久美浜 歴史

久美浜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/09 07:01 UTC 版)

歴史

和名類聚抄』に記載される「久美郷」には、中世から近世にかけて「久美庄」とよばれる荘園が拓かれ、久美谷川流域一帯がその範囲だった[9]。久美庄の名は、1191年建久2年)の記録が初出とみられ、当初は後白河法皇の御所六条殿にある持仏堂長講堂の所領だった[9]。久美庄の支配者はその後点々とするが、1246年寛元4年)には仁和寺に、1480年(文明12年)には延暦寺にその支配の記録が残る[9]

当時、「久美の浜」はおよそ500軒の家がひしめき、熊野郡竹野郡を治める奉行所がおかれた丹後地方の中心地だった[10]。久美浜を起点に、陸路は豊岡街道、峯山・宮津街道(久美浜街道)・湯島街道・網野街道が通じ、海路では久美浜湾を経て日本海に通じる交通の要衝だった。久美浜町には「十楽」という地名があるが、これは中世末期に港町として楽市楽座がおかれ、栄えた地域であることを示すと考えられる[10]。賑わいは様々な人をこの地に呼び寄せた。「一遍聖絵」第八によれば、一遍上人1285年弘安8年)に久美の浜で布教活動を行い、その際に久美浜湾の海中から竜が顕れたと記録している[10]

1459年(長禄3年)写の丹後国諸荘園郷保惣田数帳目録によれば、「久美荘」の面積は62町余と記載される[8]

近世における久美浜地域は、宮津藩領と江戸幕府領の間を変遷し、1697年(元禄10年)以降は幕府領で落ち着いた[11]。1735年(享保20年)に丹後但馬の2国を掌握する幕府の拠点として久美浜代官所が設置され、1868年(慶応4年)から1872年(明治4年)に豊岡県に編集されるまでは久美浜県となって県庁が置かれた[11]

その後、1889年(明治22年)に久美浜村が発足するが[11]、この時点で久美浜湾南方の山間部では、近世の神谷村・河梨村・口馬地村・三谷村・奥馬地村・栃谷村の6村が合併し、久美谷村となっている[8]。この村は、1920年(大正9年)の時点で戸数332戸、本籍人口2,095人、在住人口1,613人であることが『熊野郡誌』で確認できる[8]。久美浜村は明治27年の町制施行によって久美浜町となり[11]、久美谷村は1951年(昭和26年)に久美浜町に編入された[8]。久美浜町は、1955年(昭和30年)に周辺町村を取り込む大合併をし、1958年(昭和33年)に佐濃村を加えて熊野郡一郡一町となった[11]


注釈

  1. ^ 田村、佐濃、川上、海部、久美の5郷が記載されている。(出典:京都大学文学部国語学国文学研究所・編『諸本集成 倭名類聚抄〔本文篇〕』臨川書店、1968年、643頁)

脚注

  1. ^ a b c 京都地名研究会『京都の地名 検証3 風土・歴史・文化をよむ』勉誠出版、2010年、265頁。 
  2. ^ a b c d e 京都地名研究会『京都の地名 検証3 風土・歴史・文化をよむ』勉誠出版、2010年、266頁。 
  3. ^ 京都地名研究会『京都の地名 検証3 風土・歴史・文化をよむ』勉誠出版、2010年、267頁。 
  4. ^ a b c 澤潔『探訪丹後半島の旅(上)』文理閣、1982年、110頁。 
  5. ^ 吉田金彦、糸井通浩、綱本逸雄『京都地名語源辞典』東京堂出版、2013年、211頁。 
  6. ^ 澤潔『探訪丹後半島の旅(上)』文理閣、1982年、108頁。 
  7. ^ 澤潔『探訪丹後半島の旅(上)』文理閣、1982年、112頁。 
  8. ^ a b c d e f 上田正昭、吉田光邦『京都大事典 府域編』淡交社、1994年、199頁。 
  9. ^ a b c 下中邦彦『日本歴史地名体系 第26巻 京都府の地名』平凡社、1981年、837頁。 
  10. ^ a b c 下中邦彦『日本歴史地名体系 第26巻 京都府の地名』平凡社、1981年、836頁。 
  11. ^ a b c d e 上田正昭、吉田光邦『京都大事典 府域編』淡交社、1994年、200頁。 


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