Xiaomi・SU7
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/14 02:47 UTC 版)
| SU7 | |
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Xiaomi SU7
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| ボディ | |
| 乗車定員 | 4人 |
| ボディタイプ | 4ドアセダン |
| 駆動方式 | 後輪駆動、四輪駆動 |
| パワートレイン | |
| モーター | 永久磁石同期電動機TZ220XS000 |
| 最高出力 | 220 kW (299 PS)(後輪駆動) 495 kW (673 PS)(AWD) 1,139kW (1,548 PS)(Ultra) |
| 最大トルク | 400 Nm(後輪駆動) 838 Nm(AWD) 1,770 Nm(Ultra) |
| サスペンション | |
| 前 | ダブルウィッシュボーン式 |
| 後 | マルチリンク式 |
| 車両寸法 | |
| ホイールベース | 3,000mm |
| 全長 | 4,997mm |
| 全幅 | 1,963mm |
| 全高 | 1,455mm |
| 車両重量 | 1,980~2,205kg |
| その他 | |
| 全電気航続距離 | CLTCモード 668 km(73.6kWhLFPバッテリー) 830 km(94.3kWhLFPバッテリー) 800 km(101kWh三元系バッテリー) 620 km(93.7kWh三元系バッテリー) |
Xiaomi SU7(中:小米SU7)は、Xiaomiが開発・販売するBEVのセダンである。総合家電メーカーの同社初の自動車であり、自社の自動車工場で生産される[1]。「SU」は「Speed Ultra」の略である。
年表
2021年3月、Xiaomiは電気自動車市場に参入する意向を発表した。雷軍CEOは、同社がこのプロジェクトに今後10年間で約100億米ドルの投資を想定すると説明。開発拠点として、全額出資子会社「小米汽車」が北京経済技術開発区に設立された。[2]
2023年8月、中国国家発展改革委員会から車両生産許可を取得した。
同年12月28日、小米汽車として初となる技術発表会を開催し、開発中のEVセダン「SU7」を初公開した[3]。同時に雷軍CEOは、今後15〜20年かけて努力を続け、小米汽車を世界トップ5の自動車メーカーとする方針を示した[4]。
2024年3月28日、小米汽車は「SU7」の発表会を開き、同日から発売すると発表した。価格は標準モデルで21万5900元(約450万円)、上位グレードの「Pro」で24万5900元(約515万円)、上位モデル「MAX」は29万9000元(約630万円)に設定した。最初の27分間で5万件の注文が入ったという[5][6]。2025年3月18日には20万台目の納車が報告されている[7]。
同年10月28日、トラック用に開発された「Xiaomi SU7 Ultra プロトタイプ」は、ニュルブルクリンク北コースで6分46秒874を記録し、4ドアカーとしてのラップ記録を刷新した(プロトタイプである点に留意)[8]。翌29日には、「SU7 Ultra」の市販版を発表し、予価は81万4900元(約1700万円)とした[9]。
2025年6月には、ニュルブルクリンクで「SU7 Ultra」の市販版が7分4秒957のEV記録を更新した[10]。公式には「電動エグゼクティブカー」に分類されるが、「電動スーパースポーツカー」のリマック・ネヴェーラ(7分5秒298)を上回るタイムであった[11]。また、プロトタイプは記録を6分22秒091に更新し、あらゆる市販車記録より早く、「プロトタイプ」で3位のタイムとなった[11]。
仕様
SU7には、「SU7」と「SU7 MAX」の2モデルが設定される。車体は共通で、空気抵抗係数(Cd値)は0.195と世界の量産車で最も低い。車体デザインチームはBMWから引き抜かれた李田原が率いており、デザインコンサルタントには元BMWのクリス・バングルが就いた[12]。
標準仕様のSU7は1機のモーターで後輪を駆動し、最高出力は299PS、0-100km/h加速時間は5.28秒、航続距離は668km。バッテリーパックは、BYD製の73.6kWhリン酸鉄リチウム(LFP)系電池を採用し、急速充電400Vに対応、15分間の充電で330km分をチャージできる。ProグレードではCATL製の94.3kWhLFP系電池が搭載され、航続距離は830kmになる。
SU7 MAXは前後2機のモーターで全輪を駆動し、最高出力は673PS、0-100km/h加速時間は2.78秒、航続距離は800km。バッテリーパックはCATL製の三元系電池を採用し、急速充電は800Vまで対応、15分間の充電で510km分チャージできる。
コックピットには16.1インチの中央制御スクリーン、56インチの超大型ヘッドアップディスプレー(HUD)、回転式の計器ディスプレーを備える。後部座席にはXiaomiのタブレット端末「Mi Pad」を搭載。米クアルコムの車載用チップ「Snapdragon 8295」を採用して5つの画面を連携させる。また、独自の「Xiaomi HyperOS」を搭載し、スマートエコシステムを人間×クルマ×家に広げる[13]。
「シャオミ・パイロット」と呼ぶ運転支援システムは、LiDAR(標準グレードは非搭載)、3基のミリ波レーダー、11基の高精細カメラ、12基の超音波センサーを搭載。Nvidiaのチップで処理を行い、レベル2の運転支援システムや駐車アシストを提供する。
SU7 Ultra
Xiaomiは2024年7月にニュルブルクリンクトラックでの競争を表明し、2024年10月にニュルブルクリンクでノンプロダクションラップ記録を挑むプロトタイプカーを使用、2025年にはニュルブルクリンクでプロダクションカーラップ記録を正式に目指すプロダクションモデルを使用する計画を発表した[8]。
SU7 Ultraは、Xiaomi EVが独自開発した578PSを出力するV8sを2つと392PSを出力するV6sを1つ搭載した3モーター4WDシステムを特徴としており、最大1,548PS・1,770Nmを発揮する[8]。これにより、0-100 km/h加速時間は1.98秒、最高速度は350 km/h超とする。また、曙ブレーキ製のカーボンセラミックブレーキが採用されており、100km/h から0km/hの制動距離は30.8mとしている[14]。さらに、プロトタイプではカーボン100%の外装や巨大なエアロパーツ等の採用により、車両重量は1900kgに抑える一方で、2145kgにもおよぶダウンフォースを獲得している[15]。
2024年10月28日に発表された量産車バージョンでは、動力システムをプロトタイプと同様にしながらも、控えめなエアロおよび冷却パッケージが搭載され、最高速度も333km/hに制限することで、公道での使用を可能にしている。バッテリーパックはCATL製93.7kWhが採用され、航続距離は620kmになる[16]。
2025年6月7日、Xiaomiとレースゲームの「グランツーリスモ7」がコラボレーションを発表し、収録が決定した[17]。
2025年6月27日、正式な市場投入と、サーキット仕様の「Track Package」、ニュルブルクリンクでの記録達成を記念した特別仕様車「Nürburgring Limited Edition」の2つの高性能バージョンが発表された[18]。
不具合等
サーキット走行での事故
SU7の発売後、複数のユーザーがサーキット走行での事故を報告した。これに対し、Xiaomiは、SU7 Maxはトラックでの使用を想定していないことを声明で発表する事態となった。説明では、SU7はブレーキに日常の運転に適したNAO摩擦パッドを採用しており、サーキット走行時の継続的な高負荷と高温は許容範囲を超えかねないとしている[19]。SU7 Ultraは、カーボンセラミックブレーキを備えている。
パーキングアシスト機能の異常
2024年10月30日、SU7でパーキングアシスト機能のメジャーアップデートが適用された。11月14日、一部のオーナーがパーキングアシスト機能の異常を報告し、Xiaomiは苦情対応に追われた。社はすぐに調査を開始し、クラウド利用によるタイミング同期の異常が原因と説明した。テストと検証、そして規制当局とのやり取りを経て、2か月後にOTAアップデートによるリコールを発表した[20]。
「ナビゲート・オン・オートパイロット(NOA)」による事故
2025年3月29日夜、中国安徽省の高速道路でSU7がガードレールに衝突して炎上し、乗車していた大学生3人が死亡するという事故が発生[21]。「ナビゲート・オン・オートパイロット(NOA)」による運転支援機能を使った状態で走行していた。NOAを使い116km/hで走行していたところ、斜線制限がかかる工事中の規制区域に差しかかった際に、システムが前方の障害物を検知してドライバーに警告して減速し始めたが遅く、その2秒後には97km/hでコンクリート障壁に衝突してしまった。工事区間における同様の事故は日本でも発生している[22]。
これ以前にも運転支援システムによる事故が複数報告されていたこともあり、行政が動き出し、4月16日には、工業情報化部(MIIT)が自動車メーカー各社に対して、運転支援技術に関する誇大宣伝を規制する新たな措置を公告した[23]。5月5日、Xiaomiは公式サイトでインテリジェント運転の名称をアシスト運転に変更した。SU7モデルの「Xiaomi Smart Driving Pro」が「Xiaomi Assisted Driving Pro」に、SU7 Pro/Maxモデルの「Xiaomi Smart Driving Max」が「Xiaomi End to End Assisted Driving Pro」に名称が変更された。9月19日には運転支援システムのリコールが発表された[24]。
オプション部品の虚偽
シャオミグループは、SU7 Ultraのオプションとして「デュアルベント付きカーボンファイバーフード」を巡り「不明瞭な宣伝」があったとして謝罪した。このオプション部品は内部にエアダクトがないことが判明したことを受け、SU7 Ultraの所有者約400人が払い戻しを求めている[25]。
ドアロック機構の不備による炎上事故
2025年10月13日午前3時過ぎ、四川省成都市で、乗用車が別の自動車と衝突した後に、中央分離帯をこえ、炎上する事故が発生。このとき、電子式ドアロック機構が解除されず、運転席に閉じ込められた31歳の男性が焼死した[26]。
脚注
- ^ “中国の小米が北京のEV工場を拡大へ、需要急増に対応-関係者”. Bloomberg.com (2025年3月19日). 2025年7月13日閲覧。
- ^ “アップルより先にEV参入宣言、中国シャオミが10年で1.1兆円投資”. 日経クロステック(xTECH) (2021年3月31日). 2024年3月17日閲覧。
- ^ “Xiaomi Unveils Five Core Automotive Technologies and Debuts Xiaomi SU7, Completing the Human x Car x Home Smart Ecosystem”. Xiaomi. 2024年3月17日閲覧。
- ^ “シャオミ、初のEV「SU7」を公開 テスラに匹敵する「夢の車」で世界トップ5を目指す”. 36K (2023年12月30日). 2024年3月17日閲覧。
- ^ “「シャオミSU7」が衝撃デビュー。家電メーカーが作ったEVがいきなりテスラ/ポルシェを超えた!?”. smart-mobility.jp. 2024年3月30日閲覧。
- ^ “中国シャオミ、初のEV発売 450万円、27分で予約5万台”. 時事ドットコム (2024年3月29日). 2024年3月30日閲覧。
- ^ “Xiaomi hit 200,000 delivered cars less than a year after launch”. CarNewsChina.com (2025年3月18日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ a b c “Xiaomi SU7 Ultra プロトタイプ、新記録”. Xiaomi. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “中国シャオミ、1700万円の高性能EV「SU7 Ultra」発表 わずか10分で予約3680台”. 36Kr Japan (2024年11月2日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ “電動高級セダン最速記録を更新!『SU7ウルトラ』ニュルで“7分4秒957””. Response.jp (2025年6月16日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ a b “Nürburgring - Record times - Nordschleife”. www.nuerburgring.de. 2025年9月28日閲覧。
- ^ “Xiaomiが初のEV製品「SU7」を発表【高級セダン】”. telektlist (2023年12月31日). 2024年3月17日閲覧。
- ^ “Xiaomi、初のEV「Xiaomi SU7」発表、Hyper OS搭載でシャオミエコシステムを構築”. ケータイ Watch (2023年12月28日). 2024年3月17日閲覧。
- ^ “Xiaomi SU7 Ultra Officially Opens Sale with a Starting Price of RMB 529,900”. Xiaomi Global Home. 2025年9月28日閲覧。
- ^ “シャオミ初の自動車、1500馬力超の公道レーサーへ 量産EV最速を狙う新型「SU7ウルトラ」発表”. AUTOCAR JAPAN. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “シャオミ、世界最速4ドア・セダン公開 1548馬力の「SU7ウルトラ」がニュルで記録更新”. AUTOCAR JAPAN. 2024年12月29日閲覧。
- ^ Inc, Aetas. “「グランツーリスモ7」,Xiaomi SU7 Ultraが登場。シャオミとポリフォニー・デジタルがパートナーシップを締結”. 4Gamer.net. 2025年7月13日閲覧。
- ^ “Xiaomi EV、Xiaomi SU7 Ultra向け「Track Package」と「Nürburgring Limited Edition」を発表”. PR TIMES (2025年6月30日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ “Xiaomi SU7 Owners Find It’s Not Meant For Track Use After Two Brake Failures Lead To Crashes”. CARSCOOP. 2025年9月28日閲覧。
- ^ “Xiaomi recalls 30,931 SU7 EVs over parking assist software issue”. CnEVPost (2025年1月24日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ “シャオミEV、重大事故で3人死亡 「自動運転機能」めぐり波紋広がる”. 36Kr Japan (2025年4月2日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ “ながら運転=「走る凶器」高速道路の工事規制に突っ込む事故“急増”の実態 犠牲になる作業員”. 乗りものニュース (2023年7月29日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ “中国で自動運転に規制の嵐⋯シャオミEV死亡事故で誇大広告や遠隔駐車に禁止相次ぐ” (2025年5月10日). 2025年9月28日閲覧。
- ^ “シャオミ SU7標準モデルEVの一部をリコール”. 時事ドットコム. 2025年9月28日閲覧。
- ^ ロイター編集「中国シャオミのEV、消費者の反発招き受注が大幅減」『Reuters』2025年5月15日。2025年5月16日閲覧。
- ^ 日本テレビ. “路上で電気自動車が炎上 ドア開かず…閉じ込められた運転手死亡 中国・四川省(2025年10月13日掲載)|日テレNEWS NNN”. 日テレNEWS NNN. 2025年10月14日閲覧。
外部リンク
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