ヒッチン汎函数 ヒッチン汎函数の概要

ヒッチン汎函数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 01:40 UTC 版)

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ヒッチンの導入した一般化された複素構造は、有用に数理物理へ応用される。そのときに中心となる考え方が、ヒッチン汎函数である。

定義

6次元多様体に対しての定義は、以下の通りである。ヒッチンの論文の定義はより抽象的で、より一般的である[1]

を自明な標準バンドルを持つコンパクト向き付けられたな 6次元多様体とすると、ヒッチン汎函数 は、次の式の 3-形式上の汎函数と定義する。

ここに は 3-形式であり、 * はホッジスター作用素を表す。

性質

  • ヒッチン汎函数は、4次元多様体のヤン・ミルズ汎函数の 6次元での類似物である。
  • 定理. を3次元の複素多様体 で、 をゼロにならない正則な 3-形式の実部としよう。すると、 コホモロジー類 へ限定した 臨界点となる。逆に が与えられたコホモロジー類の中の汎函数 の臨界点で、 とすると、 は複素多様体の構造を定義し、 の上のゼロにならない正則 3-形式の実部となる。
この定理の証明は、ヒッチンの論文 Hitchin (2000)Hitchin (2001) の中に比較的ストレートに書かれている。この定理の素晴らしいところは、逆のステートメントが成り立つことである:もし完全形式 が決定していると、可能な複素構造の見つける臨界点を探すことで、複素構造を決定する 0 にならない正則 3-形式が一意に決まることである。

安定な(微分)形式

作用汎函数は、しばしば の上の幾何学構造を決定し[2]、幾何学構造はある可積分条件に従う 上の特別な微分形式の存在によって特徴付けられる。

もし m-形式 が局所座標で記述されるとし、[3]

さらに

とすると、シンプレクティック構造を決定する。

p-形式 が安定とは、n = dim(M) としたとき、この微分形式が局所 作用の開軌道の中にある場合、つまり、小さな摂動 は、局所 作用により元に戻せる場合を言う。従って、任意の 1-形式は、(定数なので)どこでもゼロにならないので安定で、2-形式 (もしくは p が偶数のときの p-形式) の安定性とは、非退化と同値である。

では、p = 3 の場合にはどうなるのか。 大きな n に対しては、3-形式は難しくなる。理由は、, , の次元の増加の仕方が、, の次元の増加のしかたよりも早いからである。しかし、非常にまれな例外がある。つまり の場合で、その場合は dim であり、dim である。次元 6 での安定な実 3-形式を とすると、 の下でのスタビライザーは次元 36 - 20 = 16 であり、実際に、 もしくは のいずれかになる。

の場合に焦点を絞り、 内にスタビライザーを持つとすると、局所座標では次のように書くことができる:

ここに、 であり、 の基底である。従って、 上の概複素構造を決定する。さらに局所座標 が存在して と満たすとすると、 は、さいわいにも 上の複素構造を決定する。

安定な形式 が与えられると:

と取ることができ、もうひとつ別な実 3-形式

を取ることができる。

そうすると により決定される概複素構造の中の正則な 3-形式となる。さらに、複素構造となるためには、ちょうど 、すなわち、 であり、かつ、 の場合である. この ヒッチン汎函数の定義での 3-形式 に一致する。これらの考えは、一般化された複素構造を導くこととなった。


  1. ^ 明確にするために、ヒッチン汎函数の説明の前に定義を行う。
  2. ^ 幾何学構造とは、例えば、複素構造や、シンプレクティック構造や、G2 ホロノミー や Spin(7) ホロノミーなどのことを言う。
  3. ^ 一般に局所座標は (p,q) で表すので微分形式の次数を m とした。


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