単位の換算 単位換算の必要性

単位の換算

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 23:30 UTC 版)

単位換算の必要性

同じ物理量であったとしても、その値の大きさを定量的に示すために使われている単位が異なる場合がある。例えば長さを表現する単位としては、m のほかに、km 、光年、Å などの様々な単位がある。通常は、「太陽と地球の距離」と「Siの共有結合半径」を比較することよりも、「太陽と地球の距離」と「太陽と木星の距離」を比較することが多いことから、同一スケールの現象の比較に便利なように、同一スケールの現象を有効数字2桁程度で比較ができるような単位が用いられている。従って、「太陽と地球の距離」と「Siの共有結合半径」のように異なるスケールの現象を物理量の値に基づいて比較せねばならない場合には、通常は単位の換算が必要である。

物理学をはじめとした定量科学では、物理量の値同士の関係を数式で表すことが多い。物理量の値を表す数値同士の関係を表した等式を数値方程式[1][2]という。しかし、ある単位で表された数値方程式に、異なる単位で表された数値を代入せねばならない場合がある。例えば、「m と kg と s を用いて表された公式」に、「mm と g と min で表された数値」を代入せねばならない場合がある。このような場合にも、単位の換算を行う必要がある。

関連用語の定義

「物理量」に関する用語の定義は意外にも曖昧で、いくつかの異なる意味で使われているため、混乱をさけるため以下の用語を定義する。

物理量
「kg原器の重さ」、「光が1秒間にすすむ距離」、「Si原子の共有結合半径」、「地球の公転周期」、「光速」、「A氏の体重」などのように客観的に測定でき、定量的な議論が可能な量であり、かつ物理、化学等の自然科学や工学における議論の対象になるもの。あるいはそれの実数倍。物理量のことを「物理量の値」ともいう。
物理量の種類
具体的な物理量それぞれを、「相互に比較できるか否か」に基づきグループ分けしたときのグループの名前。「長さ」、「時間」など。
単位
「kg原器の重さ」、「光が1秒間にすすむ距離」のように具体的な物理量そのもの、あるいはそれの実数倍として定められる物理量で、特に再現性よく、誤差が少なく測定できるものであり、これと同一の種類の物理量に属する物理量を測定する際の基準となるもの。
物理量の数値
「私の体重」のような具体的な物理量を、それと比較可能な単位と比較したときに、その単位の何倍であるかを示した数。私の体重が53 kgであるときには、53という(単位の付かない)実数が、物理量の数値である。

教科書によっては、本記事でいうところの「物理量の種類」や、「単位」のことを「物理量」としている場合、あるいは、どれを指しているかあいまいな場合もある。また、「物理量の値」という 用語は、物理量と同義でつかわれる場合が多いが、実は「物理量の数値」と同義で用いられることもある。

換算係数と換算表

同じ次元の物理量の2つの単位を u1 と u2 とすれば、どちらも定められた一定の大きさなので、両者の比 k は定数である。この比は単位の換算係数と呼ばれ、様々な単位間の換算係数を表にした換算表が知られている。ウィキペディアの単位の換算一覧には多くの物理量の換算表が記載されており、主な物理量の換算表は理科年表にも記載されている。また多くの物理学や化学の教科書には、主な物理量の換算表が付表として記載してあることが多い。また『単位の辞典』丸善[3]にはメートル法以外の多くの単位についての換算表も記載されている。


注釈

  1. ^ ここで km/h⋅s(キロメートル毎時毎秒)は、物理学の教科書ではあまりみかけないかもしれないが、現実の測定データとしてはよくありえる。例えば自動車、エレベータ等の速度の生データは km/h であり、数十秒程度のスケールで所定速度に達するので、これらの、起動加速度の生データとしては直感的に相応しいであろう。そのため採用した。

出典

  1. ^ a b c d JIS Z 8202-0:2000[1]
  2. ^ a b 日本規格協会 編『標準化 社内標準化に必要な基本的JIS (JISハンドブック)』1992年4月20日。ISBN 4-542-12667-6  「JIS Z8202(量及び単位-第0部) 参考1 2.2 量と方程式」
  3. ^ 二村隆夫『丸善 単位の辞典』丸善、2002年3月。ISBN 4-621-04989-5 
  4. ^ a b c d e f 国際単位系 第8版 日本語訳 (PDF) 』「5. 単位の記号と名称の表記法,及び量の値の表現方法」
  5. ^ a b c d e 中川邦明「初等中等教育における量と単位について (PDF)常葉学園大学研究紀要 第22号,85頁(2002年1月)
  6. ^ ISO 31-0:1992
  7. ^ 単位:単位は文化” (PDF). 近畿大学工学部・物理Basic. 2011年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年1月14日閲覧。
  8. ^ Eiji Shikoh, et.al; Phys. Rev. Lett. 110, 127201 (2013) [2] (この論文それ自身の紹介記事[3]
  9. ^ 国際単位系 第8版 日本語訳 (PDF) 』「4. SI に属さない単位」
  10. ^ a b Jearl Walker"HALLIDAT/RESNICK Foundamentals of Physics 8th.ed"John Willy
  11. ^ a b c Wendy Stahler 著、山下 恵美子 訳『ゲーム開発のための 数学・物理学入門』Softbank Criative、2005年5月11日。ISBN 4797329076 ISBN 978-4797329070、第7章 単位の変換
  12. ^ クリフォード・スワルツ(著)、 園田 英徳(訳) 「物理がわかる実例計算101選 (ブルーバックス) 」講談社 (2013/3/20)
  13. ^ Frank H. Stephenson (著) "Calculations for Molecular Biology and Biotechnology, Second Edition: A Guide to Mathematics in the Laboratory" Academic Press; 2版 (2010/7/12) ISBN 978-0123756909
  14. ^ Paul C. Yates (著), 林 茂雄 (翻訳), 馬場 凉 (翻訳) "化学計算のための数学入門 " 東京化学同人 (2007/10) ISBN 978-4807906659
  15. ^ Michael Harris (著), Jacquelyn Taylor (著), Gordon Taylor (著), 長谷川 政美 (翻訳) "生命科学・医科学のための数学と統計 (Catch Up) " 東京化学同人 (2008/10) ISBN 978-4807906895
  16. ^ 日本機械工学会 編『単位・物理定数・数学 (機械工学便覧 基礎編 a9)』丸善、2005年。 
  17. ^ 次元と次元解析 近畿大学工学部・物理Basic
  18. ^ オンライン数学塾[4][5][6]
  19. ^ 東電謝罪、2号機の異常データは単位換算ミス”. YOMIURI ONLINE (2011年3月17日). 2013年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月19日閲覧。
  20. ^ 澤野雅樹 (2011年4月23日). “思考のメルトダウンを回避するために: 単位換算について(2)”. 2012年12月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月12日閲覧。
  21. ^ http://redirevaw.blog77.fc2.com/blog-entry-428.html





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