色素体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 22:52 UTC 版)
起源
色素体は、内部共生をしたシアノバクテリアに由来すると考えられている。シアノバクテリアを取り込み色素体を獲得した真核生物は、緑藻と植物を含む緑色の系統、紅藻の系統、灰色藻の系統という色調の異なる3つの系統(アーケプラスチダ)に分岐した。これらはその色調だけではなく色素体の微細構造にも違いがある。例えば緑色系統の葉緑体は、シアノバクテリアや紅藻、灰色藻にある集光複合体フィコビリソームを全て失っているが、一方植物とそれにごく近縁の緑藻に限って、ストロマチラコイドとグラナチラコイドに区分されるような複雑なチラコイド構造を持っている。灰色藻の色素体は葉緑体や紅色体と対照的に、いまだにシアノバクテリアの細胞壁の名残であるペプチドグリカン層に覆われている。これら一次的な色素体は全て、二枚の膜に囲まれている。
複雑な色素体(complex plastid)は二次共生(真核生物が紅藻ないし緑藻を飲み込み、その色素体を保持する)に由来するものであり、これらは普通二枚以上の膜で囲われ、代謝能が縮小している。紅藻類を二次共生させた複雑な色素体を持つ藻類には不等毛藻(heterokont)、ハプト藻(haptophyte)、クリプト藻(cryptomonad)および大部分の有色渦鞭毛藻類が挙げられる。緑藻類を二次共生させたもの(=葉緑体)としてはユーグレナ類(ミドリムシなど)とクロララクニオン藻類がある。アピコンプレクサ(マラリア(Plasmodium属)、トキソプラズマ症(Toxoplasma gondi)をはじめとする多くの人間や動物の病気の病原体を含む絶対寄生原虫からなる門)も複雑な色素体を持っている。アピコプラストともよばれるこの色素体は、光合成能を失っているものの必須なオルガネラであり、抗寄生虫薬を開発するための標的として有望である。ただしクリプトスポリジウム症を引き起こすCryptosporidium parvumのように、このオルガネラを失っているものもいるし、緑藻由来なのか紅藻由来なのかも未だにはっきりしない。
ある種の渦鞭毛藻(Dinophysis、Amphidinium他)や一部の繊毛虫(Mesodinium)及び鞭毛虫(Hatena arenicola)[疑問点 ]は、他の藻類を摂食し、光合成の恩恵を受けるために消化した藻類の色素体を保持している。しばらくすると色素体も消化される。このような捕らわれた色素体は、クレプトクロロプラスト(kleptochloroplast)と呼ばれている。
色素体と同じ種類の言葉
- 色素体のページへのリンク