児童虐待
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 00:02 UTC 版)
各国の状況
機関での保護率 | 虐待の確認率 | ||
イングランド | 1.5% | カナダ | 2.2% |
カナダ | 2.2% | イスラエル | 1.8% |
オーストラリア | 3.3% | アメリカ合衆国 | 1.2% |
アメリカ合衆国 | 4.8% | オランダ | 0.4% |
イギリス | 0.2% |
2000年の被虐待児童数は、ドイツは31,000人、フランス18,000人である[95]。米国が突出している。
日本における虐待通告相談件数は拡大し続ける一方で、社会的養護の受け入れ可能数は、施設・里親合計しても5万床であるがゆえに、通告の90%以上の子どもは自宅に戻されるため、戻された子どもは不適切な養育環境の中で居続けるという懸念を表明する者もいる。また、通告相談件数も、OECDの子ども人口と保護児童数の比率(2007年)ではフランス・カナダ・デンマークでは人口の1%を、ドイツなどでも0.8%を保護する中で、日本の0.17%の低さを虐待が未だ顕在化していないとの意見もある[96][97]。
アメリカ合衆国
米国では1960年代から児童虐待が社会問題として意識されるようになった[98]。1970年代に入り連邦政府による取り組みが始まり、州レベルでも多角的で多様な対策が講じられている[98]。国家レベルで扱っている組織としては「National Alliance of Children's Trust Funds」および「Prevent Child Abuse America」が挙げられ、どちらも各州にメンバー(支部)がありそれらを束ねている。また、連邦政府のChildren's Bureau[99]がある。州レベルでは、各州政府の児童保護サービス(Child Protective Services, CPS)がある。
各州政府
米国では児童福祉についての一次的責任は各州が負っており、州ごとに法令や行政の取組みを行っている[98]。しかし、連邦政府からの助成を受ける要件を満たすよう連邦政府の方針に従った整備が行われており、施策の平準化・統一化や組織間の連携がなされている[98]。
なお、米国各地域のChild Advocacy Center(CAC)によって、児童虐待に関する調査が行われている。このChild Advocacy Centerというのは、最初はアラバマ州のハンツビルで地方検事のRobert Cramerによって構成されたチームで、児童虐待についての捜査を迅速かつ効率的に行い、最終的には子供のトラウマを減らしたりすることを目的としていた。
アメリカロスアンゼルス群では虐待対応組織はDCFS (Department of Children and Family Services)であり、全ての人に通報の義務があり、通報後に深刻度により2時間以内(通報を受けたら直行する)、3日以内、5日以内(シビアな事例ではないが、調査は必ず行う)に対応するレベル分けがされる。虐待者が援助プログラムに同意した場合には、カウンセリング等のかかわりが開始される。一方で虐待の事実はあるが、虐待者同意しない場合にはDCFSが親を説得する事実が必要であるため「戦略」と「ネゴシエーション(交渉)」を続けるものの、最悪の場合子どもが死んでしまっても、親が同意しなかったということになり、DCFSの責任は問われないこととなっている[100]。
連邦政府
連邦政府は1974年に保健福祉省に児童虐待及び放置全国センター(National Center on Child Abuse and Neglec、NCCAN)を設置するとともに「児童虐待の防止及び対処措置法」を制定した[98]。
米国政府は、児童虐待を防止するためにいろいろな施策を行っている[101]。
- 看護師による家庭訪問‥‥妊娠中と生後2年間は、看護師が定期的に子どもを訪問する
- 親教室‥‥育児の仕方、利用できる制度・組織について説明する
- 子どもへの安全教育‥‥良いタッチと悪いタッチの区別を子どもに教える
- 育児のサポートグループ
- 養子制度
- 緊急時のホットライン、Crisis Nurseries 緊急収容施設
また間接的な施策として、
統計
2010年の保健福祉省による報告(NIS-4)では、身体的虐待・性的虐待は6割以上の減少傾向にあるとしている[104]。ただし、精神的ネグレクトは1割程度の増加傾向にある[104]。
なお、米国では、有形力の行使による児童懲戒が認められており、「虐待」とはみなされていない。ある調査によれば、大人の82%は、「子どもの頃に、親にスパンクされたことがある」と答えている。また、多くの人は「親によるたいていの体罰は、虐待ではない」と答えている[105]。日本のある育児雑誌が読者アンケートを行ったところ、回答した親の62%は「子どものおしりをたたくことがある」と答え、55%は「子どもの頭をたたくことがある」と答え[106]、「子どもをたたかない主義」と答えたのは12.2%であった[107]。
ミネソタ大学の「早期教育と発達のためのセンター」は、罰の使用について、「教育的な雰囲気の中で、良い行いに対するポジティブな賞賛やご褒美などと共に、軽い罰を例外的に使用するのであれば、罰の使用は容認できる」としている[108]。
米国の裁判所や 児童保護サービス(Child Protective Services)は、親の処遇を決める際に、次の諸点を考慮している[109]。
- 子どものケガの重さ
- 子どもの年齢と発達の度合い
- 体罰の方法
- 体罰の頻度
- 体罰が子どもの精神や発達に与えた影響
- 体罰の動機(目的)
米国児童保護サービス(CPS)は、2013年には約67.9万人の児童が虐待の被害者となったとしている[110]。
児童の年齢 | 不適切行為 | 虐待 | ネグレクト |
---|---|---|---|
0- 2歳 | 33.4 | 27.3 | 6.1 |
3- 5歳 | 34.9 | 26.8 | 9.9 |
6- 8歳 | 42.4 | 33.1 | 13.1 |
9-11歳 | 38.3 | 30.4 | 10.9 |
12-14歳 | 37.6 | 28.6 | 12.6 |
15-17歳 | 29.0 | 21.6 | 10.9 |
重症度 | 白人 | 黒人 | ヒスパニック・ラテン系 |
---|---|---|---|
深刻 | 4.6 | 8.8 | 5.2 |
中程度 | 7.2 | 13.7 | 8.1 |
強く疑われる | 0.7 | 1.5 | 0.8 |
計 | 12.6 | 24.0 | 14.2 |
フィンランド
フィンランド国立健康福祉研究所は、児童虐待を予防するために、育児の重荷を分かち合うことを勧めている[113]。
- 母親は、小さい子どもを虐待することがある
- 母親が支援なく放置されると、子どもを虐待することがある
- 母親は、育児のストレスや重荷を分かち合う人を必要としている
- 人間の子どもは、非常に多くの世話を必要としている
- 人間の子どもは、自立するまでに長い時間がかかる
- 一人で育児が出来るという人はいない
- 親の利益と子の利益は完全には一致しない
- 複数の大人が育児に関わると、子どもの発達は促進される
オーストリア
オーストラリアでも(一財)自治体国際化協会シドニー事務所によると、家族法に親子断絶防止のため条項が2006年明記され「親の権利」が強化されたが、面会中に児童が親に殺害されるなどの事件を受けて、2011年にさらなる法改正が行われ「フレンドリー・ペアレント」条項は廃止されて親の権利より子供の安全が重視されて面会交流の制限なども実施されている[114]。
ドイツ
代替的養護の利用者数は2012年12月末現在、里親養護が64,851人、施設養護が66,711人で、総人口に占める代替的養護(家庭外ケア)の割合は人口1万人中13.8人(2010年)である。ドイツの少年局は、児童及び青少年の福祉が急迫の危険にさらされていれば、事前の親の同意または家庭裁判所の関与がなくても、行政行為の一つとして、子どもを緊急かつ一時的に保護することができる。行政による児童虐待への対応が遅れて死亡事件が発生したため対応強化が図られている。また、ドイツ民法における親権に懲戒権は含まれていない[115]。
日本
日本においては児童虐待の防止等に関する法律にて禁止されており、厚生労働省が所管している。都道府県は児童相談所を設置し、これは一時保護施設(シェルター)を備えている。被虐待児は児童福祉法に基づく要保護児童の対象である。
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