キャッシュカード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 23:40 UTC 版)
キャッシュカードの構造と種類
キャッシュカードの規格統一はオンラインシステム化に寄与した[2]。キャッシュカードは一般的に幅85.60 mm、高さ53.98 mm、厚さ0.76 mmサイズのプラスチック製で、これはISO (ISO/IEC 7810) やJIS (JIS X 6301) によって規定されているカードサイズである。
カードには口座番号や氏名の文字がエンボス加工されて刻印されている。2010年代になると、発行する金融機関の銀行名や統一金融機関コードなどに由来する点字がエンボスされたキャッシュカードも登場するようになった。
磁気ストライプカード
プラスチックの本体に刻印を施し、磁気ストライプをつけて、口座番号等の情報を磁気情報で記録したもの。ATMでは、記録された磁気情報のみを用いて手続きを行う。
エンコード方式とATM
日本と、アメリカ合衆国を含めた諸外国とでは、キャッシュカードなど金融取引に使われる、カードの磁気エンコードの方式が異なる。
JIS X 6302では、裏面磁気ストライプカード(JIS I 型)用のエンコード方式と、おもて面磁気ストライプカード(JIS II 型)用のエンコード方式を規定している。JIS I 型用の方式はISO/IEC 7811と一致しており、クレジットカードや国際航空運送協会 (IATA) 加盟の航空会社の会員カードに採用されている。JIS II 型用の方式は、日本独自の規格であり、日本の銀行キャッシュカードに採用されている。
国内金融機関のATMで両方に対応するものは、従前は外国銀行またはゆうちょ銀行が設置するATMしか無かった。コンビニATMでは、セブン銀行ATMが両方の磁気エンコードに対応するクレジットカード及びICキャッシュカード対応し、他のATMでも徐々に対応するのが多くなってきた。
問題点
強い磁気に晒されると磁気情報が破損して使用できなくなることがある。また、後述のセキュリティーの問題から磁気ストライプのカードの発行を中止して、ICキャッシュカードに切り替える銀行もある[3]。この場合、当然ながら、磁気ストライプを前提とした各種サービスは利用できない[4][5]。
ICチップ内蔵カード
上記の磁気ストライプカードの本体に、更にICチップを搭載して機能と安全性を高めたもの。安全性を高めるため磁気ストライプを搭載せず、ICチップのみを搭載したカードも存在するが、利用上の制約[4][5]も多いため、本格的な普及には至っていない。GMOあおぞらネット銀行で標準発行されている他、2023年3月、三井住友銀行が「Olive」サービスにおいて都市銀行で初めて、「磁気ストライプ無し・ICチップのみ」のキャッシュカードを発行した(キャッシュカードとしての磁気ストライプを廃止。クレジットカードとしての磁気ストライプは残存[6])。
カード毎に異なる鍵情報をICチップ内に内蔵し、この鍵を用いてATMと暗号通信を行う機能を持つ。カード内の暗号鍵そのものが、外部とやり取りされるわけではないので、同じ情報を持つ偽造カードを作出することは困難である。ただしリバースエンジニアリング等の手法により、メモリ内の暗号鍵が直接読み出された場合(現時点では、耐タンパー機能や計算量的に出来ないとされる)や、通信内容から暗号鍵を推測された場合には複製も可能となる。物理的・電気的に、ICチップが破壊されると使用できなくなる。
日本国内用のICキャッシュカードについては、一般社団法人全国銀行協会が策定した接触型ICチップの方式を原則として採用している。
生体認証カード
上記のICチップ内蔵カードに、生体認証に用いる情報を追加記録したものである。ATMで用いられる生体認証として、掌の静脈パターンを読み取る方法と、指の静脈パターンを読み取る方法の2種類が採用されている。
ただし、生体認証を廃止ないしは新規停止した金融機関も存在し、みずほ信託銀行に至っては、生体認証対応カード自体を使用不可とする措置を取っているほか、三菱UFJ銀行やゆうちょ銀行など、全国規模の金融機関での廃止・サービス停止に踏み切ったケースも存在する。
一般に生体認証カードは、多くの金融機関でATM引き出し限度額を高額に設定可能としている。一方で、高額設定可能なことを突かれ、特殊詐欺で多額の被害に至るケースが発生している[7]。2020年1月、横浜銀行は70歳以上の預金者に対して、生体認証カードも含めた全ての種類のキャッシュカードの引き出し限度額を一律に引き下げた[8]。
その他の機能
ICチップ内蔵カードには、クレジットカードとの一体型カード、利用額に応じてポイントが付くポイントサービス付きカード、電子マネー付きカードなどがある[2]。
- ^ a b c d e f 大寺廣幸. “米国のクレジットカード… 過去・現在・未来”. 郵政研究所月報(2001.7). 2021年9月16日閲覧。
- ^ a b c d 長岡壽男. “ATM戦略の発展過程とその考察”. 関西大学. 2021年9月16日閲覧。
- ^ “磁気ストライプのカード発行中止”. 日本経済新聞. 2021年9月16日閲覧。
- ^ a b “【Olive】キャッシュカードを使って口座振替契約の申込みはできますか? | よくあるご質問 : 三井住友銀行”. qa.smbc.co.jp. 2023年5月23日閲覧。
- ^ a b “【Olive】ジェイデビットカードサービスの利用はできますか? | よくあるご質問 : 三井住友銀行”. qa.smbc.co.jp. 2023年5月23日閲覧。
- ^ “東奔西走キャッシュレス(7) SMBCグループが導入する金融サービス「Olive」の疑問をチェック”. マイナビニュース (2023年2月13日). 2023年5月23日閲覧。
- ^ a b 相次ぐ「生体認証カード」詐欺 ATM引き出し限度額の20倍 警視庁 産経新聞 2015年10月18日
- ^ “【70歳以上のお客さまへ】 カードによるお引き出しの一部制限について|店舗・ATMのご案内|横浜銀行” (pdf). 横浜銀行. 2023年5月23日閲覧。
- ^ a b 代理人カード みずほ銀行
- ^ ICキャッシュカード 三菱UFJ銀行
- ^ 代理人カードは発行できますか? りそな銀行
- ^ キャッシュカード(ICキャッシュカード) 商品詳細 三井住友銀行
- ^ 「会員情報からカード偽造 地銀など9機関 被害総額4億1000万円」産経新聞、2008年11月12日付朝刊27面。
- キャッシュカードのページへのリンク