立合い 立合いの概要

立合い

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 07:55 UTC 版)

立合い

力士同士が呼吸をあわせて「立ち合う」のが語源。審判など第三者によらず、競技者同士の合意によってはじめて競技が開始されるという意味で、対戦形式のスポーツの中ではきわめて稀有な形態である(詩人ジャン・コクトーは「バランスの奇跡」と讃えた[1])。なお、行司の掛け声である「はっきよい(又は)はっけよい(発気揚々・発気用意)[2][3]、残った」を立合いの合図であるという認識が広く浸透しているがこれは誤りである。アマチュア相撲においては、スポーツとしての整合性などから、競技者同士が両手をついた状態で、審判が競技開始を合図する形式もとられている。

仕切り

土俵に上がった両力士は、中央に進み四股を踏む。その後腰をかがめて両手を土俵におろす。この身構えをしながらお互いの呼吸を合わせる動作を仕切りという。

普通は、蹲踞の姿勢から立ち上がり、両者目を合わせつつ腰を落とし、上体を下げ、片手を着き、両者の合意の成立した時点でもう片手をついてから相手にぶつかって行く。気が合わない場合はこれを中止して、気が合うまで繰り返す(仕切り直し)。かつては気が合うまではいくらでも繰り返し、時には1時間以上も仕切りを繰り返していたが、1928年1月場所から制限時間が設定されている(ラジオの大相撲放送開始に合わせたものである)。制限時間は呼出が東西の力士を呼び上げてから勝負審判の時計係が計り始める。この時間は当初は幕内10分、十両7分、幕下5分であったが、テレビの大相撲中継が本格的に定着して来た1960年代からは幕内4分、十両3分、幕下以下2分と定められている[4][5]

現在では、大相撲をはじめ多くの土俵に2本の仕切り線が引かれ、それより前に手を着いて立ってはならないと定められている(仕切り線上に手をつくのは認められる)。これも、制限時間導入とともに定められた。古くは、互いの立ち位置まですべて立合う両力士の合意にもとづいておこなわれた。両者が頭をくっつけあって仕切る写真も現存する。相手を特定範囲の外へ出せば勝ちとなる競技で、競技開始位置まで競技者同士の判断にゆだねられていたというのは、近代的な視点ではおおらかというより大雑把と言うべきであるが、それで問題が生じたという逸話もなく、ことさら立ち位置によって有利を得ようとする力士もいなかったのだろう、と解釈されている。なお仕切り線より後ろに下がる分には特に規定はなく、好きなところで仕切って良い。近年では、舞の海の奇策を警戒して、貴闘力が徳俵いっぱいまでさがって立合った事もある。2021年名古屋場所14日目に、横綱白鵬がやはり徳俵いっぱいまで下がって仕切り、大関正代を破った一番もあるが、品格に欠けるということで物議を醸した。

手をおろすとき、一般的には差し手と逆側の手を先におろすのが通例とされる。もっとも羽黒山のように左差しでありながら左手を先におろしていた例もあり、一概にはいえない(羽黒山の場合は左を差すことより右で相手の褌をつかむことを優先していた)[6]。また、先に手をおろして構えをし、まず陣地について相手を待つというのはよくないこととされる。両力士が同時に仕切りに入るのが礼であるし、そうしなければ制限時間を設けた意味がなくなってしまう[7]

重要性

相撲において、立合いは勝敗において非常に重要な要素である。15尺(4.55m)という小さな円の中で巨大な力士が戦い、短期決戦が当たり前という勝負の性質から、立合いにおいて一度有利な状態を作られてしまった場合、それを挽回するというのは非常に困難である。俗に「立合いで八割が決まる」といわれるのは、このことを示唆しているといえよう。

それゆえ、仕切りの短時間の間に相手の策戦を見抜き、それに対応する自分の取り方が土俵に上がる前から考えていたとおりでよいのか、それともとっさに判断してこちらの策戦を変更するか、変えるとすればどう変えるのかを決定しなければならない[8]


注釈

  1. ^ ただしその当時においても、大関清國は「両手を付いてての立ち合い」を実行、そして「私は両手を付いてから立つので、私と対戦する時にはそのつもりで仕切って欲しい」と公言していた。ほか、幕内力士では若天龍若吉葉などが両手をついての立合いを励行していた。

出典

  1. ^ 永六輔『役者 その世界』p191、岩波現代文庫、2006年
  2. ^ はっけよい
  3. ^ 08.相撲の「発気用意」の出典について
  4. ^ a b 大空出版『相撲ファン』vol.4 101頁
  5. ^ a b 『大相撲ジャーナル』2017年6月号64-65頁
  6. ^ 「日本の大相撲」p.41
  7. ^ 「日本の大相撲」p.45~46
  8. ^ 「日本の大相撲」p.41~43
  9. ^ “白鵬、時間前に立ち7連勝…春場所7日目”. 読売新聞. (2013年3月16日). https://web.archive.org/web/20130320031616/http://www.yomiuri.co.jp/sports/sumo/news/20130316-OYT1T00687.htm 2013年3月16日閲覧。 
  10. ^ 高永・原田、p.459
  11. ^ 高永・原田、p.462~466
  12. ^ 高永・原田、p.498


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