槓 メリットとデメリット

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/29 15:45 UTC 版)

メリットとデメリット

ここでは一般的なメリット・デメリットを示す。むろんリスクは戦術次第であり、例えば情報を与えることによって相手の裏をかくなど、戦況によってメリットにもデメリットにもなりうる場合がある。

  • メリット
    • 刻子よりも高い符が得られるため、満貫未満の場合、得点計算において符により若干有利になる。
    • 嶺上牌の取得により、事実上、自摸が1回増える。暗槓及び加槓の場合は事実上連続で自摸ることになり、大明槓であっても対面または下家からであれば上家(下家からの場合は対面も)のツモ番を飛ばして早く自摸ることができる。聴牌のときは自摸アガリ(嶺上牌でアガれば嶺上開花)の可能性が高まる。
    • 嶺上開花三槓子四槓子などの役が狙える。
    • ドラが増える。リーチであれば槓裏により2倍に増えるルールも多い。
    • 他家の一発を消滅させることができる。
    • 他家の当たり牌、または鳴きがありうる牌を引いたとき、暗槓により使い切ることができる。
    • 相手の順子の成立が不可能になる場合がある。自分が三をカンしたとき、相手に一二のペンチャンがあれば、一二三と揃えることは不可能になる。
    • 暗槓をした後に自分がリーチをすれば、必然的に手役は高まることが予想されるので、他家は降りやすくなり、より自摸アガリしやすい。
    • 対面または下家からの大明槓の場合、それぞれ上家・対面のチーを防ぐことができる(邪魔カン)。
    • 大明槓の場合、その牌を捨てたプレイヤーの流し満貫を消滅させることができる。
    • ドラを槓すると、その時点で満貫が確定する(ドラ4翻+和了に必要な役1翻)。役牌であればそれだけであがれるし、連風牌であれば6翻で跳満まで確定する。赤ドラルールではドラの五を槓すれば6翻(5翻+役1翻)で、やはり跳満が確定する。
    • 暗槓及び大明槓の場合、面子を確定させることにより、安目の待ちを消したり、片和了や振聴を解消したりできる場合がある。

これらのメリットから麻雀漫画においては、クライマックスのシーンなどで槓の絡む闘牌が多用される傾向がある[9]

  • デメリット
    • 槓子となった牌は捨てることができなくなるため、加槓以外では打牌の選択肢が減り、基本的に降りるのがその分難しくなる。安牌の槓のときは安牌をその分失うことになる。
    • 槓子となった牌は他の面子に組み替えることができなくなるため、手牌の自由度が損なわれる。
    • 槓子を晒すことにより、他のプレイヤーに情報を与えてしまう。中張牌の暗槓・大明槓の場合は他家にとって瞬時にできる完全壁となり、中張牌の加槓の場合は他家にとって3枚壁が完全壁に変わることになる。
    • 他のプレイヤーにとってもドラが増える。特に自分が門前を崩している場合は、他の門前のプレイヤーに一方的に槓裏のチャンスを与えることになる。他家がリーチをしているとき、そのプレイヤーにとってドラが増える可能性が高まる。
    • 加槓の場合、2人打ちを除き搶槓のリスクがある。
    • 対面または下家からの大明槓の場合、下家(対面からの場合は対面も)のツモ番が早くなる。
    • 王牌を引いてくるため、王牌に他家の当たり牌が埋もれていた場合、それが場に出てしまうことがある。

種類による違い

暗槓の場合

暗槓は符の増加量が最も多くなる形であり、満貫未満であれば確実に符跳ねを起こす。特にヤオ九牌の暗槓は32符で、暗刻からの増加量にして+24符となり、満貫未満であれば1翻増加程度に相当する打点上昇が見込める(ただしヤオ九牌の暗槓を2回して和了しても2翻相当の打点上昇になるわけではなく、それよりは打点上昇が少なくなる)。中張牌の場合は16符で暗刻からの増加量にして+12符で、符の1ランク増加程度の打点上昇となる。また国士無双を除き、搶槓で放銃する可能性も無く(ルールによっては国士無双の暗槓搶槓も認められない)、門前での暗槓も門前を崩さない。特に門前で聴牌していれば立直により槓ウラのチャンスも得られる。一方、既に副露している場合は門前の他家のみに槓ウラを増やすことになる。また前述のように、暗槓により該当の暗刻子が暗槓子になっても、一部例外を除き引き続き暗刻子としても扱われる。

しかし大明槓などに比べればデメリットは少ないものの、デメリットとして手牌の一部を他家に知らせることになることと、手牌の自由度が損なわれることが挙げられる。数牌(特に中張牌)では槓をしなければ数牌1枚プラス刻子として扱うことが出来、周辺の牌をツモれば塔子プラス刻子として扱うことが出来る。しかし暗槓をしてしまえば不可能になり、槓子の前後の数牌はその局に限っては使いにくくなる(順子構成能力が老頭牌と同じになり、3・7の槓であればその外側の牌が順子にできなくなって字牌と同様雀頭・刻子・槓子(および他家の国士無双)でしか使えなくなる)。字牌の場合はほぼ絶対の安牌(国士無双以外)を4枚失うことになる。

高い確率で和了できそうな状況には有効であるが、降りを考えるのであれば、暗槓をする牌を切ることがロン牌になると予測される場合の緊急回避手段としての暗槓を除いてはやるべきではないと考えられる。

大明槓の場合

大明槓は搶槓の対象にはならないものの、暗槓や加槓と比べてもメリットが少なく、デメリットが大きいため、特に理由がない限りむやみに行われる形ではない。

符計算の観点では、大明槓(暗刻子 → 明槓子)をしてもその面子部分に由来する符の増加は2倍にとどまり(暗槓や加槓の場合は4倍)、中張牌は4符、ヤオ九牌でも8符増加するにすぎない。特に門前の場合は副露により門前加符10符の権利を失うため、ロン和了の場合は大明槓したばかりに符が下がることすらある。またツモ和了の場合でも、門前清自摸和が成立しなくなり、ドラに関しても大明槓による新ドラは全員に有効な1種類が増えるだけなのに対し、門前で立直した場合には当事者自身のみに有効な裏ドラが1種類以上増えることを考えると、門前からの大明槓は戦略的に見て基本的にはほぼデメリットしかない行為となり、常識的にはタブーとされる。ただし、後述のようにごく限定的な局面においては門前からの大明槓が戦略上有用になるケースもあるとされ、プロ雀士の実戦でもわずかながら実例が存在する。

一方、既に副露している場合は、上記のようなデメリットは無く、門前からの場合と比べて符跳ねのメリットが明確となる点でそれなりに有効になることもあるが、手牌の一部を他家に公開することになるし、門前の他家のみに槓ウラを増やすリスクが伴う。さらに、対々和狙いの場合に2副露目に大明槓をしてしまうとその時点で三暗刻の可能性を放棄することになる。

大明槓をあえて行う価値がある状況としては、三槓子・四槓子の役を狙う場合や、すでに副露しているか今後副露する予定で、符の増加や槓ドラにより少しでも点数を増やしたい場合、後述の四開槓による流局を狙う場合などがあり、上家以外からの大明槓であればツモ順ずらしの効果を利用することも考えられるが、逆にこれらに該当しない状況では大明槓を行う意味はほとんどなく、暗刻のままにしておく方がメリットが大きい。

このように大明槓はむやみに行われる行為ではないため、一部の雀荘や団体などでは、みっともない行為として大明槓をマナー違反とする向きもあり、厳しい所では禁止していることもある。極端な例では、雀鬼流では大明槓のみならず加槓や副露状態の暗槓なども禁止され、門前聴牌状態での暗槓のみ認められている。

以下は門前からの大明槓など、一見メリットがないように見える大明槓の有効性に関する具体例である。

(例)東2局、東家、ドラ

   出る

矢島亨の第17期雀竜位決定戦における実例。序盤の2向聴の門前状態だが、副露しないと和了れなさそうな和了が遠い状況で、普通にチー・ポンで副露していくとおそらく2900点になってしまうであろう状況である。ここで矢島はダブ東の暗刻を大明槓することによって、符跳ねで点数アップも狙いつつ他家にプレッシャーを与えるという手法を取った。新ドラが1枚乗れば7700点以上の打点が確定するというのも大きく、実際この大明槓によって新ドラはとなった(ちなみにこの局は最終的には横移動で和了れなかったが)。

(例)南4局、南家、ドラ、トップと5000点差

   出る

逆転するには、有効牌を引いて門前聴牌できればよいが、普通にチー・ポンで副露して聴牌すると3900点となって逆転条件を満たさなくなってしまう。この場合はを大明槓することによって、符跳ねで40符3翻の5200点以上を確定させることができ、これなら逆転条件を満たした上でどこからでも仕掛けられるようになる。なおの大明槓の後に有効牌をツモって聴牌することによって、結果的に大明槓せず門前で聴牌した場合と比較して門前清自摸和・門前加符・立直の権利を失う形になってしまったとしても、逆転条件を満たすことは変わらない。

(例)南4局、南家、ドラはこの手牌にはないものとする

   出る   

1副露の対々和のツモり三暗刻の聴牌。ここからを大明槓しないでおいた場合と大明槓した場合(新ドラが乗らなかった場合)の役と得点は次の表の通り。

發大明槓なし 發大明槓あり
白ツモ 白・發・対々和・三暗刻、3000-6000 白・發・対々和(60符)、2000-4000
白ロン 白・發・対々和(40符)、8000 白・發・対々和(50符)、8000
二萬ツモ 發・対々和・三暗刻、2000-4000 發・対々和(60符)、2000-3900(切り上げ満貫採用時2000-4000)
二萬ロン 發・対々和(40符)、5200 發・対々和(50符)、6400

を大明槓した場合、ツモり三暗刻は消滅してしまうため、新ドラが乗らなければツモによる得点は(厳密には切り上げ満貫非採用時にはツモによる得点もわずかに)下がってしまうが、最も安いロンの得点が大明槓の符跳ねにより高くなるため、自身がトップでない場合、点棒状況・逆転条件によってはの大明槓が有効と考えられる。

(例)南4局、西家、持ち点40000点、ドラ表示牌によるドラはこの手牌にはないものとする

   出るor

他家の状況は次の通りとする:

  • 東家:持ち点42500点(トップ)
  • 南家:持ち点10000点
  • 北家:持ち点7500点→6500点(立直)

このまま通常通り門前のままで進めても、自分が和了れば、立直していなくてもタンヤオドラ1のロン40符2翻、ツモ30符3翻が見込める形で逆転できるが、立直棒が出たことによって、この手牌は索子の中張牌を鳴いて聴牌しても30符2翻以上となり自分の和了による逆転条件は満たしている。ここからまたはを大明槓した場合を考えると、符ではの2面子の合計の符が12符となりテンパネし、翻数では槓ドラが乗らなければツモロン共に40符2翻でツモの和了点は門前の場合より下がってしまうが自分の和了による逆転条件は維持できる。一方ここが重要だが、大明槓によって既に立直している北家からすれば槓ドラ・槓裏が増えて得点が増える確率が高くなることになり、もし北家が跳満か倍満、あるいは三倍満をツモれば、親かぶりで自分がトップになることになる。このように、親かぶりを狙って大明槓するケースもある。

加槓の場合

加槓の場合、符の増加量は大明槓より多く暗槓より少ない。満貫未満の場合、ヤオ九牌であれば12符の増加であるため確実に符跳ねを起こすが、中張牌の場合は6符の増加であるため符跳ねしないケースもある。また、既に副露している刻子に対して行う性質上、そもそも門前は崩れており、他の槓と違い、他家に新たな手牌情報をほとんど与えないで済む。しかし、特に数牌の場合は搶槓で放銃する可能性という独特のリスクを持ち(字牌の場合は国士無双のみ)、さらに明槓である以上は門前の他家のみに槓ウラを増やすリスクが伴う。ただし、高い確率で和了できそうな聴牌をしている・他家の多くが副露している・打牌しても安全牌と判断できるような場合はそうしたリスクが減ることもあり、実用性は状況次第である。

槓の種類による比較
○:全くあるいはほぼノーリスク ×:リスクあり △:状況次第
事象 / 槓の種類 暗槓 大明槓 加槓
面子の符(増加量) 4倍(中張牌+12、ヤオ九牌+24) 2倍(中張牌+4、ヤオ九牌+8) 4倍(中張牌+6、ヤオ九牌+12)
槓ウラ △(門前では自身の槓ウラで有利だが、他家も門前ならリスクあり) ×(副露しているため自身は槓ウラを得られず、全員副露の状態でない限り槓ウラのリスクあり)
門前を崩す可能性 ○(無関係) ×(可能性あり) ○(副露済み)
槍槓の対象 △(国士無双で暗槓の槍槓ができる場合のみ) ○(無関係) ×(対象になる)
新たな手牌公開 ×(公開する) ○(公開済み)

槓による面子部分に由来する符の増加量の順に並べると次のようになる。

ヤオ九牌暗槓(+24)>中張牌暗槓(+12)=ヤオ九牌加槓(+12)>ヤオ九牌大明槓(+8)>中張牌加槓(+6)>中張牌大明槓(+4)

満貫未満の場合、符による打点上昇の価値は次のようになる。

  • ヤオ九牌暗槓:1翻増加程度の価値
  • 中張牌暗槓・ヤオ九牌加槓:符の1ランク増加程度(符跳ねは確実。場合によっては2ランク増加)
  • 大明槓・中張牌加槓:場合により符が1ランク増加。符による打点上昇がない場合もある。

槓による符跳ねの代表例は以下のようなものである。以下の例では、聴牌状態からの槓とし、大明槓は副露聴牌状態からとする。

(例)(ツモ30符、ロン40符)

↓一筒を暗槓

   (ツモ60符、ロン70符)

門前状態からのヤオ九牌の暗槓の場合は、ロンの場合70符という比較的出現頻度の低い符が登場することが多い。ツモの場合の60符は、30符を基準として満貫未満の場合1翻増加に相当する。ちなみにこの牌姿は役がないため、ロンでは立直をかけているか偶発役でしか和了れない。

(例)(ツモ30符、ロン40符)

↓二索を暗槓

   (ツモ40符、ロン50符)

門前状態からの中張牌の暗槓の場合は、ロンの場合の門前加符によるツモとロンの符の差はあるが、槓の前と比べて符が1ランク上昇することが多い。

(例)   (ツモ・ロン共に30符)

↓發を暗槓

      (ツモ・ロン共に60符)

副露状態からのヤオ九牌の暗槓だが、やはり30符が60符になり、満貫未満の場合1翻増加に相当する打点上昇となる。副露状態の場合、ツモ符は2符であるため、ツモ・ロン共に同じ符になることが多い(ツモ符の有無によって符ハネするかどうかが変わるケースもある)。

(例)   

↓三筒を暗槓

      

(例)   

↓東を加槓

     

(この牌姿では、東が役牌でなければ偶発役でしか和了れない)

(例)      

↓八萬を加槓

           

(例)   

↓中を大明槓

      

(例)   

↓五筒を大明槓

      

以上5ケース、いずれもツモロン共に30符が40符になる例である。中張牌の明槓はそれだけでは8符しかないため、符跳ねするには他に追加符が4符必要である。

戦術上、槓全般に言えることとしては、次のような点が挙げられる。

  • 一般的に槓をすべき局面としては、自身が和了できる可能性が高い局面で槓をするのが良いとされる。なぜなら、符やドラのような槓によるメリットは和了ってこそ意味があるからである。副露状態での大明槓や加槓は聴牌してから、暗槓は聴牌または一向聴が目安とされている。例えば既に他家に立直者がいて、なおかつ自身が和了できそうにない場合などは、自身が槓してもその立直者の利益の方が大きいため、槓すべきではないとされる。またトップで逃げ切りを狙う時にも他家の手を高くするリスクがあるため槓すべきではないとされる。このほか槓によって他家に与える情報など、細かい状況によって槓すべきかどうかが変わってくることが考えられる。
  • メリットにもデメリットにもなりうる槓全般の特徴としては、良くも悪くも「場が荒れる」という点が挙げられる。特に槓の中で最も得点的なメリットの少ない中張牌の大明槓は奇襲効果が非常に高い。

  1. ^ これがマナー違反とされるのは、4牌を明示しないことによってイカサマをすることが可能なためである。例えば押川雲太朗の漫画『根こそぎフランケン』には、窮地に陥った登場人物が暗槓の偽装によって辛くも難を乗り切るシーンがある(第2巻/東京カジノ編Vol.5/p24-p29/ISBN 4812451515)。暗槓の4枚をすべて明示させることで、この種の不正行為は未然に防止することができる。


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