vantablackとは? わかりやすく解説

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ベンタブラック【vantablack】

読み方:べんたぶらっく

vantavertically aligned nanotube arraysの略》カーボンナノチューブからなる黒色粉末。現在知られるもっとも黒い物質一つであり、可視光の99.965パーセント吸収する林立する炭素原子からなる筒が光を反射せずに筒内に捉えることで、最終的に熱に変えるカメラ望遠鏡光学系で、迷光乱反射を防ぐ素材などへの応用試みられている。


ベンタブラック

(vantablack から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/25 16:42 UTC 版)

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アルミ箔にコーティングされたベンタブラック

ベンタブラック(Vantablack)は、カーボンナノチューブから構成される、可視光の最大99.965%を吸収する物質[1]。光が当たると、それを跳ね返すのではなく「チューブの森」に捉え[2]、チューブ内を何度も屈折させ最終的には吸収されて熱として放散される。2019年にMITが吸収率99.995%の物質を発表するまで既知の「最もい物質」であった[3]

語源

Vertically Aligned NanoTube Arrays(垂直に並べられたナノチューブの配列)の頭文字をとっている[4]

発展

初期の発展は、イギリス国立物理学研究所によって進められたが[5]、VANTAという言葉は、この頃は生まれていなかった[6]。現在は、Surrey NanoSystemsで開発が進められている[7]

応用

この物質には、望遠鏡の迷光防止や赤外線カメラの性能向上等、様々な応用がある[7]

Surrey NanoSystemsのCTOであるベン・ジェンセンは、次のように説明する[7]

例えば、この物質は、望遠鏡の感度を向上させることで、遠い微かな星の光も捉えられるようにする。また、非常に低い反射率のため、地上や宇宙空間、大気中の機器の感度を向上させる。

また、ベンタブラックは、集光型太陽熱発電の素材として用いることで、熱の吸収を高めることができる。また軍事では、熱カモフラージュ等の応用がある。ベンタブラックの放射率と拡張性が、幅広い応用を可能にしている。

芸術家のアニッシュ・カプーアは、この物質を創作に用いている[8]

近年では、H.モーザーなどの時計メーカーが、時計の文字盤にベンタブラックを用いている[9]

2019年8月30日、BMWはベンタブラックの(若干反射率を高めた)派生素材で塗装したBMW・X6の特別モデルを製作したことを発表。フランクフルト・モーターショーで公開する予定[10]

既存の物質からの改善

ベンタブラックは、これまで開発された物質の改善となっている。木炭は、入射光の4%を反射する。既知の2番目に放射を吸収する物質は、0.04%を除いた全ての光を吸収するが、ベンタブラックは0.035%を除いた全ての光を吸収する。また、この新しい物質は、400℃で形成される。アメリカ航空宇宙局は似たような物質を開発しているが、その成長温度は750℃である。従って、ベンタブラックは、高温に耐えられない物質の上にも成長させることができる[1]

ベンタブラックのガス放出や粒子降下は少ない。かつての似たような物質は、これが多いために商用化が妨げられてきた。また、ベンタブラックは、振動耐性や耐熱性も優れている[4]

独占使用権をめぐる問題

2016年、英国の彫刻家であるアニッシュ・カプーアは、ベンタブラックの製造元であるサリー・ナノシステムズ社から同製品のアート分野における独占使用権を購入した。この問題により、ベンタブラックを芸術活動に用いることが困難となったポートレート作家のクリスチャン・ファーやアーティストのスチュアート・センプルなど多くのアーティストやメディアから批判の声が上がっている。特に創作活動の自由を求めるセンプルと独占使用権を持つカプーアの対立は強く、センプルが「世界で最もピンク色のピンク(粉末塗料)」を開発し、「アニッシュ・カプーアとその関係者は購入出来ない」との警告付きでウェブ販売すると、カプーアが自身の公式インスタグラムにて、センプルの開発したピンクの塗料を中指に付けた画像を投稿する、センプルが「カプーア以外の世界中の人々が自由に使うことのできる」黒色塗料Black2.0、Black3.0を開発・販売するなどの応酬が起こっている。

脚注

  1. ^ a b Vantablack, the world’s darkest material, is unveiled by UK firm”. South China Morning Post - World (2014年7月15日). 2014年7月19日閲覧。
  2. ^ Vantablack: U.K. Firm Shows Off 'World's Darkest Material'”. NBCNews.com (2014年7月15日). 2014年7月19日閲覧。
  3. ^ MIT engineers develop “blackest black” material to date | MIT News
  4. ^ a b Kuittinen, Tero (2014年7月14日). “[https://ca.news.yahoo.com/scientists-developed-black-deep-makes-3d-objects -look-233004466.html?pt=Array Scientists have developed a black so deep it makes 3D objects look flat]”. Yahoo! News Canada. 2014年7月19日閲覧。
  5. ^ Theocharous, E.; Deshpande, R.; Dillon, A. C.; Lehman, J.. “Evaluation of a pyroelectric detector with a carbon multiwalled nanotube black coating in the infrared”. Applied Optics 45 (6): 1093. doi:10.1364/AO.45.001093. 
  6. ^ Theocharous, S.P.; Theocharous, E.; Lehman, J.H.. “The evaluation of the performance of two pyroelectric detectors with vertically aligned multi-walled carbon nanotube coatings”. Infrared Physics & Technology 55 (4): 299–305. doi:10.1016/j.infrared.2012.03.006. 
  7. ^ a b c Howard, Jacqueline (2014年7月14日). “This May Be The World's Darkest Material Yet”. Huffington Post. 2014年7月19日閲覧。
  8. ^ How black can black be?”. BBC.col.uk. BBC News (2014年9月23日). 2014年12月7日閲覧。
  9. ^ 光を99.965%吸収するVantablack® 加工、H.モーザーのブラックホール文字盤、WebChronos、2018年9月26日、同年11月22日閲覧
  10. ^ 独BMW、「世界で最も黒い物質」まとったX6お披露目へ”. CNN (2019年8月30日). 2019年8月30日閲覧。

関連項目

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