等化子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/29 21:36 UTC 版)
定義
集合 X, Y と二つの写像 f, g: X → Y に対し、f と g との等化子(ここでは Eq(f, g) と書く)とは、Y において f(x) = g(x) が成り立つような x ∈ X 全体の成す集合、記号で書けば
を言う。等化子を表す記号は文脈によって違いうるが、例えば情報理論の文脈ではふつう {f = g} という記法が用いられる。
上記定義においては f, g 二つの写像しか用いていないが、二つと限らず、さらに言えば有限個と限らず無数の写像に対してそれらの等化子を定義することができる。一般に、X から Y への写像からなる任意の集合 ℱ に対し、ℱ のどの二元 f, g に対しても Y において f(x) = g(x) が成り立つような x ∈ X 全体の成す集合
を ℱ(に属する元たち)の等化子と呼ぶ。これは ℱ = {f, g, h, …} のような集合であるときには Eq(f, g, h, …) のように書くこともできる。情報理論の文脈では {f = g = h = …} のようにも書かれる。
この一般化した定義において ℱ が単元集合 {f} に退化した場合を考えると、f(x) は常に自分自身と等しいから、その等化子は Eq({f}) = X となる。さらに退化して ℱ が空集合 ∅ のときは、定義における普遍量化は自明な意味で真となるから、やはり定義域全体 Eq(∅) = X となる。
差核
二変数の等化子(つまり、ちょうど二つの写像の等化子)は差核とも呼ばれ、DiffKer(f,g), Ker(f,g), Ker(f − g) などのようにも書かれる。最後の記法は「f, g の差核とは単に差 f − g の核のことである」ことによるもので、この用語の由来でもあり、これが抽象代数学の文脈で後半に現れる理由を説明するものである。さらに言えば、単一の写像 f に対する核は、零写像すなわち値 0 の定値写像との差核 Eq(f, 0) として定式化しなおすことができる。
もちろんこれらの議論は写像の核が 0 の逆像となっているような代数学的な文脈でのことであって、どんな場合にも成り立つというわけではないが、「差核」という用語法に他意はない。
- ^ Barr, Michael; Wells, Charles (1998) (PDF). Category theory for computing science. p. 266 2013年7月20日閲覧。
- 1 等化子とは
- 2 等化子の概要
- 3 圏論における等化子
- 4 性質
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