ハンプ (道路)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 08:43 UTC 版)
スピードテーブル
スピードテーブル(speed table)は、通常のハンプに比べて長く、上面が弧状ではなく平坦となっているものである。flat top humpまたはraised pedestrian crossingとも。基本的に乗用車のホイールベースより長く造られ[18]、他の形のハンプほどは減速効果がないため、構造上速度を出しにくい生活道路に設置されることが多い[19]。
横断歩道をスピードテーブルとすることが多いが、交差点や小型ラウンドアバウトにも用いられる。
効果
一般的な7 mのスピードテーブルでは通過速度が時速32 - 48 km程度に抑えられ、8カ所を対象としたある調査では接触事故の件数が年間45%減少したことが分かっている[19]。
利点
局所的に減速させるより、低い速度を維持し続けることが求められる場所(住宅街など)において、スピードテーブルは効果を発揮する。これまで述べてきた緊急車両の問題に対しては、スピードクッションほどの効果はないが、一般的なハンプほどは減速する必要がない[18]。
批判
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物理的に自動車に減速を促すという点では安全運転に有効だが[補 1]、騒音や車体への負担が争点となることがある。更に、ハンプのある場所では緊急車両であっても減速が要求され、救急車の場合は車内への衝撃が問題となる。
また、オートバイや自転車がハンプに気付かなかった場合、転倒によって運転者が深刻な傷害を負う恐れがある。これはハンプの一部に切り込みを設けることで解決することができる場合もあるが、これらの車両に前方不注意を促したり、減速の必要性をなくすため、本来の効果が発揮できなくなる。
この他、必要以上の勾配や高さがあるなど、設計に問題のあるハンプは、最低地上高が低い車両に損傷を及ぼす場合があり、低速で通過しても車体と干渉することがある。
環境悪化
大型車が通過する場合、その騒音と衝撃によりかえって住環境が悪化するという指摘がある[22][23]。特にカリフォルニア州モデストでは、主要道路にハンプなどが設置された後、これを避けて並行する生活道路へ流入する車両が増えたことが報告されている[22]。
また、こうした構造物が連続する道路では自動車の加減速が頻繁となるため、(特にバスやトラックによる)交通騒音が発生する。これに並行して、燃料消費の増加やブレーキの摩耗、エンジンやサスペンションなどの劣化が進むという意見もある。
緊急車両
ハンプ1つにつき、消防車の場合は3〜5秒、患者を乗せた救急車は最大10秒の到着遅延が発生するとされている[6]が、実際は緊急交通路にスピードハンプは設置されず、スピードクッションで代替されることが多い。
2003年には、ロンドン緊急サービス(London Ambulance Service)の委員長シグルズ・レイントン(Sigurd Reinton)が、毎年500件の心停止死がスピードバンプによる救急車の遅延で引き起こされていると主張した。しかし、後にこれは撤回された[24]。
緊急車両に関する問題はスピードクッションによってほぼ解決された。
健康面
通過する度に上下の揺れが発生することから、乗車している人に頻繁に不快感を与え続けることとなり、脊椎への衝撃や慢性腰痛悪化の恐れがある。
スウェーデンでは、ISO 2631-5に基づいたバス運転手の脊椎負担の調査により、健康上の観点からスピードバンプについて以下のような要求が出された[25]。
- ハンプが改良されるまで、当該道路を避けるよう運行ルートを変更する。
- 一日150個のハンプを通過する運転手のために、当該道路の最大許容速度は時速10キロに低減する。
その他
これら以外にも、以下のような問題がある。
- ハンプにより子供など他の危険に注意が行かなくなる
- 除雪車によってハンプが損傷を受ける
- 重い車両に対する効果が薄い
- 設置時に必要とされる標識、警告灯、白線が視覚的に過剰
また、首都高速道路9号深川線の辰巳第一パーキングエリア(東京都江東区)では、速度抑制を目的として2023年1月頃からPA出口の路面にハンプ(スピードテーブル)が設置されたが、このハンプをジャンプ台に見立てて高速で通過する車両の動画がSNS上に投稿され、問題となっている[26]。
各国の事例
日本
日本では道路の凸部(ハンプ)をについて道路構造令第31条の2(凸部、狭窄部等)で定められている。また、凸部通行する時に、「衝撃によって不快感を与えない」、「低速の車両には不快感を与えない」、「時速30 km/hを超えると運転者に不快感を与える」ことによって、安全に速度を抑制する効果を狙って、以下の技術基準が定められている[27]。
- 凸部の高さ - 10センチメートル
- 傾斜部の縦断勾配 - 平均で5%、最大で8%以下
- 傾斜部の形状 - 凸部を設置する路面及び平坦部とのすりつけ部を含め、なめらかなものとする。
- 平坦部の長さ - 2メートル以上
韓国
韓国では過速防止トク (과속방지턱)と呼び、車両速度を時速30km以下に制限する場所を対象に設置されている。国土交通部の制定する行政規則「道路安全施設設置及び管理指針」により以下のように規定されている[28]。
- 道路の縦断方向の標準の形状は円弧形・左右対称で高さ10cm、長さ3.6m。
- 局地道路のうち幅6m未満の小路などでは高さ7.5cm、長さ2.0mを適用することも可能。
- 団地内の道路など民間設置者が車両速度を時速10km以下に制限しようとする場合には高さ7.5cm、長さ1.0mとすることも可能。
- 材質は原則として道路の路面舗装と同一とし、路面と一体となることを原則とするが、特殊な場合に限りゴムやプラスチックも使用可能。
- 十分な視認性を確保するため、反射性塗料の使用を原則とする。黄色と白色を交互に使用し、斜めに線を引く。
イギリス
イギリスでは交通静穏化の目的で以下のように利用されている。
- 最も多いタイプはスピードハンプ状のもので、基本的には曲線状の上面を持つ。
- スピードテーブルは横断歩道、交差点、ラウンドアバウトに用いられ、緊急サービスやバス事業者からも好評を得ている。
- スピードクッションは通常単体で使用し、(交通静穏化の目的で設置された)道路狭窄では2ヶまたは3ヶ1組で設置される。
- ランブルストリップスは騒音が発生するため、郊外やパワーセンターでのみ用いられる。
英国運輸省ではハンプの設計や利用方法を規則化している[29]。
しかし、同意を得ないままハンプ設置されたことで地域住民の反発を招き、撤去される事例もある[30]。例えば、ダービーシャー州ダービーのある地域では、146個のハンプが撤去され、46万ポンドの費用がかかった。同様の事例はイギリス各地で発生している[31]。また、ハンプを避けようとした自転車が接触事故を起こし、運転者が死亡したこともある[32]。
- ^ 『「凸部、狭窄部及び屈曲部の設置に関する技術基準」の制定について~身近な道路の交通事故死者半減を目指して~』(プレスリリース)国土交通省道路局、2016年3月31日 。2023年2月13日閲覧。
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- ^ “Original Traffic control sketch made by Compton in 1953”. Washington University Libraries. 2010年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月14日閲覧。
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- ^ a b c d e f ITE. “Traffic Calming Measures – Speed Hump”. Institute of Transportation Engineers. 2007年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月31日閲覧。
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- ^ Dr Anders Brandt & MSc Johan Granlund, Swedish Road Administration (2008年). “Bus Drivers’ Exposure To Mechanical Shocks Due To Speed Bumps”. Society for Experimental Mechanics, IMAC XXVI Conference and Exposition on Structural Dynamics. 2011年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月2日閲覧。
- ^ “首都高の謎新名所「辰巳ジャンプ台」が話題! なぜ本線合流直前に「段差」を設置? SNSではジャンプ大会状態に…”. くるまのニュース. メディア・ヴァーグ (2023年1月30日). 2023年2月7日閲覧。
- ^ 瀬戸下伸介、大橋幸子、関皓介 (2017年1月). “「凸部、狭窄部及び屈曲部の設置に関する技術基準」に関する技術資料(国総研資料第952号)”. 国土交通省 国土技術政策総合研究所. pp. 28–29. 2023年2月13日閲覧。
- ^ “제5편 과속방지턱”. 국토교통부. 2024年4月26日閲覧。
- ^ “Highways (Road Humps) Regulations 1999 (replacing the 1996 regulations)”. UK Department of Transport. 2017年7月31日閲覧。
- ^ “Speed humps dumped after protest”. Auto Express
- ^ “Bumps: Britain gets the hump”. London: The Times. (2003年10月19日) 2010年5月23日閲覧。
- ^ “Crash victim's family may file civil action”. Strathspey & Badenoch Herald[リンク切れ]
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