庄内方言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 06:42 UTC 版)
鶴岡市を中心とした商圏である鶴岡田川で話される南部方言と、酒田市を中心とした商圏である酒田遊佐(旧酒田飽海地区)で話される北部方言との間に違いが見られる。
庄内方言には京言葉の流入と見られる語彙(例:ボンボ「赤ん坊」、…サゲ「…から」)があることや、方言以外にも京文化の影響が見られることから、庄内人の間では北前船によってもたらされた上方方言の直接的影響が大きいと信じられている。いっぽう、研究の進展により、参勤交代による江戸方言と近代以降の山形県内陸方言の流入の影響の方が大きいとの見方もある[1]。ただし、周圏分布から外れるような前述の類の語彙の存在が、他の北前船の寄港地と同様に実際に見られるのも事実である[2]。
音韻構造
母音
- 直音はイ、エァ [ɛ]~[æ](融合母音)、ア、オ、ウの5種があり、拗音イェ、ヤ、ヨがある。また、合拗音ウォがある。
- 中央語のエに対応するのはイェである。例:イェリ「襟」、イェギ「駅」
- アイ、アエ、オイは体系的に融合母音エァとなる。例:ゼァンゴ「在郷」;メァンダリ「前掛け」(古語「前垂り」より);シレァ「白い」
- 音韻論的にオ、イェとそれぞれ区別されるウォがある。ただし字音語「火事」「外国」などのカ・ガ行合拗音はカジ、ガイゴグのようにカ行に合一している。例:アウォ「青」
- ユがなく、ある時代にヨに合一するという推移があったと推定される。ヌもしばしばノに合一する。例:タヨハン・タヨサマ「太夫様」、ヨギ「雪」、カヨ「粥」;インノ「犬」、ノガル「ぬかるむ」
- また、文節末の高舌母音がやや低下するという現象が見られる。これは秋田方言にも見られ、丁寧さを表す文法的現象ではないかという説がある[3]。例:ナシエ(茄子、梨)、ナシコア(茄子子)
- サ・タ行ではウ段がはなはだしく前寄りとなり、「ズーズー」ではなく「ジージー」と特徴付けられる[4]ような音声となっている。
- イとエの混同が見られる。例:ネンジ(人参)
子音
※ア列で代表
- 鼻音マ、ナ
- 流音ラ
- 摩擦音ハ、サ
- 破裂音・破擦音パ、バ、ンバ;タ、ダ、ンダ、ザ、ンザ;カ、ガ;カ゜
- 有声阻害音は文節中の母音間で入渡り鼻音(前鼻音)を伴う。特別な音韻過程が関わる場合を除き、非継続性無声阻害音は母音間で有声化する。
- ヒ、キの子音はそれぞれ [Φç],[kç]であり、軽い摩擦音が聞かれる。
- リは摩擦が強く発音されることがあり、次の例はこれによるキとの混同と考えられる。例:コノビールダバ リーノゲッダオノノー(このビールったら気(炭酸)が抜けてるものねー)
- 有声破裂音が期待される位置で、ンの後で無声化するものがある。例:カンツカ(鰍)、ハンツケ(つまはじき)
- アクセント:アクセントが実現される音節が他より高いピッチ(例ではacute accentで示す)で発音される。例: te:(手), te:sá(手に), te:dogó(手を);tago(蛸), tagósa(蛸に), tagódogo(蛸を)
- シラビーム方言に属し、音韻論的に有意義な単位としてのモーラは認められない。このため、撥音、促音という特殊拍にあたるものは音節末鼻音、二重子音になる。モーラ方言の話者には極めて短く聞こえるか、聞き落とされるようである。
統語構造
- 主格:ガ、-Ø
- 対格:ドゴ、バ、-Ø
- 与格:サ、-Ø
- 属格:ノ、-Ø
- 位格:デ
- 使役文
- 雨どご降らしぇる(<雨が降る)
- 受動文
- せっかぐ生がた実ー、鳥がら/さ食いる(<鳥が実どご食)
- 目的節
- たばご買い(酒田)/買いさ(鶴岡)行ぐ
固有名詞の分類
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