符号付測度 符号付測度の概要

符号付測度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/15 07:26 UTC 版)

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定義

符号付測度には、無限大の値を取り得るか否かという点において、わずかに異なる二つの概念が存在する。研究論文や発展的な内容の書物においては、符号付測度は通常、有限の値を取ることのみ許されている。一方、大学生を対象とした教科書などにおいては、それらが無限大の値を取ることも許されていることが少なくない。混乱を避けるために、この記事においては、それら二つの概念をそれぞれ有限符号付測度(finite signed measure)および拡張符号付測度(extended signed measure)と区別して呼ぶことにする。

与えられた可測空間 (X, Σ)、すなわちある集合 X とその上の σ-代数 Σ に対して、定義される拡張符号付測度とは、 を満たす σ-加法的関数

のことを言う。ここで、 が σ-加法的であるとは、Σ 内の任意の互いに素な集合の列 A1, A2, ..., An に対して、等式

を満たすことを言う。この定義の帰結として、任意の拡張符号付測度は +∞ あるいは −∞ を値として取り得るが、それらを同時に取ることは出来ないということが分かる。実際、∞ − ∞ は定義されず避ける必要があるためである[2]

有限符号付測度も、実数の値のみ取り得るという点を除いて、上記と同様に定義することが出来る。すなわち、+∞ あるいは −∞ の値を、有限符号付測度は取らない。

有限符号付測度はベクトル空間を構成する。一方、拡張符号付測度は加法について閉じてさえおらず、そのことがそれらの取り扱いを難しくしている。また、測度は拡張符号付測度の一種であるが、一般的には必ずしも有限符号付測度ではない。

ν を空間 (X, Σ) 上の非負の測度とし、可測関数 f:XR を、

を満たすものとする。このとき、Σ 内のすべての A に対して

で与えられる有限符号付測度が存在する。

この符号付測度は、有限の値しか取り得ない。+∞ も値として取ることが出来るようにするためには、上記の f の絶対可積分性についての仮定を、より弱めた

という仮定に変える必要がある。ここで、f(x) = max(−f(x), 0) は f負の部分である。


  1. ^ チャージは必ずしも可算加法的である必要はない。有限加法的でのみあり得る。この概念についての包括的な参考文献としてはBhaskara Rao & Bhaskara Rao 1983を参照されたい。
  2. ^ 不定形の詳細については記事「拡大実数」を参照されたい。


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