惑星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/23 09:42 UTC 版)
惑星の形成
惑星がどのように形成されたか。このテーマについての研究が惑星形成論である。1990年代まで、知りえた惑星系のモデルは太陽系だけであったが、21世紀には多くの系外惑星が発見されるようになり、主に2つのシナリオが提案された。1つは原始惑星系円盤の中で塵やガスが徐々に集まるものであり、形成に長大な時間がかかる。2つ目は円盤の中で重力不安定状態が生じ、巨大ガス惑星が急速に成長するもので、この不安定を起こす要因が何かなど議論の余地がある。多くの支持を集める理論は前者であり、以下ではこれを解説する[1]。
原始惑星系円盤と原始惑星の形成
超新星爆発で多くの元素が散らばった星間ガスが再び集まって恒星が形成される際、星団を作る程には濃くないと、恒星の周囲には余った物質が円盤状に集まって原始惑星系円盤を形成する例が発見されている。円盤の成分はほとんどが水素やヘリウムのガスだが、塵も含まれている[1]。
円盤の中で塵は重力のバランスから速く周回し、ガスに邪魔されて乱され衝突を繰り返しながら減速し、恒星の方へ螺旋状に落ち込みながら衝突を繰り返す。そして段々と大きくなり大きさ数km単位の微惑星を経て、原始惑星へと成長する。この原始惑星の大きさはそれぞれの軌道上に集まった材料の量で決まり、これは軌道距離に依存する。原始惑星の質量は、恒星から1天文単位あたりでは地球質量の1/10程度、5天文単位あたりでは地球の4倍程度になる[1]。
雪境界線と巨大ガス惑星
恒星が形成されて活動が始まると、惑星系円盤の雪境界線部分のガスが薄くなる現象が起こる。雪境界線とは氷など低沸点の揮発性物質が昇華する温度になる領域で、太陽系では2-4天文単位あたりが相当する。この境界では揮発性物質が昇華と凝固双方の相転移を繰り返し、この現象が作用して周囲にあるガスの動きを不安定にさせ、結果的に領域からはじき飛ばしてしまう。すると希薄になったガスは速度を高め、ここに落ち込んできた原始惑星が加速され、領域の外側に留めるようになる。これらはやがて集積し、大きな天体を形成するようになる[1]。
雪境界線が集めた物質が木星になったと考えられるが、このような巨大ガス惑星は惑星系円盤に必ず生じるとは限らない。木星は塵が集まった天体がさらにガスを集積して形成されたと考えられるが、それにはガスがエネルギーを失って圧力が低い「冷えた」状態でなければ安定しない。あまりに時間がかかり過ぎると、ガスが冷える前に恒星の活動や核になるべき岩石系天体の影響で失われてしまい、結果として巨大ガス惑星は形成されないことになる。この、ガスのエネルギーが奪われる「熱移送」がどのように起こったかについては、明らかにされていない部分が多い[1]。
形作られる惑星
太陽系の場合、原始惑星や最初の巨大ガス惑星形成は、恒星の核融合開始から200万年後には行われたと考えられる[1]。雪境界線内側では、多数生じた原始惑星がお互いの軌道を交差させながらぶれが生じ、やがて衝突を繰り返し岩石惑星(地球型惑星)へ集約したと考えられる。この衝突合体には、外側に生じた巨大ガス惑星が影響したという考えもあるが、あまり賛同を得られていない[1]。地球型惑星は惑星系円盤のガスを集積したとは思われず、衝突や火山活動で内部から噴出させた物質から形成されたと考えられている[1]。
雪境界線外側では、最初の巨大ガス惑星が及ぼす重力によって、次の惑星が形成される。惑星の強大な重力は周囲にある物質の軌道を乱し、弾き出す。そうして軌道の外側に、物質が溜まるようになり、同じプロセスで次の天体を作り出す。これが連鎖し次々と惑星が形成されるが、それぞれの際にどれだけ物質が残されているかによって様相が変わる。太陽系では天王星や海王星が集積した時には惑星系円盤内のガスが乏しくなってしまい、巨大氷惑星として纏まらざるを得なかった[1]。
巨大ガス惑星の数と軌道変化
太陽系惑星を元に考えられた惑星形成モデルは、宇宙において普遍的なものと思われていた。しかし、初期に発見された太陽系外惑星は、水星よりも近い軌道を周回したり極端な楕円軌道を持つ巨大ガス惑星などだった[8]。これは天文学者らを当惑させ、惑星形成モデルに対する疑いも頭をもたげた[9]。
しかし、惑星の軌道は誕生後に変化する可能性が指摘された[10]。これを検証したコンピュータシミュレーションの結果から、太陽系の惑星配置では長期間安定するが、質量の大きさと比べ距離が近い巨大ガス惑星が3つ以上あるとそれぞれ惑星軌道は突然不安定になり、互いを反発し飛び散らせることが分かった[11]。また、巨大ガス惑星が形成されてからも惑星系円盤に以前ガスが多く残っている状態では、惑星が中心方向に移動するメカニズムも考えられた[10]。
このような過程を経て、特異な太陽系外惑星は形成段階の惑星系円盤に太陽系よりも多くのガス成分があった可能性が指摘されており、太陽系形成が特殊という考えは見直された[12]。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j 別冊日経サイエンス167、p.106-117、系外惑星が語る惑星系の起源、Douglas N. C.Lin
- ^ a b c d e f g h i 別冊日経サイエンス167、p.118-125、惑星って何だ?冥王星騒動の顛末、Steven Soter
- ^ a b c d e 井田・小久保(1999)、p.10-13、1.太陽系の姿、太陽系の特徴
- ^ Emily Calandrelli (2016年1月21日). “Astronomers Find Evidence Of A Ninth Planet”. Tech Crunch. 2016年1月22日閲覧。
- ^ [平成19年6月21日 第39回幹事会]
- ^ IAU系外惑星ワーキンググループによる惑星(の上限)の定義 Archived 2012年7月4日, at WebCite
- ^ Christoph Mordasini, Yann Alibert, Willy Benz, Dominique Naef (2007). "Giant Planet Formation by Core Accretion". arXiv:0710.5667 [astro-ph]。
- ^ 井田・小久保(1999)、p.51-54、4.系外惑星、異形の惑星現れる
- ^ 井田・小久保(1999)、p.59-61、5..惑星系形成論、セントラル・ドグマの崩壊?
- ^ a b 井田・小久保(1999)、p.61-62、5.惑星系形成論、動く巨大惑星
- ^ 井田・小久保(1999)、p.62-65、5.惑星系形成論、飛び散る惑星系
- ^ 井田・小久保(1999)、p.65-70、5.惑星系形成論、「汎」惑星形成論へ向けて
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