共犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/19 03:54 UTC 版)
共犯の分類
共犯は必要的共犯と任意的共犯に分かれる。 後者には共同正犯、教唆犯、幇助犯の3つが属する(これらを総称して広義の共犯といい、特に教唆犯と幇助犯の2つのみを指して狭義の共犯という)。
必要的共犯
必要的共犯とは、構成要件上初めから複数の行為者を予定して定められている犯罪をいう。内乱罪、騒乱罪などの多衆犯と、重婚罪、賄賂罪などの対向犯がある。
対向犯の成立には相手方の存在を必要とするが、相手方処罰規定を欠く場合もある(旧刑法(明治13年太政官布告第36号)には贈賄罪の規定は存在しなかった)。
- 重婚罪:配偶者のある者(b:刑法第184条前段で処罰)とその相手方(b:刑法第184条後段で処罰)
- 賄賂罪:賄賂を受ける公務員(b:刑法第197条前段で処罰)と賄賂を供与する者(b:刑法第198条で処罰)
- わいせつ物頒布罪:わいせつな文章・図画を頒布等する者(b:刑法第175条前段)と頒布を受ける者(不可罰)
任意的共犯
任意的共犯とは、条文上単独の行為者を想定して定められている犯罪を、2人以上の行為者によって実行する場合をいう。これは広義の共犯ともいわれる。 例えば殺人罪や窃盗罪は行為者が単独でも実行できるが、こうした犯罪を複数で実行することが任意的共犯である。
任意的共犯には共同正犯、教唆犯、幇助犯の3種がある。
- 共同正犯
- 複数の者が共同して犯罪を実行した場合、共犯者の全員が正犯として、別の共犯者の行為やその結果についても責任を負う(一部実行全部責任)こととなる。詳しくは共同正犯の項目を参照。
- 教唆犯
- 人をそそのかして「犯罪」を実行させた者をいい、正犯と同じ刑が科される(b:刑法第61条1項)。この教唆犯を教唆した場合を間接教唆と呼び、第61条2項により処罰される。さらにこの間接教唆者に教唆する場合を再間接教唆と呼び、これ以降の間接教唆を連鎖教唆と呼ぶ。連鎖教唆については刑法61条1項のような規定がないことからこれを処罰しうるか争いがあるが、判例は処罰を肯定する。
- 幇助犯
- 「正犯」を幇助した者をいう。幇助とは、正犯でない者が正犯の実行を容易にすることをいい、犯罪に使うもの(凶器など)を用意するといった物理的方法はもちろんのこと、正犯者を勇気づけるといった精神的方法でも幇助にあたるとされる。詳しくは幇助の項目を参照。
正犯と共犯
刑法各則の定める構成要件を自ら単独で実現する場合を単独正犯という。
正犯と共犯の区別が問題となるのは間接正犯の場合である。これに関してそもそも正犯と共犯がいかなる関係に立つかが問題となり、かつては、共犯を処罰縮小事由とする拡張的正犯概念と共犯を処罰拡張事由とする限縮的正犯概念の対立があったが、現在では後者が通説である。限縮的正犯概念からは、正犯性を有する場合にのみ正犯になりえ、正犯にならない場合には(正犯性がなくても)共犯の成否が問題になるということになろう。もっとも、共犯の成立のためには正犯性を有しないことを要するとする見解もある。正犯性については正犯の項を参照。
正犯と共犯の区別という論点がある。ここでいう共犯は狭義の共犯である。以下のような対立がある。
- 主観説:正犯意思の有無による。
- 形式的客観説:実行行為の分担の有無による。かつての通説。
- 実質的客観説:構成要件実現への支配・寄与の程度ないし結果の帰属といった点により判断する。現在の多数説。
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