タックスマン
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レコーディング
「タックスマン」のレコーディングは、1966年4月20日にEMIレコーディング・スタジオで開始された。この日に4テイク録音されたものの、この日に録音されたものは破棄された。
4月21日にリメイクが開始され、ベーシック・トラックが10テイク録音された。4トラック・レコーダーにハリスンがディストーションを効かせたリズムギター、マッカートニーがベース、リンゴ・スターがドラムが録音されたのち、マッカートニーのリードギター、ハリスンのリード・ボーカル、レノンとマッカートニーのバッキング・ボーカルがオーバー・ダビングされた[13]。リードギターについて、ハリスンは「ポールに弾いてもらった。ポールは僕に合うようにとインド風のフレーズを弾いてくれたよ」と語っている[14]。
テイク11でのコーラス部分では、「Anybody got a bit of money?(誰か少しカネ持ってない?)[15]」というリフレインが入っていたが、のちに「Haha, Mr. Willson」「Haha, Mr. Heath」というフレーズに置き換えられた[16][17][注釈 3]。5月16日に曲の冒頭に入っているカウントが追加された[19]。6月21日に曲の終わり部分に中間のギターソロをコピーしてフェードアウト処理したうえで、エンディング部分が作成された[13]。
曲の構成
「タックスマン」はキーがDメジャーに設定されており、4分の4拍子となっている[20]。曲はカウントと咳のあとに、後方から聞こえるカウントで始まる[20]。作家のスティーブ・ターナーは、ウィルソンとヒースに対する言及や、ニール・ヘルティ作曲の「バットマンのテーマ」からの影響が見られる音楽性から「スマートで小さなポップアート・ソング」と評している[21]。
マッカートニーが弾くベースラインは、モータウンのベーシストであるジェームス・ジェマーソンを模倣したものとされている[22]。
発売
1966年8月5日にパーロフォンからオリジナル・アルバム『リボルバー』が発売され[23]、「タックスマン」は同作のオープニング・トラックとして収録された[24]。『リボルバー』には、本作のほかに「ラヴ・ユー・トゥ」や「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」と、ハリスンの作品が3曲収録されている[25]。「タックスマン」は、ビートルズでは初となる時事問題を扱った楽曲であると同時に[26]、自身の楽曲上で行なった初の政治的声明となっている[21]。また、音楽評論家のティム・ライリーは、冒頭のハリスンによるカウントインについて触れ、1963年に発売された1作目のオリジナル・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』のオープニング・トラック「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」におけるカウントインと対照的であると述べている[27]。
ビートルズの解散から3年後の1973年に発売されたコンピレーション・アルバム『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』には収録されておらず、これに対してファンの間で不満の声が上がった[28][注釈 4]。1976年に発売されたコンピレーション・アルバム『ロックン・ロール・ミュージック』に収録されたのち、ハリスンの意向を無視してビートルズ時代の楽曲も含まれた『ザ・ベスト・オブ・ジョージ・ハリスン』にも収録された[29][30]。
注釈
- ^ 作曲当時のイギリスの通貨は、1ポンド=20シリング=240ペンス(1シリング=12ペンス)であった。1971年2月15日に、現行の1ポンド=100ペンスに移行。
- ^ なお、これとは対照的にレノン作の「シー・セッド・シー・セッド」では、ハリスンが一部手伝っている[9]。
- ^ テイク11は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に収録された[18]。
- ^ 2023年11月10日に発売された同作のスペシャル・エディションには、本曲が収録されている。
出典
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- ^ The Editors of Rolling Stone 2002, p. 172: "a contagious blast of garage rock".
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