オタネニンジン 成分に関する研究

オタネニンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 15:55 UTC 版)

成分に関する研究

オタネニンジン植物個体について

胃腸虚弱や食欲不振、嘔吐、下痢、病後の回復期、疲労回復、滋養強壮に効能が有るとされてきた[24][25][15][9]

各成分について

オタネニンジンの主要な薬用部位である根には、ジンセノサイドと呼ばれるサポニン群だけですら、少なくとも38種の化合物群が存在するとされる。なお、プロトパナキサジオール (PPD) 系サポニンと、プロトパナキサトリオール (PPT) 系サポニンの両方を含み、PPD系ジンセノサイドであるRb1やRb2などは腸内細菌で代謝されてコンパウンドKとして体内に吸収される。しかしながら腸内細菌叢は日々の状態や個体差、加齢による変化があるため、コンパウンドKへの代謝がスムーズに行われない例もある[26]

西洋医学による見解

オタネニンジンのヒトを対象とした、西洋医学に基いた質が高いとされる試験は無く、健康的有益性を裏付ける西洋医学におけるエビデンスは限られている[27][28]

日本の厚生労働省による見解

  • これまでに報告されている朝鮮ニンジンに関するランダム化比較試験の多くは、質の高い試験ではない可能性があります。したがって、朝鮮ニンジンの健康促進効果に対する理解には限界があります。
  • 朝鮮ニンジンを推奨量で短期間経口摂取する場合(最大6カ月)、多くの人では安全だと考えられます。しかし、長期安全性に関する疑問が生じており、一部の専門家は幼児、子供、妊婦および授乳期の女性に対する朝鮮ニンジンの使用に反対しています。
  • 朝鮮ニンジンを含む複数の特定成分が配合された製剤を皮膚に短期間局所使用する場合は、安全だと考えられます。長期間繰り返して局所使用した場合の安全性は不明です。
  • 不眠症(睡眠障害)は朝鮮ニンジンで最も多くみられる副作用です。そのほかの副作用には、月経異常、乳房痛、心拍数増加、高/低血圧、頭痛、食欲不振、消化不良などがあります。
  • 朝鮮人参が血糖値に影響することを示唆するエビデンスが得られています。糖尿病の人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
  • 朝鮮ニンジンがカルシウムチャネル遮断薬などの降圧剤、スタチン、抗うつ薬といった薬剤と相互作用を有するかどうか、はっきりとはわかっていません。朝鮮ニンジンが抗凝固剤(抗凝血剤)のワルファリン(クマディン)に与える影響を調べた研究では、結果は一致していません。薬を服用している人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
  • 妊娠中の朝鮮ニンジンの経口(口から)摂取は、安全ではない可能性があります。朝鮮ニンジンに含まれる化学物質が、動物で先天異常を引き起こすことが明らかになっています。授乳中の朝鮮ニンジン摂取の安全性については、ほとんど分かっていません。

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

厚生労働省のサイトに記載されている見解は以下の米国webサイト論文を参照のうえ、大野氏によってまとめられたものです。尚、「本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。」との注釈あり[29]


注釈

  1. ^ 「蘿蔔」は「大根」を意味し、「胡蘿蔔」はいわば「南蛮大根」、また「紅蘿蔔」は「赤大根」といった意味になる。
  2. ^ いわゆる西洋薬と異なり、生薬の多くの場合は、様々な成分が含有されており、その全てを列挙する事は現実的でない。

出典

  1. ^ a b 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  2. ^ a b c 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Panax ginseng C.A.Mey.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年8月13日閲覧。
  4. ^ "'Panax ginseng C.A. Mey.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 2200621. 2012年8月13日閲覧
  5. ^ "Panax ginseng C.A. Mey" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2012年8月13日閲覧
  6. ^ a b "Panax ginseng" - Encyclopedia of Life
  7. ^ a b "Panax ginseng". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
  8. ^ a b c d e 薬草園だより Vol.2015.春夏号(第6刊)” (PDF). 神戸学院大学薬学部附属薬用植物園 (2015年). 2019年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月8日閲覧。
  9. ^ a b c d e 貝津好孝 1995.
  10. ^ 中田祝夫(編)『和名類聚抄 元和三年古活字版二十巻本 附 関係資料集』勉誠社文庫23、第3刷、1987年、229頁。国立国会図書館蔵。
  11. ^ a b c 인삼(人蔘)” (朝鮮語). 韓国民族文化大百科事典. 2023年10月2日閲覧。
  12. ^ a b 木口政樹 (2018年4月12日). “<コラム>「崇拝」する日本人もいる、韓国のチョーセンニンジンとは”. Record China. 2023年10月2日閲覧。
  13. ^ 昆明植物研究所. “人蔘”. 《中国高等植物数据库全库》. 中国科学院微生物研究所. 2009年2月24日閲覧。
  14. ^ a b 日本薬学会(編集)『薬学生・薬剤師のための知っておきたい生薬100 ―含 漢方処方―』 東京化学同人、2004年3月10日発行、93頁、ISBN 4-8079-0590-2、ISBN-13:978-4-8079-0590-4。
  15. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995.
  16. ^ 貝原益軒『菜譜』に「胡蘿蔔」の項目あり、「せりにんじん」と訓じている。明治時代の刊本が国会図書館近代デジタルライブラリー[1] で閲覧できる。
  17. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
  18. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2020年版)
  19. ^ 大場秀章 編「小石川植物園前史「吉宗と小石川薬園」」『日本植物研究の歴史 小石川植物園300年の歩み』東京大学http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1996Koishikawa300/01/0102.html2023年4月4日閲覧 
  20. ^ 日本薬学会(編集)『薬学生・薬剤師のための知っておきたい生薬100 ―含 漢方処方―』 東京化学同人、2004年3月10日発行、92頁、ISBN 4-8079-0590-2、ISBN-13:978-4-8079-0590-4。
  21. ^ 松本真悟「島根県の土壌と農業」『ペドロジスト』第58巻第2号、日本ペドロジー学会、2014年、88-92頁、doi:10.18920/pedologist.58.2_88ISSN 0031-4064 
  22. ^ ジンセンベリー
  23. ^ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)494頁” (PDF). 文部科学省 (2022年5月30日). 2023年1月31日閲覧。
  24. ^ Hitoshi Kaneko and Kozo Nakanishi (2004). “Proof of the Mysterious Efficacy of Ginseng: Basic and Clinical Trials: Clinical Effects of Medical Ginseng, Korean Red Ginseng: Specifically, Its Anti-stress Action for Prevention of Disease”. Journal of Pharmacological Sciences 95 (2): 158-162. doi:10.1254/jphs.FMJ04001X5. https://doi.org/10.1254/jphs.FMJ04001X5. 
  25. ^ CHOI, Kwang-tae (2008). “Botanical characteristics, pharmacological effects and medicinal components of Korean Panax ginseng CA Meyer”. Acta Pharmacologica Sinica (Wiley Online Library) 29 (9): 1109-1118. doi:10.1111/j.1745-7254.2008.00869.x. https://doi.org/10.1111/j.1745-7254.2008.00869.x. 
  26. ^ Lee, Jayeul and Lee, Euiju and Kim, Donghyun and Lee, Junhee and Yoo, Junghee and Koh, Byunghee (2009). “Studies on absorption, distribution and metabolism of ginseng in humans after oral administration”. Journal of ethnopharmacology (Elsevier) 122 (1): 143-148. doi:10.1016/j.jep.2008.12.012. https://doi.org/10.1016/j.jep.2008.12.012. 
  27. ^ Asian Ginseng”. National Center for Complementary and Integrative Health (2016年11月29日). 2019年11月10日閲覧。
  28. ^ Geng J, Dong J, Ni H, Lee MS, Wu T, Jiang K, Wang G, Zhou AL, Malouf R (2010年12月8日). “朝鮮人参の認知機能向上効果の確証的なエビデンスはない”. Cochrane. 2019年11月10日閲覧。
  29. ^ 医療関係者の方へ ホーム > 海外の情報 > 朝鮮ニンジン”. 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 (2021年3月12日). 2022年8月20日閲覧。
  30. ^ 広辞苑第5版


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