九九式軽機関銃 主力装備の口径変更

九九式軽機関銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 03:45 UTC 版)

主力装備の口径変更

空の神兵」と謳われた陸軍落下傘部隊(挺進部隊)で運用されている九九式軽機(左奥)。別途落下傘投下された「物料箱」から各種武器や装備を取る挺進兵
落下傘降下後に装備を整え展開した挺進兵。中央上部の2名は九九式軽機を、手前の1名は一〇〇式火焔発射機を保持している

三十年式歩兵銃が開発されて以来、帝国陸軍が使用する小火器の口径は6.5mmが主力であった。この三十年式実包(6.5mm×50SR セミリムド 円頭弾頭)と三八式実包(6.5mm×50SR セミリムド 尖頭弾頭)は対人には十分な性能であったが、当時の諸外国が採用していた7mm級に比べ車輌等の対物(アンチ・マテリアル)威力が劣る事が懸念されていた。そのため、主要火器の口径を6.5mmから7.7mmへ拡大化する計画がたてられ、主力重機関銃三年式機関銃(6.5mm)から九二式重機関銃(7.7mm)へ改変された。この九二式重機用に開発された弾薬が九二式実包(7.7mm×58SR セミリムド)である。九二式実包の原型は、航空機関銃である八九式旋回機関銃用に開発された八九式実包(7.7mm×58SR セミリムド)であり、八九式実包は八九式固定機関銃でも採用されていた。

小資源国家である日本が、多種多様の口径の小火器を装備することは補給の点からも望ましいことではなく、他の小火器の口径も7.7mmで統一することとなり、軽機関銃も九六式軽機(6.5mm)から九九式軽機(7.7mm)に改変し、これに伴い小銃もまた並行して三八式歩兵銃(6.5mm)に代わる九九式小銃/九九式短小銃(7.7mm)が開発されたのである。

この経緯について小銃が先行していたかのように解説されることが多いが(事実、7.7mm小銃の試作着手は大正期にまで遡る)、永年の懸案ではあったがなかなか踏み切れずにいた全軍装備の7.7mm化に踏み出させる直接の契機となったのは、中国国民党軍との戦闘で十一年式軽機関銃と三八式歩兵銃(ともに6.5mm×50SR セミリムド)が、ZB26と漢陽88式小銃/中正式歩槍(ともに7.92mm×57 リムレス)に圧倒されたことであった。

この実包の統一化を進めるために、陸軍は数種類の規格と名称が混在していた7.7mm弾を整理し、従来のセミリムドの九二式実包(7.7mm×58SR)を航空隊専用弾とし、従来九七式実包(7.7mm×58 リムレス、九七式車載重機用に開発された実包)と呼ばれていたものを九二式実包(7.7mm×58 リムレス)と改名し、型式としての九七式実包を廃盤とし、陸上部隊用の7.7mm弾薬はこの新九二式実包(旧九七式実包)に統一されることとなったのである。この通達と各種改正措置は1940年(昭和15年)中に行われ、セミリムド実包(旧九二式実包)を使っていた九二式重機は改正処置を受けて、リムレス実包(新九二式実包)にも対応したものへと改められることともなった。

また、九九式実包(7.7mm×58 リムレス)も元来は軽機用として開発が進められたものである。重機用の強装薬大威力の7.7mm弾は反動が強く軽機で用いるには厳しく、威力を落として反動を軽減する処置が必要であったが、補給の観点から重機の弾薬と互換性を有することも必須条件であった。そのため、新型軽機の研究方針および設計主要条件にある通り、九二式実包と同一外形で、初速を730m/s程度とするリムレスの新実包(後の九九式実包)の使用を前提として開発が行われた(ただし、新実包が完成するまでは、新型軽機の試験は九二式普通実包および九七式普通実包を用いて行われた)。

軽機の弾薬は小銃の弾薬と共用であることが望ましいため、新型軽機に引きずられるかたちで新小銃の弾薬も九九式実包を使用することとなり、重機と軽機/小銃の間での完全な弾薬の統一は果たせなかった。しかし九九式短小銃にとっても九九式実包の採用は射撃時のハンドリング向上という面では有利に働いたものと見られる。

新九二式実包と九九式実包の薬莢は「外観寸法上は」完全に互換性があり、陸軍の7.7mm銃(セミリムド実包を用いる航空機関銃は除く)は、照尺距離が合わないという点を別にすれば、どちらの弾丸も利用することが出来た。

日本の国力では全兵器の口径変更を完了させるにはかなりの時間を必要とし、結局のところ太平洋戦争大東亜戦争終戦時になっても装備改編は終了しなかった。投入地域や部隊ごとに口径は統一されていたものの、戦線の拡大や増援のため次第に旧型装備部隊も大陸などから、新型装備部隊が多い南方戦線に回されることとなり、陸軍の中で6.5mmと7.7mmが混在して使用されたこと、しかもその7.7mmが航空機関銃用、重機用、軽機/小銃用でそれぞれ異なることなど、陸軍の補給体系は複雑で問題が多かった。また陸軍の7.7mm弾は、海軍の九七式(毘式)七粍七固定機銃九二式(留式)七粍七旋回機銃九二式(留式)七粍七機銃などの7.7mm弾(7.7mm×56R リムド)とも規格が異なるので、陸軍からの供与兵器を除いて陸海軍間で弾薬の融通ができなかった。これらの理由から、ただでさえ日本軍の弱点であった補給にいらぬ混乱を招く結果となってしまった。


  1. ^ a b http://www.lonesentry.com/articles/jp_squadweap/
  2. ^ 1940年以降は九二式実包と名称変更された。
  3. ^ a b 但馬オサム「うしおそうじ&ピープロダクション年表」『別冊映画秘宝 特撮秘宝』vol.3、洋泉社、2016年3月13日、pp.102-109、ISBN 978-4-8003-0865-8 


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