液晶 概要

液晶

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/15 15:35 UTC 版)

概要

液晶は、液体と結晶の間に出現する中間相の一種で、細長い分子や円盤状の分子が、分子の方向はある規則に従って揃っているが、分子の位置は結晶ほどの強い対称性を持たない状態の総称である。

ネマチック液晶(左)では細長いか円盤状の分子が向きをそろえ、ランダムに浮遊している。スメクチック液晶(中)は通常は棒状の分子から構成され、層構造(1次元周期構造)である。カラムナー液晶(右)は円盤状の分子から構成されることが多く、2次元的な周期構造を持っている。

液晶は、各分子の重心位置の配置の規則性の程度によって分類される。例えば、一般的な液体と同様に、分子の配置に対称性がないネマチック液晶[注 1]1次元の対称性を持つスメクチック液晶2次元の対称性を持つカラムナー液晶などである。歴史的には、ネマチック液晶、スメクチック液晶にコレステリック液晶を加えた3分類が現在でも用いられているが、後述するようにコレステリック液晶はネマチック液晶に含まれる。また、中間相には液晶の他に、結晶と同様の3次元的な重心秩序は存在するが、分子の方向はランダムな柔粘性結晶(Plastic Crystal)がある。かつて液晶の命名は、研究者により非系統的に行われていたが、2001年にIUPAC(国際純正・応用科学連合)が国際液晶学会の協力の下、名称定義に関する勧告を公表[2]しており、本稿での名称はそれに準じたものである。

すべての物質が液晶状態となるわけではなく、多くの物質は結晶から液体へと直接変化する。液晶相を発現する物質の中で、温度変化により結晶と液体の間に液晶状態をとるものをサーモトロピック液晶溶媒へ溶解するとある濃度範囲で液晶となるものをリオトロピック液晶と呼ぶ。また、細長い分子からなる液晶をカラミチック液晶、円盤状分子からなる液晶をディスコチック液晶と呼ぶ。


注釈

  1. ^ Nematic液晶の日本語表記には「ネマチック」と「ネマティック」がある。日本液晶学会誌では2020年1月現在で「ネマチック」表記を用いている。これは文部省学術用語集 分光学編(S49年初版、H11年増改訂版)に従ったと考えられるもので、ここでもネマチック表記とする。スメクチック等も同様。
  2. ^ 英訳は Crytals That Flow Compiled with translation and commentary by T. J. Sluckin, D. A. Dunmur and H. Stegemeyer, Taylor & Fransis (2004)
  3. ^ この文献以外に複数の文献があるがいずれも液晶という言葉が用いられている。

出典

  1. ^ 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ASCII jpデジタル用語辞典,化学辞典 第2版,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,知恵蔵,精選版 日本国語大辞典,とっさの日本語便利帳,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “液晶とは”. コトバンク. 2021年6月7日閲覧。
  2. ^ Definitions of Basec Terms RElating to Low-molar-mass and Polymer Liquid Crystals, IUPAC Recommendations 2001. Pure Appl. Chem., Vol. 73 No. 5, pp.845-895, (2001).
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