細雪 あらすじ

細雪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 18:36 UTC 版)

あらすじ

大阪船場で古い暖簾を誇る蒔岡家の4人姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子の繰り広げる物語。三女・雪子の見合いが軸となり物語が展開する。

主な登場人物

蒔岡家
  • 鶴子 - 長女、本家の奥様
    • 辰雄 - 鶴子の婿養子、銀行員
  • 幸子 - 次女、分家の奥様 -「ごりょうんさん」(船場言葉「御寮人さん」= 若奥様) 谷崎の妻・谷崎松子がモデル。
    • 貞之助 - 幸子の婿養子、計理士
    • 悦子 - 幸子と貞之助の娘
  • 雪子 - 三女 - 「きやんちゃん」(「雪(ゆき)姉ちゃんがつづまった言葉)
  • 妙子 - 四女 -「こいさん」(船場言葉「小娘さん」= 末娘)
その他
  • 井谷 - 幸子たち行きつけの美容院の女主人
  • 奥畑 - 妙子の恋人、貴金属商の三男坊 -「啓坊」「啓ちゃん」
  • 板倉 - 妙子の恋人、写真師
  • 三好 - 妙子の恋人、バーテンダー
  • 瀬越 - 雪子の縁談相手
  • 野村 - 雪子の縁談相手
  • 沢崎 - 雪子の縁談相手
  • 橋寺 - 雪子の縁談相手
  • 御牧 - 雪子の縁談相手、子爵家の庶子

蒔岡家は大阪の中流上層階級の家である。姉妹たちの父親の全盛期は大阪でも指折りの裕福な家だったが、代が変わるころには財産は減ってしまい、船場の店も人手に渡っている。本家は大阪の代々の家に住んでおり、長女の鶴子、その夫で婿養子となって蒔岡の名を継いだ辰雄、その6人の子供の一家である。

分家は阪神間の閑静な郊外、芦屋にあり、次女の幸子、同じく婿養子となって蒔岡の名を継いだ夫の貞之助、幼い娘の悦子の3人家族である。鶴子と幸子には雪子と妙子という2人の未婚の妹がおり、妹たちは本家と分家を行き来している。

物語の冒頭では、今まで雪子にあった多くの縁談を蒔岡家の誇りから断ってきたために縁談が減ってきており、雪子は30歳にして未婚であることが語られる。さらに悪いことに、妙子と間違えられて雪子の名が地元の新聞に載ってしまったことがある。妙子は奥畑と駆け落ちをしたのだ。辰雄は記事の撤回を申し入れたが、新聞は撤回ではなく訂正記事を載せ、雪子に換えて妙子の名を出した。

記事は蒔岡家の恥となり、雪子のみならず妙子の名をも汚すことになった。辰雄の対処に不満を持ち、また辰雄の堅実一方の性格がそもそも気に入らないために、雪子と妙子はほとんどの時間を芦屋の家で過ごすようになった。新聞の事件の後、妙子は人形作りに慰めを見出すようになる。かなり上手で、人形は百貨店で売られている。妙子は幸子に頼んで仕事部屋を探し、そこで長時間人形を作って過ごすようになる。

そんな折、井谷が雪子に瀬越という男性との見合いの話を持ってくる。井谷に急かされ、一家は瀬越について十分な調査が済まないまま非公式な見合いをすることにする。一家はこの縁談に乗り気になるが、調べを進めたところ瀬越の母親が遺伝するという精神病を患っていることが判ったために、最後には断らざるを得なくなる。

数か月後、幸子は女学校で同窓だった陣場夫人から縁談を持ちかけ、その相手は中年のやもめで野村という。幸子は、外見が老けていることもあり特に良いとは思わなかったが、一応調査をすることにし、陣場夫人には決めるのに1、2か月の猶予を求めた。その話の一方で辰雄は勤務先の銀行の支店長として東京に行くことになる。辰雄一家は東京に引越すことになり、未婚の雪子と妙子も一緒に来てほしいと幸子を介して告げられる。妙子は雪子を盾に、また人形作りの忙しさを口実に芦屋へ留まったが、雪子はすぐに行かなくてはならない。

雪子は上辺では何事もないように振舞うものの東京では元気が無く、鶴子はしばらく雪子を大阪に帰らせようと提案する。幸子が雪子を呼び寄せる口実を考えているところに、野村について催促の手紙が陣場夫人から届く。縁談に乗り気ではないものの、2人は芦屋に雪子を連れ帰る口実として見合いに同意する。

その見合いの直前に幸子が流産したため、野村との見合いは延期されるが、1週間後、幸子、貞之助そして雪子はようやく野村と会う。幸子は野村があまりに老けて見えることに驚き、一方で貞之助は、流産後の体調がすぐれない幸子を気遣う素振りを見せない先方に苛立つ。夕食後、一行は野村の家に招かれるが、そこで野村は家の中を隅々まで案内するが、その中で亡くなった妻と子どもたちの仏壇を見せる。雪子は野村の外見や身の上に対して何も不満を感じることはなかったが、この事からその無神経さに嫌気がさし、結婚できないと言う。こうして蒔岡家は野村の求婚を断り、雪子はまた東京に送り返される。

妙子は人形作りに飽き、洋裁と山村舞に精を出すようになる。舞のお浚い会が芦屋の家で行われ、妙子も出演する。板倉という感じの良い若い写真師が写真を撮っている。板倉は妙子の人形の写真を撮っており、妙子と知り合いである。

1か月後、関西地方は大水害に襲われる。妙子は最も被害のひどい地域にある洋裁学院にいたが、板倉が妙子を救出した。板倉の勇気に感じ入り、妙子は好意を持つようになる。やがて妙子と板倉の関係は幸子に知られるが、幸子は板倉の低い出自のため反対する。それでも妙子は彼と結婚するつもりでいる。

妙子は洋裁の師匠と共にフランスに行って洋裁の勉強をしたいと思い、幸子に本家への口添えを頼む。師匠がフランス行きをやめることになると、妙子は洋服店を開くことに決める。妙子は本家に資金援助を依頼するため東京に行くが、板倉が病気になりすぐに大阪に呼び戻される。

板倉は乳嘴突起炎のため入院していたが、手術の合併症からくる壊疽のために亡くなる。板倉の死で、妙子が低い出自の男と結婚するのではという幸子の憂いはひとまず消えた。

6月、辰雄の長姉が幸子に縁談をもたらす。名古屋の名家の出の沢崎である。幸子、雪子、妙子と悦子は辰雄の姉を訪ねて大垣に行き、そこで雪子が見合いをすることになった。見合いはうまく行かなかった。幸子はいい印象を持たなかったが、結局沢崎の方から断ってきた。蒔岡家が縁談を断られたのはこれが初めてだった。

幸子は妙子がまた奥畑と縒りを戻したと聞く。ふたりの交際がだんだんとあからさまになり、貞之助は鶴子に報告する。鶴子は妙子に東京に来るよう申し渡すが、妙子は拒否し絶縁される。

井谷がまた縁談を持ち込む。この橋寺は魅力的な相手だったが、再婚の決心がついていないようだった。貞之助は雪子を連れて橋寺に会い、話を纏めようと奔走するが、雪子の引っ込み思案のために橋寺は縁談を打ち切ってしまう。

その後、幸子は妙子が奥畑の家で重い病気になっているとの知らせを受ける。妙子は赤痢と診断される。病状は次第に悪くなり、姉たちはよい治療を受けさせたい一方、妙子が奥畑の家にいることを知られたくないために悩む。結局妙子は一家の友人の病院に移され、そこで緩やかに回復する。

一方で、幸子は妙子が絶縁されて以来奥畑に頼って暮らしていたことを知る。また三好というバアテンと関係があるらしいとも聞く。幸子は驚くが、今や妙子と奥畑は結婚するしかないと考える。妙子が回復した後、幸子は奥畑が家族から満州行きを勧められていると知る。幸子と雪子は、妙子が一緒に行くべきだと考えるが妙子は同意しない。雪子は、妙子は奥畑から多くの物をもらっており借りがあると説得する。妙子は泣きながら家を出て2日間帰らなかった。奥畑は結局満州へは行かないことにする。

井谷が経営する美容院を売って渡米する予定だという知らせが蒔岡家に届く。出発前に井谷は幸子に、もう一つ縁談があると告げる。維新の際に功労のあった公家華族の御牧子爵庶子で、45歳だという。姉妹が東京に行って御牧に会ってみると、その気さくな人柄にたちまち魅了される。東京滞在中に妙子は、三好の子を妊娠しており4か月だということを幸子に告げる。幸子と貞之助は妙子が有馬で秘密裏に出産するよう手配する。

蒔岡の家名を守るため、貞之助は奥畑に妙子の行状について他言しないよう求める。奥畑は妙子に使った金銭を補填することを条件に同意し、貞之助は2000円を支払う。結局妙子は死産し、三好と所帯を持つ。蒔岡家は御牧家から求婚への返答を求められる。雪子はそれを受け入れ、貞之助は本家に同意を求める手紙を送る。婚礼の日取りと場所が決まり、新居も決まった。雪子は婚礼衣装が届いても楽しげではなく、下痢が続き東京へ向かう列車でも止まらない。


  1. ^ a b c d e 「谷崎潤一郎作品案内」(夢ムック 2015, pp. 245–261)
  2. ^ a b c 「戦中から戦後へ」(アルバム谷崎 1985, pp. 78–96)
  3. ^ 「谷崎潤一郎年譜」(夢ムック 2015, pp. 262–271)
  4. ^ 「大谷崎の死をいたむ 世界文学の損失」『日本経済新聞』昭和40年7月30日夕刊7面
  5. ^ NAZLI KAR [CAN YAYINLARI]、Esin ESEN訳 2015年12月、ISBN 9789750727221
  6. ^ 島田守家 『ブルーバックス B-922 暴風・台風びっくり小事典 目には見えないスーパー・パワー』(講談社、1992年6月20日)p.68 ISBN 4-06-132922-7
  7. ^ 「昭和25年」(80回史 2007, pp. 48–51)
  8. ^ 「1950年」(85回史 2012, pp. 80–86)
  9. ^ a b 細雪”. 角川映画. 2021年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月24日閲覧。
  10. ^ a b kinenote.
  11. ^ 「さ行――細雪」(なつかし 1989
  12. ^ allcinema.
  13. ^ “NHKが平成版「細雪」ドラマ化!四姉妹は中山美穂&高岡早紀&伊藤歩&中村ゆり”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2017年11月9日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/11/09/kiji/20171109s00041000184000c.html 2017年11月9日閲覧。 
  14. ^ 2018年5月1日中日劇場(中日新聞文化芸能局)発行「中日劇場全記録」
  15. ^ “「細雪」1500回上演へ、賀来千香子×水野真紀×紫吹淳×壮一帆が4人姉妹”. ステージナタリー. (2016年8月2日). https://natalie.mu/stage/news/196680 2016年8月2日閲覧。 






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