シール (工学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/29 01:27 UTC 版)
シールの材質
シールに使われる素材は、温度・圧力・耐性などの条件に応じて単独や組み合わせて使用される。
有機材料
有機材料として、天然ゴムの他にニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、シリコーンゴム、四フッ化エチレンゴム樹脂、麻や綿などの植物繊維、さらには牛革をなめし加工した皮革などが使用される場合もある。これらの材料はその特性に応じて、各種の産業用途や家庭用途で広く使われている。
一般にゴム系の素材は接触面とのなじみが良く施工も容易だが、耐熱性に乏しい上に低温で固化するため使用温度範囲が狭い、高圧に耐えない等の特徴がある。また素材に加硫架橋が存在する場合は流れる流体及び周囲の銅素材による銅害での劣化に注意する必要がある。
耐薬品性は素材の性質による。
無機材料
シールに使われる素材は無機材料として、鉄合金、非鉄合金、セラミック、黒鉛、石綿(アスベスト)などがある。金属系素材は耐熱性や耐圧性に優れるが、接触面の平滑さが要求され施工の際にも技術が必要。使用可能温度・耐圧性・耐薬品性は、素材金属の性質に依存する。
石綿
石綿は極低温から1000°Cを越える高温まで非常に広い温度範囲で安定して使用できる特性があり、耐水・耐油・耐薬品性も良好な素材。10%から20%のゴムまたは合成ゴムを添加し整形した石綿ジョイントシートとして、あるいは金属と組み合わせた渦巻き形ガスケットやメタルジャケット形ガスケットとして、更には耐熱性と耐薬品性を兼ね備えたグランドパッキンの素材として広い範囲で使用されていた。
日本において石綿は平成18年9月の労働安全衛生法の改正により全面製造禁止となったが、代替品が確立していない特定分野のシールについては政令により製造の禁止が猶予されている。
猶予されている製品はポジティブリストとして厚生労働省の労働安全衛生法施行令で附則としてあげられている。当初リストには6種12項目挙げられており、シール材としては4種10項目が温度や圧力や化学条件を指定した条件下での使用を認められていた。即ち化学工業、鉄鋼業、非鉄金属製造業の既存の施設の設備の特定条件下での使用で8項目、潜水艦の特定部品への使用で2項目が挙げられていた。
ポジティブリストは代替品の技術が確立された時点で見直しがなされ、2012年3月に全ての代替技術が確立し、石綿は完全に製造禁止となった[2][3]。
材質 | 使用温度範囲 | 耐圧 | 耐薬品性 |
---|---|---|---|
天然ゴム | -20~100 | 10気圧まで | 劣る |
シリコンゴム | -60~200 | 10気圧まで | やや良 |
テフロン樹脂 | -100~100 | 10気圧まで | 良好 |
上記以外の合成ゴム | -20~100 | 10気圧まで | あまりない |
石綿(繊維) | -200~1300 | 良好 |
- ^ 吉村恒(監修)『トンネルものがたり』山海堂 (2001/12) ISBN 4-381-01437-5
- ^ アスベスト使用・製造を全面禁止へ 厚労省、3月から 朝日新聞
- ^ アスベスト全面禁止(2012年) 厚生労働省
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