ユキノシタ 形態・生態

ユキノシタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/10 07:22 UTC 版)

形態・生態

常緑の多年草[3]。草丈は20 - 50センチメートル (cm) になる[9]は根元から長い葉柄を出してロゼット状に集まり、葉身は円形に近い腎臓形(腎円形)で多肉質、両面に長短の粗い白毛が目立ち、表面は暗緑色で主脈に沿って灰白色の斑が入り、裏面は全体に暗い赤みを帯びる[2][4][3][21]葉縁は粗く、浅く切れ込みが入る[22]。葉柄や花柄にも粗い毛が生えている[23]

本種は種子に因る種子繁殖のみならず、親株の根本から、地上茎である紅紫色の走出枝(runner/ランナー)を四方に出して、先端が根付いて子苗をつくり栄養繁殖する[2][16]

開花期は初夏(5 - 7月ごろ)で、高さ20 - 50 cmの花茎を出し、先に円錐花序を形成して多数の白い花をつけて目立つ[2][16][22]。花は5弁で長短があり、このうち上の3枚が約3 - 4 ミリメートル (mm) と小さく濃紅色の斑点と基部に濃黄色の斑点があり、下の2枚は約15 - 20 mmと大きくて白色で細長く、垂れ下がる[2][24][23][25]。本種の変種[26]または品種とされる[27]ホシザキユキノシタには、こうした特徴は現れず、下2枚の長さは上3枚と同じくらいとなる[28]。ユキノシタの雄しべの数は10本、雌しべの数が1本で、雌しべに花柱が2本あり基部は黄色い花盤に取り囲まれている[21]。雄しべは雌しべよりも先に熟して花粉を放出してしまう雌雄異熟のため、雌しべに自花の花粉がつくことを避けている[29]。花柄と萼片には、紅紫色の腺毛がある[21]

開花後、長さ約4 mmほどの卵形の蒴果(さくか)を実らせ、先端は2個のくちばし状[30][19]。種子は、極小さな0.5 mmに満たないサイズで、全体に焦げ茶色あるいは黒色であり、全体にほぼ楕円形の不定形をしていて、表面には縦筋がありコブ状突起が多数備えられている[19]

APG植物分類体系での分類

古い分類のクロンキスト体系では、バラ目となっていたが、APG植物分類体系第2版ではユキノシタ目となり、ユキノシタ科のユキノシタ属となる[31]

被子植物 angiosperms
真正双子葉類 eudicots
コア真正双子葉類 core eudicots
ユキノシタ目 Saxifragales
ユキノシタ科 Saxifragaceae

注釈

  1. ^ 「コジソウ」とも読むが、慣例的に「ユキノシタ」と読むことがある。

出典

  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Saxifraga stolonifera Curtis ユキノシタ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 『日本の野生植物』 (1999)、pp.171-172
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 金田初代 2010, p. 58.
  4. ^ a b c d 高橋秀男監修 2003, p. 82.
  5. ^ ゆきのした 言葉 漢字ペディア”. 2020年3月29日閲覧。
  6. ^ a b c 帯谷(1980):38ページ
  7. ^ a b 岩槻(2006):346ページ
  8. ^ a b c d e f g 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 105.
  9. ^ a b c d e 主婦と生活社編 2007, p. 68.
  10. ^ a b c 大嶋敏昭監修 2002, p. 421.
  11. ^ a b c 『植物雑学事典』:ユキノシタ 2011年8月16日閲覧。
  12. ^ a b 『薬用植物学』 (1999)、p.132
  13. ^ a b 若林三千男「ユキノシタ」、『週刊朝日百科植物の世界』57(朝日新聞社、1995年5月21日発行)、5の259頁。
  14. ^ a b c d 飯泉優 2002, p. 212.
  15. ^ a b c d e f g h 貝津好孝 1995, p. 200.
  16. ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 114.
  17. ^ a b c d e 篠原準八 2008, p. 52.
  18. ^ a b c 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 155.
  19. ^ a b c 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 196.
  20. ^ a b c d 川原勝征 2015, p. 104.
  21. ^ a b c 菱山忠三郎 2014, p. 122.
  22. ^ a b c d e 馬場篤 1996, p. 113.
  23. ^ a b 金田初代 2010, p. 59.
  24. ^ 『植物雑学事典』:ユキノシタ 花 2011年8月16日閲覧。
  25. ^ a b c 八坂書房 編(2005):159ページ
  26. ^ 小幡(2001):4ページ
  27. ^ 菅谷ほか 編(1998):116ページ
  28. ^ 鈴木(1970):295ページ
  29. ^ 田中修 2007, p. 52.
  30. ^ 御所見(2001):148ページ
  31. ^ 米倉 (2009)、pp.57-58
  32. ^ a b c 帯谷(1980):39ページ
  33. ^ a b c 篠原準八 2008, p. 53.
  34. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Saxifraga fortunei Hook.f. var. alpina (Matsum. et Nakai) Nakai ダイモンジソウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。
  35. ^ 『日本の野生植物』 (1999)、p.172
  36. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Saxifraga nipponica Makino ハルユキノシタ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。
  37. ^ a b 『日本の野生植物』 (1999)、p.171
  38. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Saxifraga stolonifera Curtis f. aptera (Makino) H.Hara ホシザキユキノシタ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。
  39. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Saxifraga stolonifera Curtis f. viridifolia (Makino) H.Hara アオユキノシタ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。


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