イサム・ノグチ 逸話

イサム・ノグチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 15:04 UTC 版)

逸話

  • 1909年、作家・獅子文六(本名:岩田豊雄)が慶応普通部の頃、大森・山王に一家で転入した時期に、母・レオニー・ギルモアとイサム・ノグチの家の近くであり、文六の姉を通して一家で親交があった。紺かすりの着物を着せられ、日本語も相当分かり人懐っこいイサムを文六の姉は大変に可愛がったが、年上の文六はノグチを少しイジメたりした。戦後、彼が前衛芸術家として華々しく来日した時は大いに驚いたと述懐している。また茅ケ崎に転居したレオニー母子の空家に入って、その感慨を「紅いランプの家」と題して博文社の「文章世界」に投稿し、文六青年は大賞を獲得した[9]
  • ノグチが絶対的な信頼を寄せていた石工の和泉正敏(1938年 - 2021年、前イサム・ノグチ日本財団理事長)を制作のパートナーに選んだ理由について「美術学校へ行っていないのがいい。英語ができないのがいい。石が好きなのが一番いい」と語っている[10]
ブラック・スライド・マントラ
  • ノグチが札幌市の大通公園西8・9丁目に制作した「ブラック・スライド・マントラ」がある場所は、元は他の各丁目を区切る通りと同様に、大通公園を南北に横断する道路だった場所である。ブラック・スライド・マントラは9丁目に既にあった幅広い石の滑り台(クジラ山)を撤去して設置される予定だったが、現地を視察したノグチは、子どもたちに親しまれているクジラ山をそのまま残し、空間全体のバランスを考えた上で、大通公園8丁目と9丁目とをつなぎ、その間の道路にあたる場所に設置することを主張した。一見、無謀とも思える提案だったが、それでも札幌市は「子供らの遊び場に」(「ブラック・スライド・マントラ」は)「子どもに遊ばれて、完成する」というノグチの意思を尊重し、8丁目・9丁目間の道路をふさいで2丁にわたった公園とした。本作の所在地が大通公園西8丁目と9丁目にまたがっているのは、その名残である。また、本作の題名「ブラック・スライド・マントラ」は、古代インドの天文台「YANTRA MANTRA」にちなんで名付けられたものである。
  • 1988年11月、翌年2月に大阪で開催される個展の最終確認の際、予定の会場に不満をもっていたノグチは、構成を担当していた安藤忠雄の設計したガレリア・アッカを気に入り、急遽会場を変更した。しかし、同年12月に亡くなったことで実際に個展を見ることはかなわなかった[11]

注釈

  1. ^ 野口米次郎が臨終の5分前に作った詩。「かねがなる かねがなる これがけいしょうなんです けいしょうがなると みんながねるんですよ おまえたちもねるんですよ」
  2. ^ 慶應義塾大学 アート・センター (KUAC):ノグチ・ルーム アーカイヴ
  3. ^ ブラック・スライド・マントラ | 観光施設 | 観光スポット | ようこそさっぽろ 北海道札幌市観光案内
  4. ^ A Place to Bury Names

出典

  1. ^ 兄を語る--野口ミチオインタヴュ- (特集 イサム・ノグチを歩く--宇宙的空間への旅〔含 年譜〕)『美術手帖 (727),』 51-54頁, 1996-07美術出版社. NCID AN10310657 
  2. ^ イサムノグチ :: 東文研アーカイブデータベース - 東京文化財研究所
  3. ^ ノグチ・ルーム アーカイブ”. 慶應義塾大学 アートセンター. 2018 08 27閲覧。
  4. ^ Masayo Duus, The Life of Isamu Noguchi: Journey Without Borders, p.133, Princeton University Press, 2006.
  5. ^ イサム・ノグチの幻のモニュメント模型 実現しなかった広島でのデザイン”. 朝日新聞デジタルマガジン (2019年1月10日). 2022年8月8日閲覧。
  6. ^ アナ・マリア・トーレス著 相馬正弘翻訳監修 『イサム・ノグチ空間の研究』2000年 マルモ出版ISBN 978-4944091157 デザイン収録
  7. ^ イサム・ノグチ日本財団理事長
  8. ^ 光嶋裕介『建築という対話 僕はこうして家をつくる』筑摩書房、2017年、121頁。ISBN 978-4-480-68980-1 
  9. ^ 『父の乳』新潮社、1968年1月25日、162頁。 
  10. ^ 石の「声」を聞く!石のアトリエ 主宰 財団法人イサム・ノグチ日本財団 理事長 和泉 正敏さん”. ビジネス香川 (2009年12月17日). 2022年8月7日閲覧。
  11. ^ 建築家・安藤忠雄が語る、イサム・ノグチ像とは?”. pen (2021年6月14日). 2022年8月7日閲覧。
  12. ^ ユネスコ本部日本庭園”. 東京農業大学国際日本庭園研究センター. 2022年8月7日閲覧。
  13. ^ こけし”. 神奈川県立近代美術館. 2022年8月7日閲覧。
  14. ^ Isamu Noguchi - The Sculpture of Spaces - ウェイバックマシン(1997年1月2日アーカイブ分)
  15. ^ 日曜美術館 「イサム・ノグチの世界」 | NHKクロニクル | NHKアーカイブス 2022年8月6日閲覧。
  16. ^ 日曜美術館 | NHKクロニクル | NHKアーカイブス 2022年8月6日閲覧。
  17. ^ 新日曜美術館 | NHKクロニクル | NHKアーカイブス 2022年8月6日閲覧。
  18. ^ 新日曜美術館 「シリーズ戦後60年(2)~イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑」 | NHKクロニクル | NHKアーカイブス 2022年8月6日閲覧。
  19. ^ 日曜美術館 「わたしとイサム・ノグチ サカナクション 山口一郎」 | NHKクロニクル | NHKアーカイブス 2022年8月6日閲覧。
  20. ^ わたしとイサム・ノグチ サカナクション 山口一郎”. NHK (2021年7月18日). 2021年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月22日閲覧。
  21. ^ "イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑". NHK. 2023年8月5日. 2023年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月10日閲覧






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