伊豆大島近海の地震 その他

伊豆大島近海の地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 09:24 UTC 版)

その他

地理条件

「伊豆の道路は路肩が弱い」というのは、ドライバーの間でよくいわれることであるが、伊豆半島は、地震に弱い特性を持つ第三紀層と火山岩で形成されており、地滑りなどを起こしやすい。実際に国道135号トモロ岬においてトンネル前後を崩落によって阻まれ取り残された車両が存在する。

それに加えて、陸地が海に向かって一気に落ち込む険しい地形など自然災害が起きる条件がそろっているといえる。これは、1974年(昭和49年)に南伊豆で発生した伊豆半島沖地震でも指摘されていたことであった。

情報混乱の発生

この地震から4日後の1978年1月18日、地震予知連絡会関東部会が示した見解を元に、静岡県知事名で「今後マグニチュード6クラスの余震が起こりうる」という内容の余震情報が、県の災害対策本部から各市町村の消防本部や出先機関、インフラ業者等に伝えられた[11]。その際、地震予知連絡会が示した「今後数日以内に」という文言が「(予測が)外れたら困る」との理由で削除された[12]

この情報伝達の旨は同日13時40分頃、県知事の記者クラブ会見によっても発表され、県内の放送局で14時台にニュース速報されたほか、各市町村の防災行政無線および広報車のスピーカーや、安全確認のため各家庭を巡回していた県プロパンガス協会・県LPガス卸売協議会の加盟業者によっても口頭で伝えられた[11]。特にこの口伝えによる情報伝達の過程で、余震発生の予測時期が抜けたことに起因する、「今日大きな余震が来る」という内容の間違った情報の流布が発生した。のちの未来工学研究所・東京大学新聞研究所の合同調査[11]によれば、人々の口から口へ伝わるうちに、発生時期が「2時間後から4時間後」「午後4時から午後6時の間」[11]となり、また「マグニチュード6」が「震度6」[11]にすり替わってしまい、真偽を求めた住民の電話問い合わせが静岡県庁に約1000件、静岡放送に約600件殺到した[11]

事態を重く見た県庁は16時30分、不安を払拭するために「落ち着いて行動してください」という旨の知事談話を発表し、最初の情報同様の伝達経路を用いて混乱の収拾に努めた[11]。のちにこの混乱は「情報パニック[11]」と報じられたが、「パニック」と評価できる程度の大きな混乱ではなかったと評価する意見もある[11][13]


  1. ^ 村井勇、角田信子、辻村芳子:1978年伊豆大島近海地震の被害・震度と地震断層 東京大学地震研究所彙報. 第53冊第3号, 1978.12.25, pp.1025-1068, hdl:2261/12705
  2. ^ 長宗留男:1978年伊豆大島近海地震の震源過程 地震 第2輯 1980年 33巻 1号 p.71-78, doi:10.4294/zisin1948.33.1_71
  3. ^ 地震防災ガイドブック 静岡県 (PDF)
  4. ^ 熱川温泉 寮が倒壊、生き埋め『朝日新聞』1978年(昭和53年)1月14日夕刊、3版、1面
  5. ^ 山川仁, 秋山哲男, 寺島恒一, 佐藤一治、伊豆大島近海沖地震による道路被害とその影響 『総合都市研究』 1978年 第5 p.39-70, 東京都立大学都市研究センター
  6. ^ 小野竹之助、「持越鉱業所における鉱さい堆積物崩壊事故についての反省」 環境技術 1978年 7巻 3号 p.224-229, doi:10.5956/jriet.7.224
  7. ^ 羽鳥徳太郎、「1978年伊豆大島近海地震による津波波源」 東京大学地震研究所彙報. 第53冊第3号, 1978.12.25, pp.855-861, hdl:2261/12691
  8. ^ a b 1978 年伊豆大島近海地震について (PDF) 地震予知連絡会 会報20巻
  9. ^ 1978年伊豆大島近海地震,および,1978年宮城県沖地震前の地下水位の変化 地震予知連絡会 会報23巻 (PDF)
  10. ^ 1978年伊豆大島近海地震の前に観測された異常現象 (PDF) 地震予知連絡会 会報21巻
  11. ^ a b c d e f g h i 「伊豆大島近海地震・余震情報バニック / 川端信正」『気象』1979年9月号、日本気象協会、6 - 9頁、NDLJP:3203622/5 
  12. ^ 2010年6月8日付 読売新聞より
  13. ^ 災害時の情報伝達と人間行動 (PDF) 昭和62年度災害復旧事務講習会特別講演から





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