にも用いられる。

英語で「trade」という場合は、国内取引と貿易の両方を含むため、特に貿易のことを表現する場合はexternal trade, international tradeなどとするが、trade一語でも貿易の意味で用いられることが多い(例:U.S. Trade Representative(アメリカ合衆国通商代表部)、World Trade Organization(世界貿易機関))。 米国の場合は商法が州別にあるため、州際取引と州内取引を区別する実利がある(州際取引(interstate trade)、州内取引(domestic trade))。

中国語の「貿易」は、日本語と異なり、外国・国内取引双方を含むため、注意が必要である。

国内取引との比較

国内取引と貿易取引には次のような違いがある[1]

  1. 企業等の取引主体の帰属文化や使用言語に差異がある[1]
    このため、国際的に通用する専門用語(インコタームズ等)が普及している。
  2. 地域により使用通貨や決済方法に違いがある[1]
    通貨の異なる相手との取引となることが多いため、為替レート変動によるリスクがある。また、国内取引の場合は現金・小切手・約束手形などがあるが、貿易取引では信用状(L/C)、D/PD/Aなどの特殊な決済方法が発達している[1]
  3. 地域により取引の準拠法や商慣習に違いがある[1]
  4. 地域により商品の輸送時間に違いがある[1]
    遠距離の輸送となるため、運賃が上乗せコストとなるほか、商品が海上事故などに被災するリスクが高いため、保険料もコストとなる。
  5. 通関が存在する[1]
    安全管理や輸入関税の徴収などのため輸出入通関手続が存在する[1]。この結果、関税などの直接的なコストのほか、通関書類などの作成にかかる間接コストも高い。

このように、国内取引と比べてコスト増の要因となる点が多いが、国内に存在しない希少価値のある商品を輸入すれば(あるいは、その商品が希少価値を持つ市場に輸出すれば)貿易にかかるコストを上回る利益が得られる可能性があり、その場合に貿易が行われることになる。


注釈

  1. ^ これは生産が生産要素の組合せによりなされるという新古典派生産関数の考えに基づくリカード解釈である。
  2. ^ ピエロ・スラッファが指摘したように、リカード経済は「商品による商品の生産」(スラッファの主著の表題)である。資本は、投入に用いられる商品の集合と理解される。したがって、リカード・モデルが資本投入のない19世紀型理論であるという指摘も間違っている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 石原伸志、小林二三夫、花木正孝、吉永恵一 『改訂 新貿易取引―基礎から最新情報まで 改訂版』経済法令研究会、2019年、3頁。 
  2. ^ 港湾用語の検索 - 直貿・間貿” (日本語). 四日市港管理組合. 2022年1月23日閲覧。
  3. ^ みなと用語辞典 - 直貿・間貿” (日本語). 国土交通省中部地方整備局 港湾空港部. 2022年1月23日閲覧。
  4. ^ a b c d 石原伸志、小林二三夫、花木正孝、吉永恵一 『改訂 新貿易取引―基礎から最新情報まで 改訂版』経済法令研究会、2019年、2頁。 
  5. ^ a b c 吉田, 友之「貿易実務 - 輸出取引の仕組み1 - 貿易取引に関する予備知識」 (pdf) 『OITA Trade & Views』第118巻May-Jun、ジェトロ大分(日本貿易振興機構大分事務所)、2018年、 5頁。
  6. ^ 石原伸志、小林二三夫、花木正孝、吉永恵一 『改訂 新貿易取引―基礎から最新情報まで 改訂版』経済法令研究会、2019年、3-4頁。 
  7. ^ ポール・サミュエルソンは、これを「4つの魔法の数字」(Four magic numbers)と呼んだ。Samuelson, Paul A. 1972 “The Way of an Economist.” Reprinted in The Collected Papers of Paul A. Samuelson. Ed. R. C. Merton. Cambridge: Cambridge MIT Press. "four magic numbers"という表現は、p.378にある。
  8. ^ 『クルーグマン マクロ経済学』第8章
  9. ^ 『スティグリッツ 入門経済学 第三版』p429
  10. ^ リカード『政治経済学と課税の原理』第7章の後半では、多数の財が取引される状況を検討している。小島清は、リカード理論に金(貨幣金属)の生産と貿易が不可欠であるとしている。小島清(1950)「リカァドォの国際均衡論」『一橋論叢』24(1): 25-26。塩沢由典は、リカード貿易理論の「最小モデル」は、2国3財でなければならないと指摘している。塩沢・有賀編(2014)『経済学を再建する』中央大学出版部、第5章第2節。
  11. ^ McKenzie, L. 1954 Specialization and Efficiency in World Production. Review of Economic Studies, 21:147-161.マッケンジーは詳しく説明していないが、塩沢由典(2014)『リカード貿易問題の最終解決』岩波書店には、第3章第3節に解説があり、その厳密な証明がpp.130-131に与えられている。
  12. ^ 池間誠(1993)「国際生産特化パターンの確定 : 多数国多数財ケース」『一橋論叢』110(6): 873-94.
  13. ^ 塩沢由典(2007)「リカード貿易理論の新構成/国際価値論のためにII」『経済学雑誌』(大阪市立大学)85(6): 44-61. Shiozawa, Y. 2007 A New Construction of Ricardian Trade Theory/ A Many-country, Many commodity Case with Intermediate Goods and Choice of Techniques. Evolutionary an Institutional Economics Review, 3(2): 141-187. 簡略な解説が塩沢由典・有賀裕二編(2014)『経済学を再建する』中央大学出版部、第5章にある。
  14. ^ ^ Vanek, Jaroslav 1968. The Factor Proportions Theory: The N-factor case. Kyklos 21(4): 749-756.
  15. ^ E. E. Leamer 1984 Sources of International Comparative Advantage: Theory and Evidence, MIT Press.
  16. ^ Bowen, H.P., E.E. Leamer and L. Sveikauskus 1987 a Multi-Country Multi-Factor Test of the Factor Abundance Theory. American Economic Review 77: 791-809.
  17. ^ Trefler, Daniel 1993 International Factor Price Differences: Leontief Was Right!Journal of Political Economy 101: 961–87. Trefler, Daniel 1995 The Case of the Missing Trade and Other Mysteries. American Economic Review 85: 1029–1046.
  18. ^ Conway, P. J. 2002 The case of the missing trade and other mysteries: Comment. American Economic Review 92(1): 394-404.
  19. ^ Trefler, Daniel 1995 The Case of the Missing Trade and Other Mysteries. American Economic Review 85: 1029–1046.
  20. ^ レオンチェフ以降の実証研究については、竹森俊平『国際経済学』東洋経済新報社、1996年、第5章第4節「レオンチェフ以降の実証研究」および佐藤秀夫『国際経済』ミネルヴァ書房、2007年、第2章第2節「要素賦存理論」を見よ。
  21. ^ Tinbergen, J. 1962 Shaping the World Economy. Suggestions for an International Economic Policy, Twentieth Century Fund, New York. Poyhonen, P. 1963 A Tentative Modle ofTrade between Countries. Weltwirtschaftliches Archive 90: 93-99.
  22. ^ Bergstrand, Jeffrey H. 1985 The Gravity Equation in International Trade: Some Microeconomic Foundations and Empirical Evidence. The Review of Economics and Statistics 67(3): 474-481.
  23. ^ 入門的概説が次の教科書冒頭にある。クルーグマン&オブズフェルト『国際経済学』(上・貿易編)、ビアソン、第2章「世界貿易:概観」の「誰が誰と貿易するのか?」、pp.16-23.
  24. ^ Grubel, Herbert G., and P.J. Lloyd 1975 Intra-industry trade: The theory and measurement of international trade in differentiated products. Macmillan (London).
  25. ^ Krugman, P. R. 1979 Increasing Returns, Monopolistic Competition, and International Trade. Journal of International Economics 9(4): 469-479. Krugman, P. R. 1980 Scale Economies, Product Differentiation, and the Pattern of Trade. The American Economic Review 70(5): 950-959.
  26. ^ Melitz, M. J. 2003 The impact of trade on intra‐industry reallocations and aggregate industry productivity. Econometrica 71(6): 1695-1725. Helpman, Elhanan, Marc J. Melitz, and Stephen R. Yeaple. 2004. "Export Versus FDI with Heterogeneous Firms." American Economic Review, 94(1): 300-316. Baldwin, J. R., & Gu, W. 2003 Export‐market participation and productivity performance in Canadian manufacturing. Canadian Journal of Economics/Revue canadienne d'économique, 36(3): 634-657.
  27. ^ たとえば、Ciuriak, D., Lapham, B., Wolfe, R., Collins-Williams, T., & Curtis, J. M. 2011 New-new trade policy, Queen's Economics Department Working Paper No. 1263 を見よ。
  28. ^ Melitz, Marc J. 2003 The Impact of Trade on Intra-Industry Rreallocations and Aggregate Industry Productivity, Econometrica, 71: 1695–1725.
  29. ^ Helpman, Melitz and Yeaple 2004 Export versus FDI with Heterogeneous Firms, American Economic Review 94: 300-316. Baldwin, J. R., & Gu, W. 2003 Export‐market participation and productivity performance in Canadian manufacturing. Canadian Journal of Economics/Revue canadienne d'économique, 36(3): 634-657.
  30. ^ 若杉隆平・戸同康之 2010 国際化する日本企業の実像/企業レベルデータに基づく分析, RIETI Policy Discussion Paper Series 10-P-027.
  31. ^ a b c d e 石原伸志、小林二三夫、花木正孝、吉永恵一 『改訂 新貿易取引―基礎から最新情報まで 改訂版』経済法令研究会、2019年、4頁。 
  32. ^ a b 石原伸志、小林二三夫、花木正孝、吉永恵一 『改訂 新貿易取引―基礎から最新情報まで 改訂版』経済法令研究会、2019年、5頁。 






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