乱数放送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 15:34 UTC 版)
推測される発信源および目的
乱数放送の発信源についての手がかりは、放送においての手違い、無線方向探査の結果(指向性アンテナを使用した二方位受信によっておおよその位置が把握できる)、および短波伝播の知識によってもたらされる。例えば通称「アテンシオン」として知られる放送は、かつてラジオ・ハバナ・キューバと同じ周波数で、同局の音声に混じって聴取されたことがあり、これによってキューバからの送信であることが判明した[1]。
乱数放送は、行政機関が「現場」にいるエージェントと連絡する単純かつ極めて簡単な方法として稼働していると推測されている。その推測根拠として、乱数放送はソ連8月クーデター(1991年)のような特殊、異常な政治的な偶発事象の際に、定常的に行っていた放送を、若干異なった内容に変更させたり、想定外の放送を発信したりしている。
あるいは、北朝鮮の放送がそうみられるように、非合法の薬の密輸と関係があるかもしれないとか、大規模な麻薬密売組織によって運営されていると推測する意見もある[1]。
「放送」形式を用いる目的は、他国へ侵入して大掛かりな送受信設備を持つことができないエージェントに対して、当局が双方向の秘匿通信ができる手段が大きく限られることが理由と考えられる。短波は他の周波数帯に比べ、送受信者間が長い距離で隔てられていても送受信可能である。短波帯の20MHz帯以下は、数ワットの小出力で地球を一周することがアマチュア無線で証明されている。乱数放送の収集家で「ザ・コネット・プロジェクト」の作者であるAkin Fernandezは、2005年にBBCの番組で「ワンタイムパッドによる暗号強度と、諜報員が一般的に追跡困難であることを考慮すると、乱数放送は諜報活動において強力なものだ。」と証言している[6]。
乱数放送を発信しているとみられる政府あるいは放送局は、それらの存在を認知したりその存在理由を決して明かそうとはしない。「デイリー・テレグラフ」の1998年の記事では、イギリスの貿易産業省(ラジオ放送を統制する行政機関)の報道官の次のような言葉が紹介されている。
「これら(乱数放送)はご推察の類のものです。不可解に思う必要はありません。言うなれば、これらは一般消費者向けのものではないのです」[7]
アメリカ合衆国では、ラジオの放送周波数帯での観測がされなくなり、同種の通信は人工衛星を使ったものに移行したとみられている。
注釈
- ^ 電波は国際的なものであるため、本来は放送局名や周波数などの情報について何らかの正式・公式なアナウンスがあるべきだが、それが無い例がほとんどである。
出典
- ^ a b c d e Jason Walsh「スパイご用達? 短波「乱数放送局」の謎」WIRED.jp、2004年11月18日
- ^ a b Working at a numbers station, a story from a numbers stations operator Numbers Stations Research and Information Center
- ^ a b スパイに指令? 16年ぶりに「乱数放送」再開=北朝鮮 聯合ニュース、2016年7月19日
- ^ 北朝鮮が「太陽節」前日に暗号放送 新たな内容 朝鮮日報、2017年4月14日
- ^ DRMのデータ能力の要約 Archived 2006年2月9日, at the Wayback Machine.
- ^ Tracking the Lincolnshire Poacher: The Number Stations - BBC Raduio4(2005年4月23日放送, archive.orgにてアーカイブ済)
- ^ David Pescovitz"Salon People Feature | Counting spies"(キャッシュ) [Salon.com]、1999年9月16日
- ^ "The Shortwave And the Calling: For Akin Fernandez, Cryptic Messages Became Music To His Ears", The Washington Post, August 3 2004.
- ^ a b スパイに指令? 16年ぶりに「乱数放送」再開 朝鮮日報、2016年7月19日
- ^ アジア放送研究会 特異な暗号放送 日本人拉致事件と関連か
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