死球 死球の概要

死球

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/07 09:00 UTC 版)

死球を受ける右打者(藤井淳志
死球を受ける左打者(ジョー・クリーディ

概説

投手の投球が打者に触れた場合、球審はボールデッドのジェスチャー(両手を上方に広げる、ファウルボールと同じジェスチャー。デッドボールとは主旨が異なる)をしてプレイを停止する(公認野球規則 5.06(c)(1)、この点が四球とは異なる)。ここで「投球が打者に触れる」とは、適正に着用された打者のユニフォームをかすった場合や、バウンドした投球が打者に触れた場合も含まれる。

そのうえで、球審が次のいずれにも該当しないと判断した場合、死球が宣告され打者に一塁が与えられる(公認野球規則 5.05(b)(2))。

  • ストライクになる場合。打者が打とうと試みていた(バントも含まれる)場合、もしくはバウンドしない投球がストライクゾーンを通過している場合が該当し、ストライクが宣告される。
  • 打者が避けようとせずにボールに当たった場合。ボールが宣告される。ただし、球審が避けられないと判断した場合は除く。

死球が認められる場合、球審はボールデッドのジェスチャーをし、必要に応じてボールが当たった箇所を示す(ノーボイス)。これにより打者は一塁への安全進塁権を得る。また、打者が一塁に進んだことで押し出される走者に限り、次の塁へ進む権利を得る(満塁の場合、三塁走者は本塁へ進む。いわゆる「押し出し」)。なお、投球が打者に触れた時点でボールデッドとなるため、次の塁を与えられた走者以外は進塁を試みることは認められず、盗塁を試みていても元の塁に戻される。

よくある誤解として、打者がバットを振ったように見えたら死球ではなくストライクだと思われているが、ルール上は『打とうと試みていた、避けようとしなかった』かどうかという打者の意図を球審が主観的に判断するものであってバットが回ったかどうかなど物理的な状態は無関係である為、ハーフスイングと同様に明確な基準がルール上に存在している訳ではない

ビーンボール

死球のリスクをともなう一方で、投手が打者に近いコースを狙って投球することは野球における戦術のひとつであり(内角攻め)[1]、打者なら誰もが通る道とまで言われている[2]アメリカ合衆国では打者の頭部を狙う投球を「ビーンボール(beanball)」と呼び(beanは古い英語のスラングで頭を指す)、打者を仰け反らせることを意図した投球である「ブラッシュバック・ピッチ(brush-back pitch)」とは区別している。しばしばビーンボールを投じる投手は「ヘッドハンター(head hunter)」と呼ばれる。日本ではこれらを区別せず、打者を狙った投球を一般にビーンボールと呼んでいる。

また、野球の不文律を破った選手に対して制裁として故意に死球が投じられることがある(打順が相手チーム投手の場合を除く)。この場合は頭部ではなく、より危険の少ない背中、マウンドに向いている側の腕(脛と共に、衝撃軽減のための防具で固められていることが多い)、太腿、尻などが狙われる[3]


注釈

  1. ^ なお、アメリカで「デッドボール」といえば1900年代 - 1910年代に広く用いられていた「飛ばないボール」のことを指し、実際この時代は「デッドボール時代」と呼ばれている。
  2. ^ 2回表、ヤクルト・西村龍次が巨人・村田真一に、3回裏には巨人・木田優夫が西村に、それぞれ死球を与えた。
  3. ^ なお、この乱闘では当事者となったグラッデンと中西親志に加え、さらに投球した西村も「危険投球」により退場処分となった。
  4. ^ ただし中継映像では明らかに頭部に投球が当たっておらず、一度ファールの判定がなされたのち原辰徳監督の抗議によって頭部死球となったものである。なお当時はリクエスト制度は無かった。
  5. ^ 19世紀を含めると、上記のヒューイー・ジェニングス
  6. ^ 19世紀の記録を含めて最多
  7. ^ 19世紀を含めると上記のダン・マッギャン

出典

  1. ^ 内角攻めた!危険球ショック払しょく山口 nikkansports.com 2012年8月5日
  2. ^ 阪神・掛布HLT 佐藤輝は清原、松井級!「修正能力や対応能力感じる」”. デイリースポーツ online (2021年3月23日). 2022年2月20日閲覧。
  3. ^ 新井良ガッツポーズに“報復死球” 東スポweb 2012年08月03日
  4. ^ THE MAYS/CHAPMAN INCIDENT The IncidentPrelude” (英語). TheDeadballEra.com. 2014年1月22日閲覧。
  5. ^ Major leaguers who died in-season” (英語). ESPN.com. 2014年1月22日閲覧。
  6. ^ a b Beanballs are dangerous and unnessasary” (英語). Examiner.com. 2014年1月21日閲覧。
  7. ^ a b 伊東一雄. メジャー・リーグ紳士録. ベースボール・マガジン社. p. 90-91 
  8. ^ Return From The Dark” (英語). Sports Illustrated. 2014年1月22日閲覧。
  9. ^ a b “ハマスタ騒然!打席から救急車搬送…会沢、顔面死球”. スポーツニッポン. (2012年8月3日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2012/08/03/kiji/K20120803003822570.html 2021年4月11日閲覧。 
  10. ^ “【8月4日】1979年(昭54) “赤鬼”マニエル、“アメフット”スタイルで復活”. スポーツニッポン. (2007年7月22日). オリジナルの2016年7月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160713154723/http://www.sponichi.co.jp/baseball/special/calender/calender_august/KFullNormal20070722195.html 2021年4月11日閲覧。 
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  12. ^ 二宮, 清純 (2012年8月21日). “第504回 アクシデントを乗り越えて高く羽ばたけ 広島・會澤翼捕手”. SPORTS COMMUNICATIONS. 2021年4月11日閲覧。
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  15. ^ a b ““バットマン”鳥谷、六回に代打で登場 甲子園大歓声!連続出場記録も更新”. デイリースポーツ. (2017年5月25日). https://www.daily.co.jp/tigers/2017/05/25/0010223273.shtml 2021年4月11日閲覧。 
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  19. ^ 球史に残る神宮乱闘劇の主役を演じた“暴れ馬”グラッデン/平成助っ人賛歌【プロ野球死亡遊戯】”. 週刊ベースボールONLINE. 2021年5月17日閲覧。
  20. ^ 読売新聞1994年11月13日27面
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  22. ^ “能見、救った!超スクランブルでプロ初セーブ ドリス初球退場の大ピンチを3人斬り”. デイリースポーツ. (2018年8月17日). https://www.daily.co.jp/tigers/2018/08/17/0011549764.shtml 2018年8月17日閲覧。 
  23. ^ 鷹・笠谷俊介が危険球で1球退場 13点差で登板も初球頭部死球、両軍に警告”. Full-Count(フルカウント) ― 野球ニュース・速報・コラム ― (2022年7月20日). 2022年7月22日閲覧。
  24. ^ 【ロッテ】西村天裕が1球で危険球退場 西武・柘植に頭部死球”. スポーツ報知 (2023年4月13日). 2023年4月13日閲覧。
  25. ^ “西武佐々木健、わずか3球で危険球退場 打者1人で退場は史上初”. 日刊スポーツ. (2021年7月2日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202107020000755.html 2021年7月2日閲覧。 
  26. ^ “広島・黒原 わずか3球で危険球退場 度会の顔付近に死球で球場騒然”. スポニチ. (2024年3月30日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2024/03/30/kiji/20240330s00001173404000c.html 2024年3月30日閲覧。 
  27. ^ “【巨人】イースタン・リーグのDeNA戦に先発の高橋優貴が頭部死球で2球で危険球退場”. スポーツ報知. (2022年7月7日). https://hochi.news/articles/20220707-OHT1T51153.html?page=1 2022年7月7日閲覧。 
  28. ^ “【日本ハム】多田野日本S初の危険球退場”. 日刊スポーツ. (2012年11月1日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/f-bb-tp0-20121101-1041050.html 2021年4月11日閲覧。 
  29. ^ 歴代最高記録 死球【通算記録】 - NPB.jp 日本野球機構
  30. ^ 歴代最高記録 死球【シーズン記録】 - NPB.jp 日本野球機構
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  40. ^ 19世紀を含めると、上記のジョー・マクギニティ
  41. ^ ライブボール時代以前を含めると、上記のチック・フレーザー
  42. ^ https://www.baseball-reference.com/leaders/HBP_p_season.shtml
  43. ^ 新人記録
  44. ^ 19世紀を含めると、上記のフィル・ネル





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