バトル・ロワイアル (映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/13 15:44 UTC 版)
社会問題
2004年6月1日、小学6年生(当時11歳)の少女が小学校内で同級生を殺害するという佐世保小6女児同級生殺害事件があったが、この児童は小学3年生から原作小説のファンであり、事件の前にはこの映画(R15+)のDVDを姉のレンタルカードを利用して借りたり、この作品の二次創作小説を執筆していた。
また上記の事件に加えて、東京都大田区の中学校の放送室に中学生が籠城して劇中のビートたけしのセリフを引用して「今から皆さんには殺し合いをしてもらいます」と発言した事件の影響のために、再編集版『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌 REVENGE』の発売が延期となった[3][8]。
備考
作品設定
- 原作ではパラレルワールド「大東亜共和国」が舞台であるが、映画版では再軍備した後の近未来の日本(ただし劇中に国名は一切出ず、プロモーションでも「東京」を「首都」と表記するなどしていた)を舞台としている。この改変は「死と向き合う中学3年生」を軸に、子供と大人の関係も含め、より現実的に映像化したいという深作の意向によるものである[44]。また、ゲームの法的根拠は「戦闘実験第六十八番プログラム」ではなく「新世紀教育改革法」(通称:BR法)によって実施される。冒頭部でその立法の所以が出てくるが、本編中では特に社会的な背景などは説明されない。ラストシーンは小説の大阪の梅田、JR大阪駅周辺ではなく東京の渋谷になっている。この撮影でも、「渋谷センター街」「JR渋谷駅」など、はっきりと地名が見えるシーンでは、ある程度のぼかしがかけられている。また、バスのナンバープレートの地名は、「広能」となっている[45]。原作者である高見はこれらの改変に対して「いくぶん『ロマンチック』な僕の小説に比べれば映画版のほうがよりリアルだし、また『現在の恐怖』というものも強く意識していると思います」と肯定的な評価を下している[46]。
- 制服がブレザーに変更された理由には、黒い学ランやセーラー服では血が分かりづらい、女子生徒のアクション(灯台のシーンなど)でスカートの中が見えないようにプリーツの多いスカートとなった、などがある。
- 三村達が腹腹時計をテキストに肥料等で火薬を作る際、製造過程で配合する時に木製のしゃもじを使って混ぜているのは、混ぜる時に道具(ヘラ・器)が金属同士だと誤爆の恐れがある事を踏まえて設定してあるという(考証協力の薬試寺教授のコメントより)。なお、前述の腹腹時計は小道具としてのレプリカとみられるが、現在は出所が解らない所から流出したとみられる実際の腹腹時計は「爆発物の製造法」が削除されているという。
- また、三村が高速でキーボードをタイピングする手は、コンピュータ・ハッキング考証に携わったハッカーの一人「BEAMZ」の手である[47]三村役の塚本はインタビューの中で、早打ちの練習はしていたが、結局は早打ちのシーンはやってもらうことになったという趣旨のコメントをしている[48]。
- 当作品(および続編)では、現実の自衛隊(防衛庁、現防衛省)にあたる防衛軍が登場しているが、他の映画作品での協力要請には積極的に協力する一方、当作品の性格上、自衛隊は一切協力していない。その為、作品中に登場する防衛軍の隊員役はすべて役者であり、隊員の衣装(装備)はレプリカで輸送車等の車両の殆どがその分野のマニアが所有している車両を一部借りたり、既存の車両を改造しているという。
- 作品中に生徒達にゲームの説明をするビデオが登場するが、深作監督の誕生日を祝って製作されたセルフパロディ版が存在する(いずれも宮村優子が出演。パロディ版は特別編DVDの特典映像に収録。なお、パロディ版の合いの手役は息子の健太。)
- 教師キタノの役名は当初、演じたたけしの本名そのままの「北野武」となっていたが、たけしは苦笑し、監督に頼み「キタノ」として採用された。中川典子役の前田によれば、たけしは撮影の際に生徒役達の緊張をほぐす目的からか、「コマネチ!」等のギャグを披露していたという[49]。また、クライマックスに登場する教師キタノが披露した絵画(ゲームを揶揄した絵)は、実際にたけしがこの作品で使用するために撮影の合間に描いたものである。
- 教師キタノが本部である廃校で一人ラジオ体操(作中の名称ではBR体操)を行うシーンがあり、曲はラジオ体操とよく似た曲調であるが体操自体は実際のものと同じである。
その他
- この映画を作るために、深作親子は個人事務所「有限会社深作組」を設立した。
- 2008年に英エンパイア誌が発表した「歴代最高の映画ランキング500(The 500 Greatest Movies of All Time)」では235位に選出されている[50]。近年の邦画実写作品では唯一のランクインである。また、2010年6月に同誌は「史上最高の外国語映画100本」[51]で82位に選出している。2014年6月に同誌が行った「史上最高の外国語映画100本」[52]でも前回と同列の82位に選出された。
- 当初は2000年11月25日公開を予定し、初期の宣伝素材にもクレジットされていたが、正月映画に予定されていた『ホタル』(高倉健主演)の制作遅れにより正月映画に変更となった(当初の公開時期には『新・仁義なき戦い』が拡大公開に昇格となっている)。
- 米国で劇場上映が実現したのは2011年、DVD等の発売が実現したのは2012年となったが、DVD版は北米Amazon.comの売上ランキングで一時、外国映画部門1位にまで上昇する好調なセールスを記録した。これは、原作との類似性が指摘されている米国の小説『ハンガー・ゲーム』の映画公開時期に合わせて発売されたためである[53][54]。
- クエンティン・タランティーノによる「1992〜2009年の映画ベスト20」で1位に選ばれた。その際に「2位から20位までは順不同だが、1位は別格かつ不動」であり、「自分の作品だったらと思う唯一の映画だ」と絶賛している[55]。またタランティーノは『ハンガー・ゲーム』について「単なるバトル・ロワイアルのパクリ」であるとも述べている[56]。
- 千草貴子を演じた栗山千明は、2010年に『バトル・ロワイアル3D』が公開される際のインタビューで、「千草の過激なセリフには抵抗はなく、むしろ『オリャアー!』と叫ぶのが快感だった」と述懐している。さらに栗山はこの映画で共演した高岡蒼佑や柴咲コウとは「2年前に会ったとき、『いつかバトル・ロワイアルの同窓会をやりたい』と話したことがある」と同窓会の開催に意欲を示してる[57]。
- 2017年のコンピューターゲーム『PlayerUnknown's Battlegrounds』は当作にインスパイヤされ製作された[58]。
関連項目
- バトル・ロワイアルII 鎮魂歌 - 続編
- 映画ロケ地
- 映画本編で使用された曲
- レクイエム (ヴェルディ) - 3D版主題歌は本曲をマッシュアップして作られている。
- ラデツキー行進曲
- G線上のアリア
- 美しく青きドナウ
- 水の上で歌う
- ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 - サウンドトラックの演奏を担ったオーケストラ
- 本作に影響を受けた作品・番組
- めちゃ×2イケてるッ! 本映画の大ファンである、お笑い芸人の江頭2:50 は、映画に触発され、持ち込み企画として、お笑い芸人による笑わせ合いバトル『めちゃイケお笑いバトルロワイアル』という企画を実現させた。映画と同じ音楽を使用し、舞台は自然の中だったり、戦いの手助けになるアイテムが支給など、映画をかなり意識した企画となった。(2001年2月24日放送回)
- バトルオワライヤル - 吉本興業が主催し、バッファロー吾郎がプロデュースするお笑いイベント。所々に本映画を意識した演出がある。
- パチンコ バトル・ロワイアル - 本映画をパロディ化したオリジナルコメディドラマ。松村邦洋がビートたけしの役をモノマネで演じるなど、本映画の細かい部分が随所に再現されている。更にたけし軍団のメンバーも多数出演している。また、続編として『パチンコ バトル・ロワイアルII』も制作された。
- 銀齢の果て - 筒井康隆による小説。増えすぎた老人を減らすために、国が老人たちに殺し合いをさせるという、本作を彷彿とさせる内容となっている。著者の筒井も「『バトル・ロワイアル』という映画が話題になっていたからそこから思いついた」と公言している[59]。
- その他
- バトルロイヤル
- バトルロイヤルゲーム - 2010年代後半に隆盛したコンピュータゲームのジャンル。ジャンルの名称は本作から取られている。
- ディストピア
- 銃社会
注釈
出典
- ^ 日本映画製作者連盟2001統計
- ^ 会議録 第150回国会 文教委員会 第4号(平成12年11月17日(金曜日)). 文教委員会. 衆議院. 17 November 2000. 2011年1月16日閲覧。
- ^ a b c 「深作欣二、三周忌ピリオドは打てない理不尽なり、自粛権力 BRはまだ燃えてござる! 深作健太、『バトル・ロワイアルII 特別編』発売延期事件について語る!」『映画秘宝』2005年4月号、洋泉社、12-13頁。
- ^ 海外作品においては、それ以前から『死のロングウォーク』『バトルランナー』『キューブ』『ローラーボール』『デス・レース2000年』『ジュマンジ』など、多数のデスゲーム作品が存在している。
- ^ a b “故・深作欣二監督の悲願『バトル・ロワイアル 3D』全米公開決定”. ORICON STYLE (2010年11月11日). 2016年1月12日閲覧。
- ^ 深作欣二(インタビュー)「新年特大号の宮崎学 深作欣二 対談「生の血煙の匂いがするよラなドラマをつくりたい」」『宮崎学オフィシャルサイト』 。2016年1月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 田野辺尚人「(『バトル・ロワイアル』製作/脚本)深作健太インタビュー」『映画秘宝』2011年1月号、洋泉社、44–47頁。
- ^ a b 「深作欣二、三周忌ピリオドは打てない 理不尽なり、自粛権力 BRはまだ燃えてござる! 証言・前田愛 ~深作欣二が最後に撮った女優~」『映画秘宝』2005年4月号、洋泉社、11頁。
- ^ “静かな日々の階段を”. レコチョク. 2016年1月12日閲覧。
- ^ “土屋アンナ、映画『バトル・ロワイアル3D』主題歌を過激に歌う”. ORICON STYLE (2010年9月10日). 2016年1月12日閲覧。
- ^ “バトル・ロワイアル 3D”. アミューズソフトエンタテインメント. 2016年1月12日閲覧。
- ^ “Battle Royale”. Rotten Tomatoes. 2012年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年3月27日閲覧。
- ^ Koehler, Robert (2001年1月22日). “Battle Royale”. Variety 2012年3月27日閲覧。
- ^ Korsner, Jason (2001年9月13日). “Battle Royale (2001)”. BBC. 2012年3月24日閲覧。
- ^ Haflidason, Almar (2002年). “Reviewer's Rating 5 out of 5 User Rating 5 out of 5 Battle Royale Special Edition DVD (2001)”. BBC. 2012年3月27日閲覧。
- ^ Newman, Kim (2006年12月30日). “Battle Royale”. Empire. 2012年3月27日閲覧。
- ^ Bradshaw, Peter (2001年9月14日). “A time to kill – Ironically, this week's best film deals with violence – and how the state reacts to it. Peter Bradshaw applauds its honesty”. The Guardian (London) 2012年3月25日閲覧。
- ^ Ross, Jonathan (2001年). “Film new releases”. MGN. 2012年3月27日閲覧。
- ^ “'Battle Royale'”. Quentin Tarantino's Top 20 Favorite Films. Xfinity. 2012年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年3月24日閲覧。
- ^ “Movie Review: Battle Royale (DVD)”. Entertainment Weekly. (2012年3月7日)
- ^ Scott, A. O. (2012年5月24日). “‘Battle Royale,' Directed by Kinji Fukasaku”. The New York Times
- ^ “12-years-before-hunger-games-there”. 2012年3月28日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “Combustible Celluloid Review – Battle Royale (2000), Kinji Fukasaku, Chiaki Kuriyama, Takeshi Kitano”. Combustiblecelluloid.com (2009年11月22日). 2012年6月22日閲覧。
- ^ Michael Mirasol; Roger Ebert (2012年3月18日). “Video essay: Was this Japanese film an inspiration for "The Hunger Games?"”. Chicago Sun-Times. オリジナルの2012年3月21日時点におけるアーカイブ。 2012年3月24日閲覧。
- ^ Mulligan, Jake (2012年3月21日). “Blu-ray Review: "Battle Royale – The Complete Collection"”. The Suffolk Voice. 2012年3月24日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Shaffer, R.L. (2012年3月19日). “Battle Royale: The Complete Collection Blu-ray Review”. IGN. 2012年3月25日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Hurtado, J. (2012年3月18日). “Blu-ray Review: BATTLE ROYALE: THE COMPLETE COLLECTION”. Twitch Film. 2012年3月25日閲覧。
- ^ Jane, Ian (2012年3月20日). “Battle Royale: The Complete Collection (Blu-ray)”. DVD Talk. 2012年3月25日閲覧。
- ^ Ashby, Devon (2012年3月27日). “Blu-Ray Review: Battle Royale: The Complete Collection”. CraveOnline. 2012年3月28日閲覧。
- ^ McKnight, Brent (2012年4月2日). “Savage, Sharp, Satirical and Brutally Funny: 'Battle Royale: The Complete Collection'”. PopMatters. 2012年4月3日閲覧。
- ^ “Battle Royale Movie Review by Anthony Leong from”. MediaCircus.net. 2012年6月22日閲覧。
- ^ Wroot, Jonathan; Willis, Andy (2017). “Battle Royale as a One-Film Franchise: Charting a Commercial Phenomenon Through Cult DVD and Blu-ray Releases”. Cult Media: Re-packaged, Re-released and Restored. Springer. pp. 11–12. ISBN 978-3-319-63679-5
- ^ Wallace, Lewis (2009年8月17日). “Tarantino Names 20 Favorite Films Since Reservoir Dogs”. Wired 2020年10月17日閲覧。
- ^ a b Tobias, Scott (2008年5月28日). “The New Cult Canon: Battle Royale”. The A.V. Club. 2020年10月17日閲覧。
- ^ Ponto, Arya (2012年3月19日). “"The Hunger Games" and the Bloody Legacy of "Battle Royale"”. Just Press Play. 2012年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月17日閲覧。
- ^ Solis, Jorge (2010年6月6日). “Fango Flashback: "BATTLE ROYALE"”. Fangoria. 2020年10月17日閲覧。
- ^ Shamon, Danny. “REVIEW: Tournament, The (2009)”. Kung Fu Cinema. 2013年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月17日閲覧。
- ^ Poland, David (2012年3月20日). “Review: The Hunger Games”. Movie City News. 2012年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月17日閲覧。
- ^ Yang, Jeff (2012年3月23日). “‘Hunger Games’ Vs. ‘Battle Royale’”. The Wall Street Journal 2020年10月17日閲覧。
- ^ Tassi, Paul (2017年9月22日). “'PUBG' Developer Unironically Calls Out 'Fortnite' For Copying Its Battle Royale Format”. Forbes. 2017年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月17日閲覧。
- ^ “第24回日本アカデミー賞優秀作品”. 日本アカデミー賞. 2016年1月12日閲覧。
- ^ “日刊スポーツ映画大賞”. 日刊スポーツ. 2016年1月12日閲覧。
- ^ “第19回ゴールデングロス賞受賞作品”. 全国興行生活衛生同業組合連合会. 2016年1月12日閲覧。
- ^ 『バトル・ロワイアルThe MOVIE 完全攻略ガイドブック』バトル・ロワイアル研究委員会編(角川書店)2000年、92ページ
- ^ 深作欣二監督『仁義なき戦い』(1973年、東映)の主人公・広能昌三によるものと考えられる
- ^ 『バトル・ロワイアルThe MOVIE 完全攻略ガイドブック』バトル・ロワイアル研究委員会編(角川書店)2000年、92 - 93ページ
- ^ 高見広春、「バトル・ロワイアル」制作委員会、他『バトル・ロワイアル・インサイダー』太田出版、2000年、450ページ
- ^ 高見広春、「バトル・ロワイアル」制作委員会、他『バトル・ロワイアル・インサイダー』太田出版、2000年、321ページ
- ^ 高見広春、「バトル・ロワイアル」制作委員会、他『バトル・ロワイアル・インサイダー』太田出版、2000年、280ページ
- ^ Empire 「The 500 Greatest Movies of All Time」(英語)
- ^ “英エンパイア誌の「史上最高の外国語映画100本」 第1位に「七人の侍」”. 映画.com (2010年6月14日). 2010年9月9日閲覧。
- ^ “英エンパイア誌が「外国映画ベスト100」発表!1位は『七人の侍』”. シネマトゥデイ (2014年6月18日). 2014年6月25日閲覧。
- ^ “北米で『バトル・ロワイアル』DVDが売れ行き好調!『ハンガー・ゲーム』効果か”. シネマトゥデイ. (2012年3月27日) 2012年4月10日閲覧。
- ^ “「ハンガー・ゲーム」効果で「バトル・ロワイアル」のセールスが好調”. 映画.com. (2012年3月27日) 2012年4月10日閲覧。
- ^ Quentin Tarantino's Favourite Movies from 1992 to 2009...
- ^ “Quentin Tarantino wishes he had directed ‘Battle Royale’”
- ^ 栗山千明(インタビュー)「この作品がなかったら、女優を続けていなかったかもしれない」『シネマトゥデイ』 。2015年11月5日閲覧。
- ^ “INVEN Game Conference Talk”. Bluehole, Inc. (2017年2月15日). 2017年7月7日閲覧。
- ^ “安楽死望む筒井康隆氏、日本尊厳死協会の長尾和宏氏と対談”. NEWSポストセブン. (2017年3月13日) 2018年6月9日閲覧。
- バトル・ロワイアル (映画)のページへのリンク