古フランク語 フランス語などへの影響

古フランク語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/14 07:55 UTC 版)

フランス語などへの影響

フランス語にあるゲルマン語起源の単語のほとんど(英語からの借用語を除く)は古フランク語に由来し、かつて使われていたであろうラテン語俗ラテン語)の単語に取って代わったものも多い。例を下の表に示す。

古フランク語 古フランス語 現代フランス語 ラテン語 現代オランダ語 意味[英語]
*warding guardenc gardien (custōs) verweerder 保護・管理者[warden/guardian]
*skirmjan
(動詞)
escarmouche
(名詞)
escarmouche
(名詞)
(leve proelium)
(名詞)
schermutseling
(名詞)
小競り合い[skirmish]
*bera biere bière (cervīsia) bier ビール[beer]
*scoc
(名詞)
choc (名詞)
choquer (動詞)
choquer
(動詞)
(perculsus)
(名詞)
schok
(名詞)
ショック[to shock / shock]
*grappon
(動詞)
graper
(動詞)
graper
(動詞)
(comprehendo)
(動詞)
(be)grijpen
(動詞)
つかむ[to grasp <OFrk.]
理解する[to comprehend <Lat.]

英語にも(たいてい古フランス語を通じて)多くの古フランク語起源の単語がある:"random"、"standard"、"grape"、"stale" など。warden/guardianなどは同語源の単語が共存する「二重語」(古英語/古フランク語起源)の例である。

現代フランス語の有音のh(h aspiré)はフランク語起源であり、初期には発音されていた。

古フランク語はフランス語のみならずラテン語自体にも影響を与えた。フランク王国はイタリアをも支配下に置き、この時期に影響したものであろう。フランク起源のラテン語あるいはロマンス語の単語には次のようなものがある。

  • 古フランク語*sekjan > ラテン語sacire(見つめる、英語: "seek"と同語源)
  • 古フランク語*blanch > フランス語 blanc(女: blanche)、ティグリニャ語: biancoスペイン語: blancoポルトガル語: branco(白い、英語: "blank"と同語源)

ゲルマン語(特に古フランク語)起源でwを含む単語のほとんどは、ロマンス語ではguに変化している。例えば古フランク語werra(撃退する;英語"war"と同語源)は現代フランス語でguerre、イタリア語、スペイン語やポルトガル語ではguerra(戦い;ゲリラの語源)になっている。上に示したフランス語のgardienや、人名Guillaumeもその例("英語: William"も)。


注釈

  1. ^ 北部の古フランク語は古低フランク語からさらに現代オランダ語などの低地フランク語になる。
  2. ^ ロマンス語諸語のうち、フランスとスペインに古フランク語がある[2]。現代語フランス語のespion西: espíaespia: spiaと同根語で、語根spehōną から古フランク語spehōn とゴート語spaiha/spaihōn に分かれたと考えられる[3]ヴァルトブルク(英語)による異説(1944年)では、現代フランス語espion の起源は古フランク語から古フランス語espie を介したとする[3]

出典

  1. ^ 上野 2016, p. 20, 「3.ゲルマン語起源」.
  2. ^ a b 上野 2016, p. 19, 「2.ロマンス語における他国語」.
  3. ^ a b 上野 2016, p. 20, 「3.1.1 東西ゴート語から(3)」.


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