ねじ締付け管理方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/08 14:10 UTC 版)
以下に具体的な軸力管理法を示す。
目次
トルク法
軸力の代用としてナットやねじの締付けトルクを管理する方法がトルク法である。トルクの90%前後が座面との摩擦に起因するため、座面の表面状態に大きく影響を受ける。トルクレンチ、トルクスパナといった工具を準備すれば行える比較的簡便な方法であるため広く普及している。その一方、他の管理法に比べて軸力がばらつきやすいという欠点を持ち、締付け係数
トルク法における軸力ばらつきの要因には、トルクのばらつきと摩擦係数のばらつきが存在する。これらが軸力に及ぼす影響は次の近似式で表される[3]。ここで
回転角法では、軸力の代用としてねじ-ナット間回転角度を管理する。弾性締付けを行う弾性回転角法と、塑性締付けを行う塑性回転角法の二種類に分類される。
弾性回転角法
弾性回転角法ではまずスナッグトルク(ねじと座面を密着させるのに必要なトルク)で締付けを行い、その後弾性域内の所定の回転角まで回す。この方法はスナッグトルクが摩擦の影響を受け、またねじ剛性が高いとき回転角誤差の影響が強く出るため、締付け係数は1.5 - 3とトルク法と同程度である[2]。
塑性回転角法
塑性回転角法にはスナッグトルクを基点とする方法と、降伏点を基点とする方法がある。スナッグトルクを基点とする方法では目標点が弾性域から塑性域に変わるだけであり、手順や締付け係数は弾性回転角法と同じである。
降伏点を基点とする方法では、まずねじの降伏点まで締付け、その後所定の回転角まで回す。 この方法での軸力ばらつきの要因は降伏締付け時の軸力のみに限定されるため、締付け係数は1.2と低く、安定した軸力管理を行える[2]。また、塑性締付けを行っているため、弾性締付け時に比べねじに大荷重を掛けられるという利点もある。一方で、この方法ではねじが塑性伸びを起こしているため、一度外すと再使用が出来ないという欠点を持つ。この方法は車のエンジン組立てに用いられることが多い。
- ^ 締付け係数とは、同条件でねじを締めた時の軸力の最大値 ()と最小値()の比のこと。
で表され軸力ばらつきを示す指標である。 - ^ a b c d ここに記載した締付け係数の値はJIS B 1083に拠るものである。しかしJISでは、各締付け法には影響を与える固有の因子が存在し、その状態如何で締付け係数は大きく変化するため、数字はあくまで目安に過ぎないとしている。
- ^ a b c (酒井智次 2003)参照
- ^ 締付けトルクの平均値をとすると、最大値、最小値はトルクばらつきによりそれぞれ 、
と表すことが出来る( )。
同様に摩擦係数の平均値をとすると摩擦係数の最大値、最小値は摩擦係数ばらつきによりそれぞれ
、 と表記出来る( )。
- 1 ねじ締付け管理方法とは
- 2 ねじ締付け管理方法の概要
- 3 トルク勾配法
- 4 各締結法の比較