プリチャル プリチャルの概要

プリチャル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/02 02:08 UTC 版)

2022年1月の宇宙遊泳中にキューポラから撮影されたプリチャル

来歴

初期の打ち上げ目標

OPSEKは、提案されていたロシアの宇宙ステーションであり、火星や、おそらくは、そして土星などの深宇宙への有人探査を支援することを想定していた。部分的にはISSに結合して軌道上で組み立てることが計画されていた。6個のドッキングポートを有するPrichal モジュールは、他のモジュールが、それぞれの寿命や、ミッションの必要性によって結合したり離脱したりすることからOPSEKの唯一の恒久要素となるはずだった[2][7]。2017年9月、ロスコスモスは「ISSからロシア軌道セグメントを切り離す計画はない」と表明した。これがOPSEK計画の公式な終了となった[8]

打ち上げの遅延

2000年代中ごろ、ロシア軌道セグメント(ROS)の製造会社であるエネルギアはISSの将来の構成にウズロヴォイモジュール(UM)を追加した。この提案は接続モジュール(ナウカモジュールの天底側に位置することを考慮してドッキングポートが4ポートから6ポートへと増加し、同時に部分的に追加の生命維持システムを削除することによって重量を20トンから4トンへと減少させるという、汎用ドッキングモジュール(UDM)から大幅に設計変更されたもの[9])と、追加の科学/エネルギーモジュールを2013年から2015年にかけてロシア側モジュールに追加するというのだった。これらの計画はナウカの遅延によって棚上げになった[10]。ナウカモジュールの改修以降、ウズロヴォイモジュールはプリチャルモジュールとなった[5][11][12]。その小ささにもかかわらず、この4トンの、球形のモジュールはロシアの宇宙計画において非常に重要な役目を担う可能性がある[2]

予備設計は2011年1月15日に完了し、エネルギアは科学技術評議会が会議を開き、接続モジュールと関連ハードウェアの予備設計についてのレビューを実施し、設計を承認したと発表した。この会議では、専用の輸送船としてプログレス輸送船を改造したプログレスM-UMと、プログレスM-UM宇宙機モジュールを打ち上げるためのソユーズロケットの改修も承認した[7][2]

ナウカおよびUMが打ち上げられる以前の、2011年のロシア軌道セグメントの構成を示す注釈付き画像

当初、この接続モジュールは2012年にはISSに組み込まれる予定だったが、プリチャルの前に打ち上げられるべきナウカモジュールの遅延のために、打ち上げが数回延期された[2]。2018年11月、ロスコスモスの有人宇宙計画担当専務のセルゲイ・クリカレフはプリチャルはすでに飛行可能となっているが、依然としてナウカに「複数の小さな問題」があると主張した[13]

ロケットおよび宇宙企業のエネルギア(ロスコスモスの国営企業の一部)のコントロールおよびテストステーションで、プログレスM-UM輸送船モジュールの一部としてのプリチャルの技術的なテストが完了した。2021年7月31日、この宇宙機は国際宇宙ステーションのロシア軌道セグメントのさらなる開発スケジュールに従って、組み立てと飛行前の準備を続けるためにバイコヌール宇宙基地の技術コンプレックスに運ばれた。

それ以前の数週間、エネルギアの専門家はKISの領域にあるズヴェズダサービスモジュールおよびナウカ多目的実験モジュールの統合スタンドを備えたプリチャルモジュールの接続テストのサイクルを成功裏に完了した。最後の操作のあとで、宇宙船のドッキングしていないコンポーネントと地上テスト装置は、宇宙基地への列車輸送に向けて準備された。

ソユーズ 2.1打ち上げ機を用いた、プログレスM-UM貨物輸送モジュールの一部としてのプリチャル接続モジュールの低軌道への打ち上げは2021年11月に予定されている[14]

プリチャル(ISSモジュール)

プリチャルの、プログレス補給船を改修したプログレスM-UM宇宙船に搭載して、宇宙ステーションへ届けるための打ち上げは2021年11月24日に予定されている[2]ソユーズ 2.1b運搬ロケットが軌道投入のために使用される予定である[2]。この接続モジュールは、ナウカモジュール天底側ポートから、2021年6月29日に打ち上げられたプログレスMS-17によって2021年11月24日にドッキングアダプターが取り除かれた後で、ナウカモジュールの天底側ないし地球向きのポートにドッキングする予定である[2]


  1. ^ В РКК "Энергия" утвердили эскиз нового узлового модуля МКС”. Roskosmos. 2012年12月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Zak, Anatoly (2020年6月22日). “Prichal Node Module, UM”. RussianSpaceWeb. 2020年6月23日閲覧。
  3. ^ Sohail, Daniyal (2019年2月20日). “Russia To Install Prichal Node Module On ISS In 2022, One Year Behind Schedule - Glavkosmos”. UrduPoint. 2019年11月8日閲覧。
  4. ^ “Строительство российского сегмента МКС завершится в 2022 году [Building of the Russian segment of the ISS will be finished in 2022]” (Russian). RIA Novosti. (2018年11月19日). https://ria.ru/space/20181119/1533093337.html 2018年11月20日閲覧。 
  5. ^ a b c Atkinson, Ian (2020年8月19日). “Russia's Nauka Arrives Baikonur for final launch preparations”. NASASpaceFlight.com. 2020年8月20日閲覧。
  6. ^ [1] Energia.ru (13 January 2011) Retrieved 8 October 2011
  7. ^ a b January 13, 2011. S.P. Korolev RSC Energia, Korolev, Moscow Region”. S.P. Korolev Rocket and Space Corporation Energia (2011年1月13日). 2016年1月31日閲覧。
  8. ^ Bodner, Matthew (2017年7月24日). “Russia's Post ISS plans a Mystery at Best”. SpaceNews. 2020年8月20日閲覧。
  9. ^ Zak, Anatoly. “Russian segment of ISS”. RussianSpaceWeb. 2020年10月22日閲覧。
  10. ^ Zak, Anatoly (2017年3月22日). “This Russian ISS Module Has Been Delayed For a Decade and It's Still Not Ready to Fly”. Popular Mechanics. 2020年8月20日閲覧。
  11. ^ Russia Needs Billions More To Complete It's〔ママ〕 ISS Segment”. Space-Travel.com (2008年4月14日). 2009年1月29日閲覧。
  12. ^ Shamsutdinov, Sergei (2008年7月). “Program for Development of the Russian ISS Segment” (Russian). Novosti Kosmonavtiki. 2011年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月15日閲覧。
  13. ^ Kaiyran, Denis (2018年11月19日). “Сергей Крикалев: к экипажу из шести человек МКС вернется в апреле [Sergey Krikalev: ISS will return to the crew of six in April]” (ロシア語). RIA Novosti. https://ria.ru/interview/20181119/1532959857.html 2018年11月20日閲覧。 
  14. ^ Новости. Узловой модуль «Причал» отправился на Байконур”. www.roscosmos.ru. 2021年7月31日閲覧。
  15. ^ The MLM module for the Russian segment of ISS”. RussianSpaceWeb.com. 2018年11月24日閲覧。
  16. ^ Harding, Pete (2021年7月29日). “MLM Nauka docks to ISS, malfunctions shortly thereafter”. NASASpaceFlight.com. 2021年7月30日閲覧。


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