国勢調査 (日本) 調査の意義・Q&A

国勢調査 (日本)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/10 20:45 UTC 版)

調査の意義・Q&A

本調査の意義に関する主な質問と質問は以下のとおりである。

(国勢調査に関する各種の疑問に対する総務省統計局の回答については、平成22年国勢調査に関するQ&Aを参照)

  • 住民基本台帳で人口を把握しているのだからその値を使えばいいのではないか
→これは明確な誤解であり、住民票を移さない人口の多さと統計結果でその地域の施策が変わることを全く理解していない[2]。さらに住民基本台帳で得られるのは男女別等基本的な属性および家族構成のみで、就業状況等の詳細な属性が把握できない。さらに就学単身赴任入院などによる期間が限定的な人口移動は住民票の転入転出届を出さずに行われることが多く住民票からは把握できない。実際、大学の多い大都市地域では、住民基本台帳に基づく若年人口が、国勢調査に基づく若年人口を大幅に下回っており、大学生の中には、住居移動をしても住民票の変更手続きをしないまま、大学に通っている者が多いという事情を伺わせる。この様に、住民基本台帳に基づく統計では利用面で限界があることから、日本では定期的に国勢調査を行い、正確な実態を把握することとされている。例えば市内に大学が数多くある東京・八王子市だけでも2015年の国勢調査で判明した市内の人口は57万8000人で、住民票に基づいた人口56万3000人より、1万5000人多い結果となっていた。佐藤正広東京外国語大学大学院教授は、「住民票は移していないものの、ゴミも出すし、上下水道も使う。さまざまな社会的なインフラに負荷がかかるため、行政としては、そこまで計算に入れて中長期的な計画を立てなければならない。このほか、コンビニの出店計画などにも影響が出るだろう」と指摘している[2]
  • 何のために調査を行うのかそもそも知られていない。
→国勢調査で提出された人口は人口分析だけではなく、法定人口として地域行政の規模(議員定数の決定、市や指定都市などの設定要件、地方交付税交付金の配分、都市計画の策定、過疎地域の要件、衆議院議員選挙区の画定)を決定したり社会福祉・まちづくり・経済政策・災害対策など、行政上、欠かせない役割を担っている。また、国勢調査の結果から、日本の将来人口推計や地域ごとの人口や雇用の実態などが明らかにされ、それを通じて国民が国や地域の実態や将来像を正しく理解するために広く活用されている。このように国勢調査は、その結果が様々な政策に用いられるほか、国民が国や地域の実情を知ることを通じて、国民生活に役立っている。
  • 調査員が訪問する時間帯は多くの会社等の勤務時間と同じ昼間であり、共働き等で昼間家にいない場合、調査員と調査対象者が会うことが難しい。
→2010年以降の国勢調査では、提出をより容易にするために、世帯が希望すれば調査票を郵送により提出できることとしており、そのために全世帯に郵送提出用封筒(郵送料は国が負担)を配布することとされている。2015年には回答者の36.9%はインターネットで回答している。2020年には総務省はコロナ感染予防のため、対面式の方の調査を説明などをインターフォン越しに行ったうえで、書類は郵便受けに入れるなどとした方針に変えた[2]
  • 調査票の回収方法に関して、2005年調査においては、調査員を装った者が調査票を回収する事件が発生したり、また調査票を調査員に渡すことに抵抗を感じる世帯も多くなっている。
→2010年国勢調査では、調査員をより正確に識別できるよう、調査員が、写真入りの身分証明書、腕章、国勢調査のネーム入りの手提げ袋を携行することとしており、これによって従来よりも識別性が高まるとされている。また、調査票を調査員に提出する場合には、すべての世帯で、予め配布された封筒に調査票を封入して提出することとされている。また、希望する世帯は郵送によって調査票を提出することも可能とされている。
  • 過去の国勢調査結果を参照する場合、従前、統計局のウェブサイトでは、1980年以降の国勢調査結果を公開していたが、それより前のものは載せていなかった。民間のサイトでも同様であり、そのため、戦後高度経済成長期の日本の実態を調べるには、わざわざ図書館などで国勢調査報告書を閲覧しなければならなかった。
→2008年からは政府統計共同利用サイトの開設などを通じて、インターネットによる統計提供の拡充・改善が進められている。国勢調査の結果を始めとする各種統計が、より長期間の系列インターネットで従来よりも使いやすい形で提供されるようになっている。

なお、国勢調査の過去のデータを利用する場合には、総務省統計局の次のサイトの情報が便利である。


注釈

  1. ^ 3ヶ月以上滞在予定がある、または永住権がある外国籍
  2. ^ 国勢調査令(昭和55年政令第98号)第4条第1項第1号の規定により、調査対象から、総務省令で定める島を除くとされており、国勢調査施行規則(昭和55年総理府令第21号)第1条の規定によりこれらの除外が規定されている。
  3. ^ また、調査録には、「調査員は国の名誉職である」といったくだりもある。

出典

  1. ^ 総務省統計局. “統計用語辞典 か行|なるほど統計学園”. 2020年9月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e 国勢調査が「存亡の危機」に!?”. NHK NEWS WEB. 2020年10月6日閲覧。
  3. ^ 「国勢調査、無視しよう」はダメ。避難者の数を予測しづらくなったり、企業があなたの街に出店をやめるかも? | ハフポスト”. www.huffingtonpost.jp. 2020年10月6日閲覧。
  4. ^ 平成27年国勢調査の調査項目について(調査項目の意味、記入方法) 総務省
  5. ^ 統計法(平成十九年法律第五十三号)
  6. ^ a b c d e f g 『近代統計制度の国際比較』安本稔編集 2007年12月 日本経済評論社 ISBN 9784818819665
  7. ^ 樋畑雪湖『日本郵便切手史論』、2020年1月31日閲覧。
  8. ^ 統計図書館ミニトピックスNo. 22 第1回国勢調査の記念切手をデザインしたのは? - 国勢調査に係る統計史料を訪ねて【その7】 (PDF) - 統計局、2020年1月31日閲覧。
  9. ^ #横山雅男、p.p.20「内国統計史」
  10. ^ 平成22年国勢調査の実施に向けて(検討状況報告) 』 総務省統計局 2009年4月
  11. ^ a b 統計法を参照。
  12. ^ a b c d 国勢調査、勤務先やマンション階数、なぜ言わないといけないの? 総務省に聞いてみた - 毎日新聞
  13. ^ 令和2年国勢調査の概要”. 総務省. 2020年10月1日閲覧。
  14. ^ [1]
  15. ^ [2]
  16. ^ 平成27年国勢調査(簡易調査)で追加・廃止を検討する調査事項(案)”. 総務省. 2015年10月1日閲覧。
  17. ^ [3]
  18. ^ [4]
  19. ^ 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた令和2年国勢調査の実施について - 統計局
  20. ^ 国勢調査の回答率 4割に届かず 武田総務相が協力呼びかけ - NHK
  21. ^ 国勢調査のネット回答、20日まで延長 - 共同通信
  22. ^ 国勢調査回答率80.9% ネットと郵送、19日時点 総務省(時事通信)”. Yahoo!ニュース. 2020年10月20日閲覧。
  23. ^ a b c d 国勢調査が「存亡の危機」に!? - NHK
  24. ^ 国勢調査のイメージキャラクター紹介
  25. ^ 第一回国勢調査記念品(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
  26. ^ 第一回国勢調査記念章(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
  27. ^ 「国勢第一回の任命書」『中国新聞』2020年(令和2年)10月6日備後版22面
  28. ^ 国勢調査、「手間省ける」と自治会の集会で回収 読売新聞 2010年10月6日
  29. ^ 国勢調査:管理人が勝手に記入…マンション50世帯分 毎日新聞 2015年10月10日
  30. ^ 背伸びやめ 胸を張る 読売新聞 2007年9月1日
  31. ^ 羽幌町人口水増し事件
  32. ^ 市制施行の見送りについて(PDF)
  33. ^ 人口水増しで前副町長逮捕 市政移行目指した愛知・東浦町”. msn産経ニュース (2013年2月22日). 2013年2月22日閲覧。
  34. ^ 市昇格を狙い人口を水増しか 愛知・東浦町、国勢調査で - asahi.com,2012年2月26日
  35. ^ 愛知・東浦町長、意図的な人口水増しを否定 - 日テレnews,2012年3月2日
  36. ^ 平成22年国勢調査にかかる不適切な事務処理について - 東浦町サイト,2012年3月2日
  37. ^ 人口水増し疑い、前副町長を逮捕 愛知・東浦町 - 日本経済新聞,2013年2月22日
  38. ^ 東浦町前副町長を逮捕へ=人口水増しの疑い-愛知県警 - 時事ドットコム,2013年2月22日
  39. ^ マンション管理者のみなさまへ - 国勢調査2020総合サイト
  40. ^ 【独自】国勢調査で住基情報転用…15年 8市区集計ルール違反 読売新聞 2020年8月12日
  41. ^ 毎日新聞の読者投稿欄『みんなの広場』2010年10月9日版に、居留守を使われた調査員の嘆きが記載されている。
  42. ^ 国勢調査100年”. 日本郵便. 2020年9月28日閲覧。





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