インドネシア 経済

インドネシア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 06:45 UTC 版)

経済

水牛を用いて稲田を耕している様子。インドネシアは伝統的に農業国である。

IMFによると、2018年GDPは1兆225億ドルであり、世界第16位である。一方、一人当たりのGDPは3,871ドルであり、世界平均の約34%である。世界銀行が公表した資料によると、2017年に1日1.9ドル未満(2011年基準の米ドル購買力平価ベース)で暮らす貧困層は全人口の約5.71%(都市部:約5.61% 農村部:約5.82%)であり、約1500万人いる。また3.2ドル未満の場合は約27.25%(都市部:約25.29% 農村部:約29.61%)であり、5.5ドル未満の場合は約58.66%(都市部:約53.21% 農村部:約65.24%)であった[46]

産業

農林水産業

基本的に農業国である。1960年代に稲作の生産力増強に力が入れられ、植民地期からの品種改良事業も強化された。改良品種IR8のような高収量品種は他にもつくられ、農村に普及し栽培された。このような「緑の改革」の結果、1984年にはコメの自給が達成された。しかし、1980年代後半には「緑の改革」熱も冷めてゆき、同年代の末にはコメの輸入が増加するに至った[47]。 農林業ではカカオキャッサバキャベツココナッツコーヒー豆サツマイモ大豆タバコ天然ゴムトウモロコシパイナップルバナナ落花生の生産量が多い。特にココナッツの生産量は2003年時点で世界一である。オイルパーム(アブラヤシ)から精製されるパームオイル(パーム油、ヤシ油)は、植物油の原料の一つで、1990年代後半日本国内では菜種油・大豆油に次いで第3位で、食用・洗剤・シャンプー・化粧品の原料として需要の増大が見込まれている。インドネシアにおけるパームオイルの生産量は1990年代以降急激に増加しており、2006年にマレーシアを抜き生産量首位に、2018年時点でマレーシアの二倍弱の3,830万トンを生産している[48]。アブラヤシの栽培面積は2000年にはココヤシと並び、2005年には548万ヘクタールとなっている(インドネシア中央統計庁(BPS)による。)[49]。この2000年代以降のエステート作物面積の急激な拡大によって、森林破壊泥炭湿地の埋立及びこれに伴う火災の発生などの環境破壊が進んでいることが指摘されている[50]

海に囲まれた群島国家であるため水産資源も豊富だが、漁業や水産加工の技術向上、物流整備が課題となっている。プリカナン・ヌサンタラ(Perikanan Nusantara,Perinus)という国営水産会社が存在する[51]

鉱工業と産業構造

鉱業資源にも恵まれ、スズ石油石炭天然ガスニッケルの採掘量が多い。1982年、1984年、日本からの政府開発援助(ODA)でスマトラ島北部のトバ湖から流れ出るアサハン川の水でアサハン・ダム(最大出力51.3万キロワット)とマラッカ海峡に面したクアラタンジュンにアサハン・アルミ精錬工場が建設された[52]。ニッケル鉱山は、南東スラウェシ州コラカ沖のパダマラン島のポマラと南スラウェシ州ソロアコ(サロアコ)にある。生産の80%が日本に輸出されている。ニッケルはカナダの多国籍企業インコ社が支配している。多国籍企業の進出はスハルト体制発足後の1967年外資法制定以降であり、採掘・伐採権を確保している。また、日本企業6社が出資している。鉱山採掘に伴い森林伐採で付近住民と土地問題で争いが起こる[53]。国内産業を育成するため、未加工ニッケル鉱石の輸出を2014年に禁止したが、2017年に規制を緩和している[54]

日本はLNG(液化天然ガス)をインドネシアから輸入している。2004年以降は原油の輸入量が輸出量を上回る状態であるため、OPEC(石油輸出国機構)を2009年1月に脱退した。

工業では軽工業、食品工業、織物石油精製が盛ん。コプラパーム油のほか、化学繊維パルプ窒素肥料などの工業が確立している。 パナソニックオムロンブリヂストンをはじめとした日系企業が現地に子会社あるいは合弁などの形態で、多数進出している。

ジャカルタはインドネシア経済の中枢であり、東南アジア屈指の世界都市でもある。

独立後、政府は主要産業を国有化し、保護政策の下で工業を発展させてきた。1989年には、戦略的対応が必要な産業として製鉄航空機製造、銃器製造などを指定し、戦略産業を手掛ける行政組織として戦略産業管理庁(Badan Pengelora Industri Strategis)を発足させている。

2019年時点、インドネシアには115の国営企業があり、クラカタウ・スチール(製鉄)、マンディリ銀行など17社がインドネシア証券取引所株式を上場している。分野ごとに持ち株会社を設けるなど効率化を図っているが、一方で雇用維持など政府の意向が優先されることも多い[55]

かつては、華人系企業との癒着や、スハルト大統領ら政府高官の親族によるファミリービジネス等が社会問題化し、1996年には国民車「ティモール」の販売を巡って世界貿易機関(WTO)を舞台とする国際問題にまで発展した。しかし、1997年アジア通貨危機の発生により、経済は混乱状態に陥り、スハルト大統領は退陣に至った。その後、政府はIMFとの合意によって国営企業の民営化など一連の経済改革を実施したが、失業者の増大や貧富の差の拡大が社会問題となっている。

商業

小売業の最大チャネルは、各地に約350万ある「ワルン」と呼ばれる零細小売店である。インターネット通販は小売市場の3~5%程度と推測され、地元企業のトコペディアやブカラパック、シンガポール企業のラザダやショッピーが参入しており、ワルンへの商品供給を担う企業もある[56]

雇用・賃金と個人消費

労働者の生活水準を向上させるため、月額式の最低賃金制度が施行されており、2015年からはインフレ率経済成長率に基づく計算式が導入され、年8%程度上がり、タイ王国を超える水準となっている。これに対して、労働組合側は賃上げが不十分、日系を含む企業側は人件費の上昇が国際競争力を低下させると主張し、労使双方に不満がある[57]

なお、イスラム教徒が多数を占める国であるため、従業員からメッカ巡礼の希望が出た場合、企業はメッカ巡礼休暇として、最長3カ月の休暇を出すことが法で規定されている[58]

ただ、改革と好調な個人消費により、GDP成長率は、2003年から2007年まで、4%〜6%前後で推移した。2008年には、欧米の経済危機による輸出の伸び悩みや国際的な金融危機の影響等があったものの、6.1%を維持。さらに2009年は、政府の金融安定化策・景気刺激策や堅調な国内消費から、世界的にも比較的安定した成長を維持し、4.5%の成長を達成。名目GDP(国内総生産)は2001年の約1,600億ドルから、2009年には3.3倍の約5393億ドルまで急拡大した。今ではG20の一角をなすまでになっており、同じASEAN諸国のベトナムフィリピンと同様にNEXT11の一角を占め、更にベトナムと共にVISTAの一角を担うなど経済の期待は非常に大きい。

ただし、2011年より経常収支が赤字となる状況が続いており、従来から続く財政赤字とともに双子の赤字の状態にある[59][60]

日本との経済関係

このような中、日系企業の進出は拡大している[61]が、投資環境の面で抱える問題は少なくない。世界銀行の「Doing Business 2011」でも、ビジネス環境は183国中121位に順位づけられており、これはASEANの中でもとくに悪いランキングである[62]。具体的には、道路、鉄道、通信などのハードインフラの整備が遅れていることのほか、ソフトインフラとも言うべき法律面での問題が挙げられる。裁判所や行政機関の判断については、予測可能性が低く、透明性も欠如しており、これがビジネスの大きな阻害要因になっていると繰り返し指摘されている[63]。 これに対し、日本のODAは、ハード・インフラ整備の支援に加え、近年は統治能力支援(ガバナンス支援)などソフト・インフラ整備の支援も行っている。警察に対する市民警察活動促進プロジェクトは、日本の交番システムなどを導入しようというものであり、日本の技術支援のヒットとされている[64]。また、投資環境整備に直結する支援としては、知的財産権総局を対象とした知的財産に関する法整備支援も継続されている[65]。インドネシアの裁判所に対しても、日本の法務省法務総合研究所国際協力機構(JICA)や公益財団法人国際民商事法センター(ICCLC)と連携して、規則制定のほか裁判官や和解調停を担う人材の研修を支援している[66]

2013年時点では、東南アジア全体でも有数の好景気に沸いており、日本からの投資も2010年には7億1260万ドル(約712億6000万円)であったのが、2012年には25億ドル(約2500億円)へと急増している[37]。しかしナショナリズムが色濃く、2013年2月には当地を中心に石炭採掘を行っている英投資会社ブミPLCの株主総会が、同社の大半の取締役や経営陣を追放するというロスチャイルドによる提案の大部分を拒否した[67]。これと関連して、国の経常赤字と資本流入への依存、貧弱なインフラや腐敗した政治や実業界など、いくつかの問題点も指摘されている[68]。2014年の国際協力銀行が日本企業を対象に行ったアンケート調査では、「海外進出したい国」として、中国を抜いて1位となった[69]

技能実習制度などで、日本へ渡航して働くインドネシア人も多いが、人権保護や賃金支払いなどでトラブルも起きている[70]

観光


注釈

  1. ^ 但し税務裁判所の人事と予算は引き続き財務省管轄化にある。税務裁判所の裁判に対する不服申立ては最高裁判所に対して行われる。
  2. ^ インドネシア共和国憲法第24C条第1項後段。
  3. ^ スハルトがゴルカルを支持母体として政権運営していたのは有名であるが、スハルトはゴルカルの党員でも党首でもない「ただの人」であった。その「ただの人」をゴルカルをはじめとするグループが大統領として推挙するという形式をとっていた。
  4. ^ 民主党はユドヨノ大統領の支持母体である。
  5. ^ ユドヨノは民主党最高諮問会議議長として党の最高権力を保持していたが、相次ぐ民主党不祥事によりアナスの党首続投が不可能な情勢となったため2013年3月31日の臨時党大会において党首に就任し自ら党運営を行うこととなった。
  6. ^ 2001年にメガワティと組んで副大統領に就任。2004年大統領選挙において大統領候補。
  7. ^ 最高諮問会議議長はプラボゥオ・スビヤント。
  8. ^ 大統領候補としてウィラントを支持している。
  9. ^ イスラム宗教団体ナフダトゥル・ウラマーを母体としている。アブドゥルラフマン・ワヒド大統領を出したことで有名。

出典

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  32. ^ 高橋宗生「国民統合とパンチャシラ」、安中章夫・三平則夫編『現代インドネシアの政治と経済 - スハルト政権の30年 -』(アジア経済研究所1995年)第2章を参照。
  33. ^ 諸外国の行政制度等に関する調査研究活動の一環として総務省)P61およびP63の組織図参照。
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  97. ^ 【ASIAトレンド】インドネシア 伝統薬に再注目/健康志向追い風、カフェも『日本経済新聞』朝刊2019年3月13日(アジアBiz面)2019年4月7日閲覧
  98. ^ 早瀬晋三・深見純生「近代植民地の展開と日本の占領」、池端雪浦編『東南アジア史II 島嶼部』山川出版社<新版 世界各国史6>、1999年、309-311頁を参照。
  99. ^ 土屋健治「文学と芸術」、綾部・石井編、弘文堂1995年、162頁。
  100. ^ 早瀬・深見、同上、291頁、を参照。なお、戦後も含めたインドネシア文学の歩みについては、松尾大「近代インドネシア文学の歩み」、アイプ・ロシディ編、松尾大・柴田紀男訳『現代インドネシア文学への招待』めこん1993年、に詳しい。
  101. ^ 押川典昭「インドネシア」『激動の文学――アジア・アフリカ・ラテンアメリカの世界』 信濃毎日新聞社、長野市、1995年3月15日、初版、67-70頁。






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