関係代数 (関係モデル)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 14:00 UTC 版)
関係代数(かんけいだいすう、リレーショナル代数、英: relational algebra)は、関係データベースの関係モデル (リレーショナルモデル)において、集合論と一階述語論理に基づいて、関係 (リレーション、表、テーブル)として表現されたデータを扱う、コンピュータ科学における代数的な演算の体系である。
関係として表現されたデータに対して行う演算体系としては、関係論理(関係計算)とこの項目で説明する関係代数の2種類が知られている。 関係代数と関係論理は、主にエドガー・F・コッドによって考案され、その後コッドを含めた関係データベース(関係モデル)の研究者たちが発展させてきた。
現在では、関係代数の演算子としては、和、差、交わり (交差) 、直積、制限 (選択) 、射影、結合、商の8種類が言及されることが多い。 ただし属性名変更や拡張、要約などこの他の演算子も考案されている。
関係代数を実装したデータベース言語(問い合わせ言語)としては、SQL や Tutorial D などが挙げられる。 ただし SQL については、関係代数を完全な形で実装していないとして批判する意見がある。
数学的に純粋な関係代数は、数理論理学や集合論と比較して、代数的構造をなしている。
概要
関係代数の基本的な考え方は、集合論と一階述語論理の流れをくんでいる。
関係代数の演算子は、閉包性(closure)をもつ。関係において閉包である。 つまり次のことがいえる。
- 関係代数は、1つもしくは複数の関係を基にして演算を行う。
- 関係代数で演算を行って返される結果は、必ず関係である。
- 関係代数演算の結果として返された関係を基にして、さらに関係代数で演算することができる。入れ子になった関係代数演算を行うことができる。
現在、言及されることが多い関係代数の演算子としては、和、差、交わり (交差) 、直積、制限 (選択) 、射影、結合、商の8種類がある(この8種類の演算子については後の#基本的な演算子の節で説明する)。 ただし属性名変更や拡張、要約などこの他の演算子も考案されている(後の#応用的な演算子の節で説明する)。
関係代数は、関係データベース管理システム(RDBMS、関係データベース)のデータベース言語(問い合わせ言語)の基礎となっている。
関係代数と関係論理(関係計算)は互いに等価である。 関係代数で表現された式は、等価な関係論理の式で表現することができる。 また関係論理で表現された式は、等価な関係代数の式で表現することができる。
関係代数を実装したデータベース言語としては、SQL や Tutorial D などが挙げられる。 SQLは、関係代数と関係論理を実装しているとされる。 ただし一部の研究者などの人々(クリス・デイトやヒュー・ダーウェンなど)は、SQLに対して、関係モデルを考案したエドガー・F・コッドの関係代数を完全な形で実装していないなどとして、批判的な立場をとっている。 デイトとダーウェンは完全な実装として D(Tutorial D)を考案し提唱している。
関係は何らかの述語の外延と解釈することができるので、関係代数の各々の演算子は述語計算に相当するものと解釈できる。
例えば、自然結合は論理積 AND( 関係代数は関係モデルに基づく関係データベースのデータベース言語 (問い合わせ言語) であるため、最初に関係モデルを簡単に定義する。
関係モデルにおける基本的な構成要素は定義域すなわちデータ型である。
組は順序づけられていない属性の集合である。
属性は定義域と値のペアである。
関係変数は、特定の関係型の名前つきの変数であり、順序づけられていない属性名と属性の定義域のペアの集合である。
関係変数は関係の見出しを提供する。
関係は見出しと組の集合から構成される。
こうした関係モデルの概念は数学的に定義されるが、既存のデータベースの実装はこうした定義に厳密に準拠しているわけではない。
表 (テーブル) は、関係の視覚的表現として受け容れられている。
組は行の概念に似ている。
関係の型適合
集合論に基づく関係演算子(直積を除く、和、差、交わり)では、2つの型適合(type-compatibility)する関係を対象として演算を行う。 この種の関係演算では、型適合しない2つ関係を対象として演算を行うことはできない。 型適合は、和両立(union-compatibility)ともいう。
関係の型適合とは、言い換えれば2つの関係がうまく組み合わせることができるということである。 具体的には、関係 R と関係 S について、次の条件が満たされる場合、R と S は型適合である。
基本的な演算子
基本的な関係代数の演算子は大きく2つに分類することができる。 集合論に基づく演算子と関係代数に特有な演算子である。 まず集合論に基づく演算子(和、差、交わり (交差) 、直積)を説明し、続けて関係代数特有の演算子(制限 (選択) 、射影、結合、商)を説明する。 また各演算子について、データベース言語(問い合わせ言語)SQL と Tutorial D による関係代数式の表現例を示す。
和
和(union)演算 R ∪ S は、R と S を、R の全ての組(タプル、行)と S の全ての組で構成される一つの関係を返す。 この演算では、R と S が型適合であることが前提となる。 重複する組は除去される。
参考: 和集合
前提
関係 R と S が型適合であること。
例
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定義
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