グリムスヴォトン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/25 18:01 UTC 版)
2011年の噴火
2010年10月2日と3日にグリムスヴォトン付近でハーモニック微動 (Harmonic tremor) が2度記録され[6]、同時にGPSにより火山の下のマグマ運動を示す突然の増加が観測されたことから、大規模な噴火が近いことが予想された。その1ヶ月後の2010年11月1日には、ヴァトナヨークトルから溶けた水がグリムスヴォトンに流れ込んだことから、氷底噴火および氷河湖決壊洪水の可能性が懸念された。2011年5月21日19時25分(UTC)、多数の地震を伴いながら高さ12 kmに及ぶ噴煙柱と共に噴火が始まった.[7][8][9]。その後、噴煙は20 kmの高さにまでのぼった。この噴火は2004年の噴火の10倍以上であり、ここ100年間でのグリムスヴォトン最大の噴火である[10]。 火山灰は早ければ24日にイギリス・スコットランド、26日にはフランスやスペインに到達すると予想された[11]が、アイスランド以外では航空便に影響は出ていない。
写真
エイヤフィヤトラヨークトル噴火との比較
エイヤフィヤトラヨークトルの噴火はヨーロッパの航空路を閉鎖に追い込み、数十億ユーロの影響を与えた。今回の噴火は更に大きかったが、これまでのところケプラヴィーク国際空港(アイスランド)が閉鎖されているのにとどまっている。飛行に対する影響における違いは、3つの要因(噴火によりできた灰、灰を吹き流す天候、灰に飛び込む飛行機に関する新規則)にある[12]。
- 粒子の細かい火山灰は、大きなものよりも降下に時間がかかり、それだけ長い時間空中に留まるため、噴出された火山灰のうち細かいものがどの程度の割合であるかが重要である。その割合は溶岩の組成と、溶岩が水に接触したかどうか(たとえば氷河での噴火など)に大きく依存する。エイヤフィヤトラヨークトルでの噴火の場合、溶岩は粘性が高く、ガスを多く含んでおり多孔性であったため、生成された火山灰の90%以上が直径1mm未満の細かい粒子であった。一方、氷河の下から溶岩が噴出する場合、爆発を伴うことが多い。そして溶岩と水の接触がなくなったあとも爆発的な状態が継続することがある。グリムスヴォトンの場合、溶岩は爆発的に噴火することの少ない玄武岩だが、氷河が溶けた水との接触により爆発的になっており、溶岩塊が速やかに分裂することが少なく、つまり細かい粒子の火山灰の割合は低い。
- エイヤフィヤトラヨークトルの噴火では北大西洋からの強い風が火山灰をヨーロッパ大陸へと運んだ。グリムスヴォトンの場合、爆発的噴火のあった2011年5月22日には風により大西洋北部に大量の火山灰が流された。翌日23日までに流された火山灰の量の計算値を図示したものが英国気象庁により発表されている[13]。
- エイヤフィヤトラヨークトル噴火の前には、航空機は火山灰をすべて避けるよう規定されていた。現在は火山灰の量によって飛行可能な区域が規制される。そのためより弊害の少ない、効率的な規制が行われるようになっている。
- ^ "Grímsvötn". Global Volcanism Program. Smithsonian Institution. 2006年8月15日閲覧。
- ^ “How to pronounce Grimsvotn (a message from an Icelander)”. YouTube (2011年5月21日). 2011年5月23日閲覧。
- ^ 浅井辰郎、森田貞雄「アイスランド地名小辞典」1980年 ASIN B000J86MGY
- ^ “Gjálp 1996”. アイスランド大学地球科学研究所. 2011年7月21日閲覧。
- ^ 「火口の熱 票が解かし湖に」火山を歩く 読売新聞2013年10月3日夕刊7面
- ^ “Possible Harmonic tremor pulse at Grímsfjall volcano | Iceland Volcano and Earthquake blog”. Jonfr.com (2010年10月2日). 2011年5月22日閲覧。
- ^ Njörður Helgason (2011年4月14日). “Vegurinn um Skeiðarársand lokaður”. mbl.is. 2011年5月22日閲覧。
- ^ “Iceland's most active volcano erupts - Europe”. Al Jazeera English (2011年5月21日). 2011年5月22日閲覧。
- ^ “Iceland volcanic eruption ‘not linked to the end of the world’ | IceNews - Daily News”. Icenews.is (2011年5月21日). 2011年5月22日閲覧。
- ^ “Largest Volcanic Eruption in Grímsvötn in 100 Years”. Iceland Review (2011年5月22日). 2011年7月12日閲覧。
- ^ “アイスランドの火山灰が英国に到達、空の便欠航相次ぐ”. CNNj (2011年5月24日). 2011年7月12日閲覧。
- ^ http://all-geo.org/volcan01010/2011/05/grimsvotn-eruption-frequently-asked-questions/
- ^ plot produced by the UK Met Office 英国気象庁による、2010年のエイヤフィヤトラヨークトル噴火での火山灰量の計算値
- ^ Mark Peplow (2004-07-13), “Glacial lake hides bacteria” (– Scholar search), Nature, doi:10.1038/news040712-6, オリジナルの2007-03-12時点におけるアーカイブ。
- 1 グリムスヴォトンとは
- 2 グリムスヴォトンの概要
- 3 概要
- 4 2011年の噴火
- 5 氷底湖の細菌
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