心原性脳塞栓症
(Cardioembolic stroke から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/15 10:04 UTC 版)
心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう、英語: Cardioembolic stroke)は、脳の動脈が血栓(血の塊)によって突然詰まる疾患である脳梗塞の一病型である。心臓内で形成された血栓が血流に乗って脳血管まで運ばれることで発症する。心原性脳梗塞とも呼ばれる。
脳梗塞の主要な原因の一つであり、ラクナ梗塞など他の病型と比較して、発症すると症状が重篤化しやすく、生命に関わる危険性が高いことで知られている。
原因とメカニズム
心原性脳塞栓症の発生源は脳ではなく、心臓にある。主な原因は以下の通りである。
- 心房細動: 最も多い原因疾患である。心房細動になると、心房が規則正しく収縮せず血液の流れが停滞する。これにより心房内に血栓ができやすくなり、その血栓が脳へ移動して血管を詰まらせる。
- その他の心疾患: 心臓弁膜症、心筋梗塞後の心室内血栓、心不全、人工心臓弁など。
心臓から放出された血栓は比較的大きいため、脳を栄養する太い主要血管(中大脳動脈など)に到達しやすく、突然完全に閉塞させる。これにより、発症直後に広範囲の脳組織が障害され、症状が最大となる「ノックアウト型」の発症を呈することが特徴である。
症状と重篤性
症状は突然出現し、通常、前触れはない。
- 重篤な神経症状: 半身の麻痺(片麻痺)、重度の言語障害(失語症、構音障害)、意識障害など。
心原性脳塞栓症は、他の脳梗塞に比べて生命予後が悪い。統計データによると、死亡率は約20%程度と高く、救命できたとしても約4割の患者が歩行困難や寝たきりになるなどの重い後遺症を残すと報告されている。
また、詰まった血管の血流が再開した際に、ダメージを受けた血管壁から出血する出血性脳梗塞を合併するリスクが高いことも、重篤化する要因の一つである。
診断と治療
診断には、頭部MRI検査やCT検査が迅速に行われ、同時に心電図検査や心臓超音波検査によって原因となる心疾患の特定も進められる。 急性期の治療は、一刻も早く詰まった血管を再開通させることが最優先となる。
- 血栓溶解療法(t-PA療法): 発症から4.5時間以内を目安に、血栓を溶かす点滴薬を投与する。
- 血栓回収療法: 発症から一定の時間内であれば、カテーテルを脳血管まで挿入し血栓を直接除去する治療法が行われる。
予防
心原性脳塞栓症は突然発症するため、原因疾患の早期発見と予防が極めて重要である。心房細動などがある場合、血栓の形成を防ぐため抗凝固薬(DOACやワルファリンなど)の内服が推奨される。この予防的治療は、脳梗塞の発症リスクを大幅に低減させる効果がある。
- Cardioembolic strokeのページへのリンク